ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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10ドルだって大金だ/ジャック・リッチー

2007-04-25 21:46:50 | 
軽妙で洒脱。そしてインテリジェンスを感じさせてくれるジャック・リッチーの短編集。
カヴァー・アートを和田誠氏が担当しているところにも、この本の制作に携わった人たちの遊び心が感じられる。

ジャック・リッチーの短編の多くはかつて「ヒッチコック・マガジン」や「エアッリー・クインズ・ミステリー・マガジン」などに数多く掲載されてきた。
つまりそれだけ多くの好事家の目に晒されてきたということであり、ただ軽いだけではないしっかりとした幹がある。
それがミステリー短編とはかくあるべしというインテリジェンスではないかと思う。

とくにうまいなあ、と思ったのが「可能性の問題」。
「第五の墓」もそうだが殺人の動機と物理的な可能性についてあれこれと推理を進めていく過程が楽しい。
「キッド・カーデュラ」のブラックな結末も秀逸だし、
「妻を殺さば」は彼の短編にしては珍しくウェットでドラマがある。

どこから読んでもさらりと読めてしかも感心する。そして面白い。
本書はミステリーを読むことの魅力が十分に備わっている。