オショロコマの森ブログ5

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イトウ放流時代に思う その参  道内外来魚

2020-07-31 01:25:37 | イトウ
イトウ放流時代に思う その参  道内外来魚



ここで、 再び イトウ放流の話にもどります。










道内外来魚の概念。



今後増えてくるかもしれないイトウの放流に関してはニジマス放流と類似の問題点があるほかに、ニジマスとは異なる問題として道内外来魚としての概念を念頭において考える必要があるとおもいます。




本州では養殖イワナを、別の水系に放す場合はこれを(そこの在来イワナと交雑する)国内外来魚と表現しますが、イトウやオショロコマに関しては、そのような場合、これは道内外来魚といった概念になるかと思います。




同じイトウでも水系毎に遺伝子に違い(外見の違いのみならず生態的違いにも関与するかも知れない)があることが知られており、今現在イトウが健在、またはその可能性がある水域に他の水系からの養殖イトウを放すことは当然ながら避けるべきというのが、ごく一般的な考え方ではないかと思われます。










よくいらっしゃる理屈っぽい向きの方々は、それじゃあ サクラマス(ヤマベ)やシロザケ、カラフトマスは全道各地で採卵したものを、あちこちの川に都合しあって放流しているのは一体どうなんだと噛みつくようですが、既に長年かけて、もともとの由来が完全に滅茶苦茶になっているので、いまだ純系のオショロコマ、アメマス、イトウ等の話とはまったく次元が異なります。




なお、サクラマスやシロザケにしても知床等では、昔から人工孵化させた稚魚の放流を行わない渓流があります。




そこでは天然の個体群のみが遡上・産卵します。




地元漁師さんは貴重な遺伝子資源として、これらの渓流に登るサケマスを大切にしています。







   近年、盛んな養殖イトウの放流。



本来の自然は、ダム建造、開発、工場排水その他種々の理由でいったん完全に破壊されきったが、見たところ豊かな水量で流れる、たとえば豊平川のような、いわば用水路ないし排水路みたいな水系は道内あちこちにあります。





近年、もともとの生態系は完全に破壊されて今は用水路みたいになっている川に養殖イトウを放す行為が話題になって、賛否両論があるようです。




この場合、生態系の概念からは、単にイトウのみを放したところで本来の自然がよみがえるなど到底考えられないぞ.........という冷ややかな向き(冷やかし)が多い。




その程度のことは放流する方々もおそらく先刻承知のこととはおもいます。




一時期全国的に流行った小学生による人工孵化させたサケ稚魚放流、カムバックサーモン運動も遡上回帰したサケが自然豊かな川底に有効産卵して天然のサケの本来の生態系がよみがえるのでなければ、単なる自然保護ごっこの延長に過ぎない。しかし自然に多少の関心を向けさせる効用はあるかもしれない。




そのような水域に養殖イトウ(成魚)を相当数放して、ときどき釣り具店などをスポンサーにつけてイトウ釣り大会をやれば、無料の管理釣り場を造ったようなもので、一般の釣り人のみなさんは大いに感謝して殺到し、たいそう喜ばれるとは思う。




これまでイトウが放流 された水域として判明しているのは前述のオビラメの会による尻別川、朱鞠内漁協による朱鞠内湖流入渓流が有名ですがこれらは少なくとも同水系の種苗を慎重・計画的に放しており大きな問題点はないと思います。















現在、把握されておりその是非について議論のあるものとしては、これらのほか、阿寒湖、豊平川、石狩川(旭川市内)、真駒内川、後志利別川、漁川、定山渓ダム(さっぽろ湖)、小樽内川、そして恐らく屈斜路湖 に養殖イトウが放流、ないし放流された可能性があります。当然ながらこれら以外にもさらに多くの水域に養殖イトウが密かに放流されているかも知れません。





