遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「東雲草」

2010-11-12 | 現代詩作品
東雲草(sinonomesou)



腐りかけの
果実の甘さが
しのぎをけずった
時代わすれの
詩の勝利を、
読みたい。


明治の
ストライキ節は
名古屋旭新地での
東雲楼を廃業に追いこんだ
娼妓の唄と、
聴いた。


熊本説をまたいで
江東区豊洲の
東雲橋をわたると
まぼろしの
東雲飛行場の跡地に
至る。


露地から露地へ
鉢植えが
ところせましと咲き乱れていた
あれが東雲草だったか
一九五〇年代の上野の長屋の風景が
過ぎる。


追憶は
蔓に絡まって
贋のアルコールで、命を落とした
祖父の日課とは
新聞の中のある人物を針でぶすぶす刺すことだった
一九四五年の夏ごろまでの逸話。


二〇一一年の、天高く
雲がわき立つその向こうを
午後が滑り墜ちていく
白と黒の淡彩画に
とけ込んでみえにくい東雲草の
不運な棚の角度。


時代にわすれられて
愛でる者もいない
東雲早の
世界を制覇するための妄想が
朝の露に光る
白骨のしろだよ。






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