オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

札幌近郊の山の上に陸封されたオショロコマ

2013-04-10 19:27:15 | 渓流魚、蝶、自然
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札幌近郊の山の上に陸封されたオショロコマ
20XX-9-18(月)  曇 のち雨 強風

氷河期、気の遠くなるような昔に、札幌近郊の山の上の小さな沼に陸封され、今も奇跡的に生き残っている貴重なオショロコマを撮影に出かけた。


ここのオショロコマに初めて会ったのは昭和42年、私が19歳の時であった。

40年も昔のことだから、もう話してもいいだろう。

登山の途中に偶然にこの沼にオショロコマがいることを知り、当時私の住んでいた営林局関連の学生寮、北1条西11丁目にあった青雲寮の寮生たちにこの魚を食べさせてあげたいと思ったのがきっかけであった。

現代では想像もできないであろうが、私を含め裕福ではない子弟のための学生寮で食費も極限まで切りつめられていた。

夕食のおかずが、例えば小さな開きホッケの1/4だけという悲惨な食生活であった。

沼の手前は開けているが遠浅で魚は見えない。そのほかの沼の周囲はびっしりと背の高いクマザサで覆われ、遊歩道もなかった。

魚がいそうなところは岸辺がなくてずどんと急に深くなっており釣りのためアプローチすることは危険かつ困難であった。

そのうえ、大きな木製の掲示板がこの沼のほとりにあって、氷河期の遺存種オショロコマがこの沼に奇跡的に生息しているが学術的に極めて貴重であり捕獲は厳重に禁止すると明記してあった。

道東の北見市からやってきた私は当時オショロコマはどこにでも無尽蔵にいる生き物だと思っていたので、鼻でせせら笑い、作戦を立てた。

翌年、春先に大胆な密漁を決行した。山に誰もいない4月に硬雪で笹の上に厚く積もった雪の上をどこまでもぬかることなく歩いて行ける短い時期がある。

私は単身、長いつなぎ竿を佐々木小次郎みたいに背負って雪山登山を開始、約3時間で無人の沼まで登った。

その時期、はや沼の氷は無く、岸辺は硬雪残雪で覆われて予想どおり、どこでも自由に行けた。対岸までぐるりと固く締まった雪の岸辺を歩き沼の一番深くなっているあたりで釣りを開始した。

振り込むとわーっと小魚がエサに群れた。10cmほどの、やせたちびオショロコマが入れ食いであった。

何百匹も釣ってぎっしりとリュックに背負い早めに下山した。その夜、寮のまかないのおばさんにお願いして全部焼き魚にして寮生の貧しい夕食のおかずに供し、たいそう喜ばれた思い出がある。

それから気の遠くなるような年月が流れた。

私は、その後この沼を一切訪れたことはなかった。

最近オショロコマの地理的変異や分布に興味を持つようになり、この沼のオショロコマを思い出した。

なかなかチャンスがなかったが札幌に出張する機会があり蝶友の K氏のご協力を得て40年ぶりの調査を決行した。

朝8時にホテルを出発。K氏の車で登山口へ向かう。昔のことなので付近の風景もすっかり忘れてしまい今回初めてきたも同然だ。

けっこうきつい登山路だ。石がごろごろ、急な登りが多く今の私はこんな登山は嫌いだ。

昨夜飲み過ぎたK氏は私より先にばててしまい遅れがちである。

途中から不穏であった天候は悪化の一途で雨が断続的に降りはじめ、強風まで吹いてきた。

用意してあった青い合羽を羽織って登る。

合計10名ほどの下山中の登山客とすれ違った。

最後は沼から流れ落ちる滝沿いに一気に登り切ると約2時間の登山で懐かしい沼に着いた。

よく捜したが昔あったオショロコマ釣り厳禁の木製の看板は朽ち果ててしまったのか、どこにも無かった。

普段は登山客が多いようだが幸い?今日は誰もいない。

背負ってきたウェーダーをつけて急遽釣り人スタイルに変身、小雨が降る中、沼の右岸に強引な笹こぎで到達した。

沼に倒れ込んで木肌がでている大きな倒木の上を軽業師みたいに歩いて沼に入った。

滑って落ちれば、おぼれること間違いなし。

5.4mの長竿にウキをつけウキ下1.5mくらいで振り込むと、懐かしい小さなオショロコマが釣れた。





やや白っぽい色調で虎模様の縦のパーマークが濃く目立ち赤点紋理はとても細かい。

















腹部はあまり黄色くならない。成魚でも大きいのが15cm, おおかたは10cm前後で幼魚も含め20匹ほど釣って撮影した。





気温が急速に下がりぶるぶるっと寒気がくる。風雨が断続的に強まり体温も低下してきた。

倒木の上に乗ってアクロバテックな姿勢で釣っているうちに疲労困憊となり、危険を感じて釣りを中止した。

撮影場所がなく岸辺は底に厚いヘドロ状の堆積があるためすぐ濁る。足をいれると猛烈に濁り、ずぶずぶぬかり、ぶくぶくと気泡が上がってくる。

仕方なく水中の倒木の上のヘドロ状堆積をぬぐって木肌をきれいにし、水が澄むのを長いこと待ってそれをバックにオショロコマを撮影した。

撮影したオショロコマたちは、いつも通りすべて丁寧にリリースした。
 
下山したあと、藻岩山の裏の中ノ沢に放流されたとおぼしきオショロコマが昨年いたというので雨の降りしきる中、現場へゆき釣ってみたが滝の下の小さなたまりでカジカが二匹釣れたのみ。浅くコケが生えて汚い流れでとてもオショロコマが住める川ではない。

雨の中で背広に着替え、釣り装備などを段ボール箱にまとめてセブンイレブンで自宅へ宅急便に出して、札幌駅北口へ16時までに送ってもらい、列車で千歳空港に向かった。空港でトンカツ定食を食べ、そのうえ土産物店の試食品のお菓子をあれこれつまんでいたら腹一杯になってしまった。

JAL 2719  千歳 17:45 ーーーー女満別へ   

台風13号の余波で悪天のため飛行機は滅茶苦茶に揺れたが無事北見にもどった。あわただしいオショロコマ撮影旅行はなんとなくうまくいった。無理をいって面倒な調査行におつきあいしていただいたK氏に厚くお礼申し上げます。


Salvelinus malma in nature in Hokkaido, Japan. Oshorokomanomori blog 5 dollyvarden in Japan



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