屈斜路湖ではこれまでまったく見られなかった小型のイトウが最近相次いで釣れていますが、在来の生き残りイトウの復活というより、突然釣れだしたことからゲリラ放流の可能性がささやかれています 。




このように現在あちこちで盛んに行われているイトウの放流をみると、かってのニジマス無差別放流黎明期の頃と同じで、 だって川でもでっかい魚を釣ってみたいんだもん 、みんなで楽しくイトウ釣り ♪♪ という明快・単純・素朴な理由であちこちに養殖イトウを放流している恐れはないだろうか。




それとも、ひたすら放流を続ければ、やがてはイトウの生態系がよみがえるとでも信じておられるのでしょうか。( その可能性は限りなく少ないが、100%否定できるかどうかは不明。)




オビラメの会のように専門家もまじえ、30年にもおよぶ周到・入念な計画(河川の復元等も含む)に基づいてイトウの棲む健全な生態系そのもの をとりもどすといった壮大な理念とはどう見ても異質のものに見えてしまう。




放流はマスコミも動員して豊平川みたいに大っぴらに行うものもあるが、かってのニジマス放流全盛時代のように、こっそり自分たちだけの釣り場を作ろうとゲリラ的に放流することが、今後はむしろ多くなるだろう。




イトウの放流というものを自分自身でもやってみたいと単純に模倣する人もきっと次々にあらわれるだろう。




それが状況によっては最も恐ろしいし、今後急速に増えてくる可能性がきわめて高い。




この類の方々はある種の確信犯的な信念を持っている人が多いようで、生物多様性条約(CBD)からはじまって、生態系がどうだのこうだの........ etc etc......種々述べてみたところで他人の意見なぞ聞く耳もたず、まったく馬の耳に念仏だ。




何故か口はとても達者な方が多いようで相手の予期せぬアラ・弱点を探してそこを突き、うち負かす技術にかけては天才的なところがあるので、メンタルが弱く屁理屈が大の苦手な一般の方たち(私もそうですが)にはおそらく勝ち目はないだろう。




何しろ、今のところ法律的にニジマスやイトウは勝手気まま、自由にどこに放流しても何らおとがめはないのだ どうじゃ文句あるか という素朴な錦の御旗すら持ち出す可能性がある。




ブラックバス、ブルーギルなど生態系を非可逆的に破壊する外来魚の放流を禁止する法律はこのような確信犯的な方々のために、あえて、作られたものと思います。



ニジマスとイトウの放流に関しても、法律的な規制がないからといって今のような完全野放しは好ましくなく、最低限必要なルール、ないし自主規制を考慮すべき時期ではないでしょうか。




普通の釣り人ならイトウの放流情報が流れたとたん、最近でっかいイトウが釣れるという噂の○○川や○○湖へと大挙して出かけたくなることだろう。状況によっては、恐らく道外からの釣り人もたくさん来ると思う。




高額の大型魚用釣り道具やルアーの売り上げがどんどん伸びる。おそらく釣り雑誌もニジマスやブラックバスの時のように、あおりに煽れば、釣り本や釣り新聞の売り上げも飛躍的に伸びるかもしれない。




ニジマス放流は十勝ルールのように川の生態系を重視する人々が少しづつ増えて、その善意にささえられる形でかってのような無差別放流暗黒時代は過ぎたかに見えるが、完全になくなったわけではなく、これを自治体レベルで無思慮に継続しているところすらいまだにあるのは前述のごとくです。



あくまで仮定の話ですが、この確信犯的自治体では、今度は 1メートルサイズの大型養殖イトウを自然豊かな川にどぼどぼと放流して、ニジマスとおなじくキャッチアンドリリースさせ、フライ・ルアーフィッシングの聖地などと大宣伝しながら、さらなる釣り客増加をもくろむ恐れはないだろうかと、とても心配です。




