あるOBのお客様からリフォーム工事の依頼を請け、月曜日から工事が始まりました。
7年前に建てさせていただいたお住まいです。その時のお父様はものすごく元気で、現場でもいろいろな意見をいただいたり、時には明るく元気に厳しく叱り付けられたものでした。
しかしその後、病気を患い、現在も進行しており、器具を付けていないと生活もままならない状態です。
そんな時に、施主様から 『ちょっと相談に乗ってほしい』 と電話があり、お父様のかねてからの念願であったプライベートルームを作りたいとの申し出をいただきました。
早速伺うと、お父様は笑顔で私を迎え入れてくださり、世間話に花が咲きました。
『だけどよぉ、北澤さん。俺もこんな風になっちまったから、あとどれだけ生きられるかわからないんだ。だから、なるべく早くになんとかならんかなぁ・・・』
瞳の奥に、複雑な感情を察しました。 ぜひ、ぜひ、力になりたい。
工事が始まったものの、今日、『イメージと違う部分がある』 とお父様から電話をいただきました。施主様とは打ち合わせ済みであったものが、お父様には十分な説明をしていなかったためです。その時の施主様との電話のやり取りです。
『先ほどお父様とお話しをしてきました。少し食い違いがあるのですが、いかがしましょうか?』
『北澤さん、とにかく、おやじの満足するようにやってくれ。いろいろ大変かもしれないけれども、とにかくおやじが満足するようにやってほしいんだ・・・・』
その言葉の奥には、ひとつの覚悟を持って話されている事が痛いほどに伝わってきました。胸が熱くなりました。
『はい、わかりました。とにかく早く、完成するようにがんばります。』 と私。
建築の仕事の意味と価値を、深く深く感じさせていただいた、今日の出来事でした。
ではまた。
おさむ