エコ・ニュージーランド Eco New Zealand

ニュージーランド発。エコライフ、環境保護、山、森、動物、アウトドア、山歩き、猫についてのブログ。

ねむりねこよりみなさんへ

エコ・ニュージーランドへようこそ!! その時の気分で、過去の旅行の話になったり、庭、環境保全、トレッキング等々、話が飛んでいます。ジャンル別にお読みになりたい方は、左のカテゴリーからどうぞ!! また、本文中のトレッキング(トランピング)関連の用語の説明は、同じくカテゴリー欄から「ニュージーランドのトランピング用語集」をご参照ください (^o^)

ニュージーランドでの環境ボランティア体験!

2010年06月07日 | 環境保全(生態系、動植物)
長らくご無沙汰してました。“猫かぶり”です。このところ“ねむりねこ”がなかなか更新をしないので、そのすきにお邪魔することに…。 

 少し古い話になりますが、この3月下旬に1週間、ニュージーランド南島南端から海峡を隔ててさらに南に位置する、スチュワート島の人里離れた秘境「ポート・ペガサス」という入江へ行ってきました。これは環境保全省が主催する、歴史的な鉱山遺跡の保全・整備作業ボランティアのプログラムに参加したもの。今から百数十年前、ニュージーランドの最南端のこの地で錫の鉱脈が発見され、ゴールドラッシュならぬ、NZで唯一の「錫ラッシュ」が起こった場所です。

 ラッシュはわずか数年で終わり、その後放置されて荒廃が進んだ採掘跡を、元に近い状態に戻し、保存しようということで組まれたプログラムでしたが、参加者は環境保全省(DOC)の職員が、船の乗組員を含め計5名(そのうち女性2人)、ボランティアの参加者は、農場主2人、大学講師、看護士、そして自分と、男性ばかりの計5名。計10人です。

 行きと帰りの船の移動に丸一日づつを費やし、強風の中、大揺れの船内では、船酔いになる人が続出



 ポート・ペガサスは、半径30キロ圏内に人っ子一人住んでいないような遠隔地のため、宿などはどこにもありません。寝泊まりもずっと、DOC所有の船「サザンウインズ(南風)号」内でした。



 周辺は、悪天候の日が多く、よく海が荒れることで悪名高いところ。しかし船長さんがその日の風向きと、複雑に入り組んだ入り江の地形をうまく利用し、最適の場所を選んで毎日移動して停泊してくれましたので、湾内ではあまり船が揺れることもなく、夜もよく眠れましたよ

 船は最大でも14名までしか寝泊まりできない、小さなものでしたが、水洗トイレやシャワーもつき、快適そのもの。合宿感覚で、楽しく滞在できました



 肝心のボランティアの作業は、事前案内で「体力レベル:ハード」とあった通り、なかなかに厳しいものでした 

 まず船から上陸して、現場に辿り着くまでが一苦労。道(と言っても獣道に毛が生えたようなもの)はドロドロのぬかるみで、途中には険しい坂道。もし滑って転びでもしたら、全身泥まみれです… 片道1時間の山道を毎日往復 中にはひどい靴擦れに悩まされた人もいました。

 現場での作業は、主に採掘現場の石積みの上に生い茂った、樹齢100年にもなる木々を切り倒したり、草を引っこ抜いたりといった労働が中心。根っこがはびこって、遺構を破壊するのを防ぐためなのですが、これが大変な重労働。なにしろ初めは遺構がどこにあるのか全く分からないくらい、鬱蒼と木々が生い茂っていましたから、切っても切っても、広い鉱山跡はなかなかその全貌を現してくれません。



 ボランティア仲間からは、思わず「こんなきつい作業をタダ働きで、しかも$350もの大金を払ってまで参加している俺達って、奇特なのかおめでたいのか分からないよな(苦笑)」(そう、このボランティアに参加するために交通費等実費を払うのです)などという無駄口まで出るほど。



 しかし皆やる気満々で、遺跡は徐々にその、「ニシンの骨(Herringbone)」とも形容される、ユニークな姿を現していきました。

 丸2日間そうした作業を続け、皆少し疲れたところで、中日は休憩を兼ねた、自由行動の日になりました。希望者は講師役のウォーリーさんの案内で、周辺の探検に出かけます。鉱石を運び出す目的で造られた、トロッコ用軌道跡を辿り、山深くへと分け入ると、



当時の鉱夫達が住んでいた住居跡や様々な遺跡が現れます。



 途中からは道も途絶え、強風吹きすさぶ中、吹き飛ばされそうになりながら、山の頂を目指して登って行きました。



上から眺めるポート・ペガサスの姿は、過去2日間の疲れを忘れさせる絶景



遠くには奇岩として知られる、Gog & Magogの姿も(クリックで拡大)



 ウォーリーさんが語る昔の話も、その場に身を置いていると、とても100年以上前の事とは思えないほど、身近に感じられました。

 楽しい遠足を終えて船に戻ると、嬉しい驚きが用意されていました



 遠足に参加せず、一日船で過ごしていた仲間たちが、アワビやカキ、ウニや魚などのたくさんの海の幸を捕まえて、夕食を作っていてくれたのです。



 その晩は、新鮮な魚介類のごちそうに舌鼓を打ちながら、いつも以上に話に花が咲きました。(ウニだけはゲテモノ扱いで、喜んだのは自分だけでしたが…)

 残り2日間は、生憎のの中となりましたが、作業は順調に進み、予定通り無事終了。全貌を現した遺跡が、おそらく100年ぶりに人の目に触れるものであろうと思うと、感慨もひとしおです。



 世代もバックグラウンドもまちまちの10人のメンバーの間にも、いつの間にか、不思議な連帯感みたいなものが芽生えていました。数日間の作業は大変でしたが、快適な船での生活や美味しい食事、フレンドリーで熱心な仲間。とても価値ある体験を積むことができたように思います。

 独力ではなかなか訪れることができない場所へ行くことができたり、その道のエキスパートから専門的な話を聞くことができる、DOC主催のボランティア。毎年全国各地で、簡単なものから本格的なものまで、多くのプログラムが組まれていますので、皆さんも気に入ったものを見つけて、参加してみてはいかがでしょうか。(プログラムのリンク先はこちら