10月29日 南3m 波1m 長潮 月齢24.1
先週の土曜、久しぶりに実家に帰った。
俺の地元では秋祭りが開催、数年問題になっていた喧嘩合戦が今年から再開。
実際、俺も出てたので太鼓の音を聞けば血が騒ぐ。
しかし祭りを見に来た訳でもなく大した用事でもなく釣った烏賊を届けに来ただけだった。
太鼓の音は祭囃子の音とは違い、腹の底から何かが沸き上がるような合図に聞こえる。
最終日の合戦では御輿同士、喧嘩合戦し川へ落とし早く引き上げた方が今年の豊作か大漁かと占うものである。
俺はまだ社会に出る前くらいの学生の時、ここでよく釣りをしていたものだった。
狙う魚は基本は投げ釣りで拘ったものは特にはなかった。
時間が遅かったり天気が悪ければよくここへ来たものだ。
ここでは潟の魚が基本。
今のような洒落た釣りはなかったので釣りをやるダチといえば皆、投げ釣りばかり。
投げてカレイやメイタ、フッコにヒイラギと今では釣れるか分からないが少なくなった魚たちである。
ただ座って一人、底が見えるハゼ釣りが非常に面白かったのだ。
何故、ハゼ釣りをしてたかは謎。
ただ干潮になった時に、今で言うサイトフィッシング。
ナツメ鉛に短いハリス、餌はゴカイ。
底は潟なのでハゼがた沢山見ながら針掛りをさせ釣る。
ただそれだけ、そして・・・
近くの二階の窓越しから同じ年の娘がいつも座って見ていた。
同学年で話した事はなく、特に思い出せないほどの知り合い程度。
最初、「なんしよっと?」と話かけて来たのは彼女の方だったのを覚えてる。
それ以来、キッカケ?でその場所で話すよになり、窓越しから見てたのが俺の居座る場所まで来るようにいつの間にかなっていた。
丁度、今の時期くらいだったろうか寒さが段々と増す頃、俺の横に彼女がいた暖かさが心地よかったのだ。
秋の祭りの夜店を二人で歩いた。
毎年、この場所にはこの店がと気にいってる店が彼女にはあったのだ。
この状態が少しの間、続いたのだがこれから社会に出る頃。
春には県外へ内定してる就職先へ彼女は既に決まっていたらしい。
年明けた頃、「行きたくないなぁ」と彼女が言った言葉に俺にとっては返事がすぐに出ない。
何も言わない俺が腹だたしかったのだろうか。
それ以来、話す事もなく俺もその場所へは足が遠のき、何れは別々の社会へ出てしまった。
もう何年も過ぎてずっと忘れてたのだったが それが昨年、俺は子供を連れて秋祭りの出店へ前に来た場所に寄ったら俺の懐かしい名で呼ぶ声でバッタリと合った。
互いに年輪重ねた顔つきになってるのだが、互いに変らないなぁと懐かしく、しばらく立ち止まって話した。
彼女は家族の呼ぶ声で去っていったが最後の一言が「あんたまだ釣りしよると?」
「あたり前やろ!」と言ったら嬉しそうに去って行ったのが印象的だった。
太古の音が懐かしい。
また俺は何も無く、今年も秋祭りの夜店を歩いた。