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圧力に屈してたOPCW & シリア空爆から1年

2019-05-20 17:23:16 | アジア情勢複雑怪奇

1年ちょっと前、シリアでアサド政権が化学兵器を使ったという無理筋の難癖で米軍がシリアを空爆するという事件があった。その際、OPCW(化学兵器禁止機関)が実にぬるい、透明性のない行動をしていた。

最近、その当時の調査の一部が漏えいし、アサドじゃないという結論になっていた有力報告書が少なくとも存在したが隠蔽されていたことが判明した。


一昨日の櫻井ジャーナルさんが丁寧に書かれていた。事情がのみこめない人は参考にされるといいと思います。

西側の支援する反シリア政府軍が化学兵器を使った事実をOPCWが隠したと判明

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201905180000/

 

まぁだって、そんなのみんな知ってた情報だからなぁといったところではあるけどね。

この事件は、そういう無理筋なことをやった、仕掛けたのは米というより英仏が手を入れているホワイトヘルメットだろうという点が大っぴらになっていったイベントでもあった。インチキなドキュメンタリーみたいにヤラセの映像を撮って世界中のソーシャルメディアに発信して、それを一部主要紙がまことしやかに伝え真実であるかのような外形を整える。

だが、様々な人たちが声をあげていった結果、今となってみれば、この事件を機に、ホワイトヘルメットを売り出してみたところで、以前のように「純粋無垢」なものとしては受け取られていない感じが強くなった。良いことよ。

そして、イギリス政府が非常に臭いということも知れた。その反動で主にイギリス関係の有名人が前に出るようになった。

私のブログでも昨年4月にはこんな記事を書いていた。

ロバート・フィスク:ドゥーマで塩素攻撃なんて起きてない

ホワイト・ヘルメットはプロパガンダ組織 by Roger Waters

また、英仏は乗り乗りだけど、他のNATO諸国でも意見が割れ、意見としては英仏のいうことに「ええそうそう、はいはいその通り」と言ったところで、現実の行動は異なることをするといった傾向が強くなった。

独伊シリア攻撃不参加表明、イギリス国内不気味

 

そして、まぁ実際、このガセネタを基に、トランプ政権はシリアに向けてミサイル攻撃をしたわけですよ。ほんんと、馬鹿なことをしたものだ。

これでまたトランプは、ロシアをはじめとすると「東インド会社による蛮行被害者同盟」みたいな非西側世界で嘲笑される大きな原因を一つ作った。

が、しかし、米ロが直接対決しているようなものなので、攻撃の連鎖にならないよう苦心惨憺して攻撃していた。当時の私のブログの記事は次の通り。

しかも、ダンフォードなんか、ロシア軍がいないところを撃ってリスクを最小限にしましたとか言ってた。笑っていいのか、何したらいいのかわからない発言。

要するに、この間書いた通りの死のスパイラルに入らないよう、苦心惨憺でございますと言ったわけですね。

(1) アメリカがシリアの基地等を攻撃する
(2) ロシアは、通告通り、ミサイル OR キャリアを撃つ
(3) アメリカ、ロシア南部を攻撃
(4) 本土攻撃されたロシアは、UK、US etc.に攻撃
 
という順序にならないよう、(1)から(2)にならないよう、
 
・空爆の目的は、シリアが化学兵器を使わないよう、抑止するため
 
という目的を一生懸命宣言し、
軍事の実質的には、
 
・とても精確、ピンポイントです
 
をアピールして、その流れでロシア軍の基地もロシア軍派遣団のいるところもどこも撃ってません、シリア内の被害も最小限です、そんなに無茶してるわけじゃないんですよ、とアピール。
 

さらに念を入れて、

・これは一回限りです


と、今後波状攻撃してシリアを崩そうとか思ってないことも表明

シリア空爆:侵略軍空爆が導くであろうもの

 

という感じだった。1年経ってわかるのは、ペンタゴンはシリアで米ロ直接対決して世界中を灰にしたいとまでは思ってないようだという点か。少なくともネオコン以外の人間がハンドルを握ることが可能な体制にある時間帯もあるようだ、というのがわかったのは安心。

結局、怖いのは、現場というより、政治家とかメディア、インチキ御用学者といった勝手なことを言うことが商売の人たちだということもできる。

もう一つは、この話がさらに確からしくなったということでしょうか。

結局、先進国というかthe West諸国はどこも有効に侵略戦争を止められる政治体制を持っていない。これが確認されたことは、将来への課題が設定されたという意味ではポジティブ、現状ではまったく残念な結果だったというべきでしょう。
 
別の言い方をすれば、先進国というかthe West諸国はそういう名前が付いているだけで、別に何も先進でも立派な国民でもなかったということ。
 
従って、ユーラシア側のロシア、イラン、中国がゆるく連合してくることで、この侵略マインドを持った侵略是認スキームに抗して、全体としてはじめて落ち着くメカニズムが出来上がるということじゃないでしょうか。
 

