ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

電車内にて

2008-04-08 12:49:49 | Weblog
彼女たち二人は新入社員だ。
大学を卒業して入社してからの付き合いだから、まだ1週間ほどの付き合いでしかない。
二人はこの後一体どこの部署に配属されるのかちょっと不安でもある。

名古屋から1時間ほどの郊外に実家のある彼女(仮にA子としておこう)は大学時代は心理学を専攻していた。
もともとは心理カウンセラーになりたかったのだ。
読書が好きで特に村上春樹のファンである。
母親と二人で図書館から借りられるだけの本を借りて2週間で20冊以上も読んだことがある。
読書は好きだが乗り物酔いがひどいので通勤の電車内で本が読めない。
A子は自律的で都会的だ。自分のことをはっきり主張することで軽やかに生きてきた。両親との仲も悪くない。

彼女(仮にB子としておこう)は柔らかい岡山弁を話す。語り口通りおっとりとしていて、会話のキャッチボールを楽しもうとする。
向き合う対象への興味から入るコミュニケーションは、相手に話す意欲を与えてくれる。B子は穏やかでそして優しい。
B子は高校時代、ちょっと父親に反抗した時期があった。
だからここ数年ほど父親とあまり会話をしていない。そのことが少し後ろめたくもある。
B子はA子の読書好きがうらやましい。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」をA子に借りて読んでみたが、なかなか読み下せなかった。
でも、A子にはまた本を貸して欲しいと思っている。A子はちょっと得意げにそれを了承する。

A子もB子も5月の連休には里帰りしたいと思っている。A子は新幹線で、B子は深夜バスで帰る予定だ。
就職で東京に出てきてから初めての里帰りなのにB子の母親は旅行に出かける予定で、父親とどうやって過ごすか思案中だ。

・・・・乗り合わせた電車の中、わずか15分の間でも、見知らぬ誰かの、人生の一瞬に立ち会うことがあるものなのだ。


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