ただ費用対効果の面ではそう簡単にはゆかないとは思うが。 私の杞憂であることを願います。




北海道のイトウ( Parahucho perryi )の大きな特徴のひとつは降海することで、特に天塩川や猿払川では降海して海で大型化する。









たとえば豊平川などに放流した養殖イトウが海に下る可能性もあり、それが別の水系に遡上する可能性もある。




いま、まさにイトウの無差別放流暗黒時代が訪れようとしているのかも知れません。




最後に、何度もの繰り返しになりますが、今現在残存する Native なイトウやオショロコマのピンポイント的な原始の生態系は次世代にも引き継ぐべきとても大切なものです。



そのような場所にはニジマスはもちろん、道内外来種となる他水系の養殖イトウ、他水系のオショロコマなどを放流することは絶対に避けるべきです。




河川、湖沼、そこに棲む貴重な在来魚たちは、釣り人だけのものではありません。




イトウとニジマスとの関係では風連川ではイトウの産卵床がニジマスによって破壊されていることが報告されており、イトウが自然産卵を行っている水系にもニジマス放流は厳に避けるべきと思います。




現在、北海道でイトウが自然状態で産卵し比較的安定して再生産が行われている水系としては、前述のごとく尻別川水系、天塩川水系、猿払川水系、斜里川水系、風連川水系、朱鞠内湖とその流入河川の 6水系が知られる。




それら以外にも 十勝川水系の一部、利別川水系の一部、西別川水系の一部、道東、道北の河川群、小渓流、湖沼 などかってイトウが豊富に生息していた場所(42水系あったといわれる)ないし今でも多少は釣れる水域が残っている。






今現在ほとんどイトウがみられない、ないし少ないからといって、それらの水域に安易に他水系の養殖イトウ(道内外来魚)を放すことには慎重になるべきだとおもいます。




また、イトウの商業的繁殖がまさに軌道にのって養殖イトウの入手が容易になった現在、今後おこりうるゲリラ的な養殖イトウ放流は、水系によっては今ある生態系にとってニジマスによる被害を凌駕する、最も恐るべき驚異になるかもしれません。




道内外来魚というべき養殖イトウ、養殖オショロコマの移植・放流がいくつかの理由(シロザケ、カラフトマス、サクラマス=ヤマベ、ニジマス、ヒメマス、ワカサギの自由な放流をよしとする現状と較べた場合、矛盾を生じるなど )で整合性を欠くため法律的には規制しにくいからというのは理由にならないと思います。




繰り返しになりますが、道内外来魚放流に関しては、今のうちになんらかの対策や心構え、ルール(自主的な規範)などを考える必要があるとおもいます。




そのめどがたつまでは養殖イトウの放流は控えるか、少なくとも複数の有識者のご意見を聞き、その経緯を公表記録してから行うなど慎重な態度が必要かと思われます。




ちなみに私自身は養殖イトウの放流は何がなんでもすべて反対というわけではなく、放流イトウ釣りをおおらかに楽しめる人工的な水域は、多少はあっても良いのかもしれません。




ただ、前例として、バブルの頃に北見市近郊に大きな池を掘り、そこに近郊の川で捕獲した大型イトウを多数放したイトウ専門の釣り堀が出来たことがあります。




イトウのエサ用に多数のヤチウグイが放されて、ほんのひと時、けっこう流行ったようですがバブルが終わった途端に客足が遠のき、たちまち廃業しています。




ちなみに、長年人気があった北見市近郊のトラウト専門の釣り堀が、今年(2020) 閉鎖、廃業しているのを先日確認しました。 残念なことですが、コロナのせいでしょうか。




最後に何度もの繰り返しになりますが、いまある自然に多大なる影響をおよぼす可能性が少しでもある場合、養殖イトウの放流は慎重かつ思慮深い態度が必要と考えます。



    終わり





閑話休題  Parahucho perryi のいくつかの特徴の一つは鱗が大きいことのようですが、そういえばモンゴルのイトウは鱗がめだたなかったような気もします。









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