■ ゲラシモフ、前に一歩

で、この事件で、ロシア軍統合参謀本部議長という、要するにロシア軍のトップの人ゲラシモフが、シリア国に一方的に難癖つけて空爆するのは侵略だ、だったら、そんなことをしたらシリアから頼まれて国防の任務を補助する我々ロシア軍は、

撃ち込まれたミサイル OR 撃ったキャリア(だいたい艦船)を撃つ、

といったことが非常に大きな出来事だった。

 

ミサイルを撃ちこんで迎撃して撃ち返す能力の高低ももちろん大きい話だけど、キャリアを撃つというのは別のレベルに危機を引き上げている。

アメリカが狂人戦法で、脅しをかけて相手を屈するよう仕向けるというのは知られているが、この場合は相手は弱く、屈する可能性があるからやってる。

それをそのままロシアが入っているシリアでやった。

そこでロシアはもう一段狂人度をあげた。本当に撃つ構えをした。多言でもなく、プロパガンダもしてない。ただ宣言し、その言の通り超音速対艦ミサイル(ジルコン)を装備したMig-31を準備させた。

ペンタゴンの対応は、上のような、なんというか、一応撃つといったから撃ったんです、という仕立ての一撃に大幅にスケールダウンした攻撃となった。

 

シリアでは、イドリブ、北部の油田地帯の決着はついていないが、英などが絡んで仕掛けて来る事件はそういえばめっきり下火になったように見える。

それはやっぱり、インチキネタを使ってNATO各国がちょろちょろ攻撃に加わった場合、本当に撃たれる可能性があると認識されたからではなかろうか。

今までは、何をやってもどうせ誰も止められないとタカをくくっていたが、そうもいかなくなったというお話。

 

NATOという各国が各国の利害を持ちあってる組織を自国を離れた場所の侵略に使うということのデメリットが見える形になったともいえるんじゃなかろうか、など想像する。

例えばイギリスが仕掛けてシリアに空爆したのを見とがめたロシア軍がイギリス艦船を撃沈させた場合、他の国の軍がそれを庇ってロシア軍に報復する可能性は、ありますか? 

 

■ ザハロワ、前に一歩

ロシア軍の静かな一歩が現実に巨大な影響を与えていた頃、ロシア外務省も、スクリパル事件でイギリスから仕掛けられた嫌疑を払うためにモスクワで各国の外交官を集めて説明会を行うなど、大忙しの毎日だった。大活躍だったといっていい。

その中で、4月19日にザハロワ報道官が行ったブリーフィングは、驚くべき率直さでUKの過去を断罪していた。

前にもちょっと書いたことがあったけど、「UKが犯した政治的犯罪」という趣旨で、クリミア戦争もあれば、インド統治の惨さ、中国への阿片戦争と過去150年ぐらいイギリスが世界各国で行った蛮行を、主に西側の研究者の言を引いて手短に紹介した。そして、そこら中で勝手に人殺ししてるのがイギリスの諜報機関だという点も力説(ジェームズ・ボンドのlicense to killは要するに本当だ、と)。

Political crimes committed by the UK

http://www.mid.ru/en/posledniye_dobavlnenniye/-/asset_publisher/MCZ7HQuMdqBY/content/id/3178301

 

これはいつか別途エントリーしたいと思いつつ1年経ってしまったけど、いやぁ言うなぁと驚く。しかも、最後に、自分のブリーフィングをイギリスの外交グループの人たちも聞いていると思うが、あなたたちは自分の歴史を誇れるんですか? とまで言った。

下の動画はこれに気づいたアメリカ人のラローシュグループが抜粋して読み上げたもの(このグループは基調がブリティッシュエンパイアこそ諸悪の根源というもの)。

 Damn British Lies: The Emperor Has No Clothes - LaRouchePAC Friday Webcast

 

■ 総じていえば

ということで、1年経ってみて思うのは、シリアを崩そうとして無理やり極道なことをやり続けた西側さんの試みは、いろんなところで実は自爆しておるな、といったところ。

まず第一に自分たちが作ってきた国際機関を恣意的に動かした結果、国際機関に関わる西側の人間にも不信感を植え付け、また、あまりにも奇妙奇天烈なホワイトヘルメット劇場だったために、自国民(UKとかUSとかフランスとか)にも怪しまれ、さらに、ロシアの決意をさらに固めた。

そして、考えてみれば、去年との比較でいえば、イギリスが前面に出て策謀をしているといった感じが薄くなった。

これは折からのアメリカの「ロシアゲート」にも関係してる。スティールの調査報告問題はMI6にもつながってるわけだし。

策謀の鎮静化(あるいはヘマにしかならない)は一時的なものなのか、それともかなり深刻なものなのか。まだわからないけど、この1年を通してみれば何か後ろで動けなくなった人たちがいるんだろうとは推測できる。

 


 

 


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