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バンデラ主義を違法化しようとしてるポーランド

2018-02-04 15:45:10 | 欧州情勢複雑怪奇

昨日コメント欄でちょっと書いたけど、ポーランドが現在通そうとしている法案が物議をかもしている。現在議会を通ったので、あとは大統領が21日以内に署名すると法となるという仕様らしい。だからあと正味2週間ぐらいで決着する。

ホロコーストに「ポーランド加担」の表現禁止する法案、上院可決

http://www.bbc.com/japanese/42901060

多くのメディア、つまり西側メディアが書くところによれば、この法案では、2つが争点となっている。

一つは、アウシュビッツをはじめとするナチの収容所施設がポーランドにあることから、それをPolish death campのようにPolishという名をふせて呼ぶのは侮辱だという話。

もう一つは、ポーランド人もユダヤ人殺害に加担しているだろうという話に対するある種の反撃(法案自体からは、確実にアカデミズムやリサーチを禁止すると言っているわけではない)。このへんは今はじめてこんなことが問題になっているのではなく、過去20年ぐらいいろいろあった。

で、これに対して各種団体やイスラエルが猛反発をしています、というのでメディアを賑わせている。

 

が、しかし、これらの大騒ぎの何十本もの記事は、今日的に大きな出来事に触れていない。何十本か開けてざっと読んだが、本当になかった。

それは何かというと、今回のポーランドの法案は、いわゆる「バンデラ主義者のイデオロギー」を違法とし、1943年から1944年にVolhynia とガリティア東部で発生したポーランド人とユダヤ人の虐殺を犯罪とみなす、という部分。

The bill, which also outlaws the so-called “Bandera ideology” of Ukrainian nationalists and criminalizes the 1943-44 massacres of Poles and Jews in Volhynia and Eastern Galicia, did not sit well with the Ukrainian government.

https://www.rt.com/news/417546-poland-holocaust-bill-israel/

 

これは過去のことではない。ここで書いたように、現在のウクライナの体制は単発の頭のいかれたネオナチが問題じゃなくて、過去から続いているSS集団の末裔だという話。

「UKRAINE ON FIRE」with オリバー・ストーン

 

ここを、RT、スプートニク等のロシアメディアしか報じていないようなのが、いやぁ、この問題の深刻さをはしなくも表しているようで興味深い。いやもう、実に興味深い。これだけ騒いで、ここが抜けてんのかよ、と。

Polish senate passes Holocaust-related bill that triggered diplomatic spat with Israel 

https://www.rt.com/news/417546-poland-holocaust-bill-israel/

 

で、それに対してウクライナの外相は、ポーランドが共通の歴史を政治化し、歴史的出来事の一方的な解釈を推進している、と非難している模様。

Ukraine's Foreign Ministry accused Poland of politicizing common history and promoting a “one-sided interpretation of historic events.” Noting that Ukrainians, on par with Poles, have been victims of “totalitarian regimes,” the ministry blasted what it labelled as “attempts to portray Ukrainians exclusively as 'criminal nationalists' and 'collaborators' of the Third Reich.”

で、この「共通の歴史」というのが過去数十年の結構なキーワード。

それは、ポーランドとウクライナは、共に「全体主義体制」の被害者である、という定義付けをすることによって、ドイツとソ連の両方からいじめられた被害者であるというポジションを両国に与えるという仕様。(被害者以外のポジションを認めない→自分たちの加担分を認めない、になるともいえる)

しかしながら、具体的にいろいろ見てみれば、ウクライナのバンデラ主義者は、見境なく、ナチの親衛隊も顔負けのことをしていたのはよく知られている。

ここでまとめた通り、「ホロコースト」は開けられていない部分がある。

ナチズム打倒においてソ連が果たした役割を決して忘れない by ネタニヤフ

 

で、その、殺戮の連続の中では、ユダヤ人のみならず、場所によってはポーランド人もしばしばターゲットになっていたので、ウクライナとポーランドの「共通の歴史」というのは、政治的アジェンダの推進みたいな場合以外では、つまり個人の歴史の中では支持されていなかったであろうと推測できる。

が、そういう歴史を知る人も少なくなってきたため、うのみにしていたポーランド人も結構いたんだろうとも思われる。

ウクライナのナチ残党みたいなあの若い衆も、ホロコーストとはドイツがやったこと、俺らには関係ないと言い切っているという話をよく読んだ。こういう具合に教育されているんだと思う。

 

■ ポーランドもそうとう後ろめたい

ウクライナに対しては、我々はバンデラ主義者とは違う、と大手を振って言いきれるポーランドだが、この地域で悲惨な運命をたどったユダヤ人に対して後ろめたいところがないかというと、それはまったく違う。

ポーランドは第二次世界大戦まで欧州最大のユダヤ人人口を抱えていたのに、今は欧州で最もマイノリティー人口のいない国になっている、という推移が何を表すのか。ユダヤ人がいなくなったということ。

で、それはドイツのナチのせいだと言うのはおおむね正しいにしても、実のところ現地の対独協力者(コラボレーター)もいっぱいいたし、戦争が終わってもユダヤ人は元のところに戻れなかったという事実もよく知られている。

このあたりの話。

ソビエト占領下のポーランドにおける反ユダヤ運動

要するに、ユダヤ人はドイツ側に逃げるはずもないので、ロシア側に逃げて行った。その人たちが戦後ポーランドに戻ることが可能になったのだが、多くのユダヤ人はポーランド残留を望まなかった。

このため、大量に流入したユダヤ人とポーランド人の間に軋轢が生じ、1945年から1947年にかけてポーランド人によって1000人から2000人のユダヤ人が殺害された[5]。

(中略)ユダヤ人の一部はポーランドから国外へ移住した、東側諸国でポーランドだけがユダヤ人が自由にイギリス委任統治領パレスチナへ移民できる国だった[3]。多くのユダヤ人がポーランド残留を望まずパレスチナを目指した。 

 

ただの殺人の問題じゃなくて、ユダヤ人が住んでいたところを追われると、そこにあった家や家財道具などを近所の人たちが自分のものにできるチャンスというものが発生する、だから帰って来れられると困る、っていう要素が多大だったんじゃないですかね。

だから、外に出て行ったユダヤ人からすれば、自分たちはナチスとソビエトの被害者である、とかいっているポーランドを見ると、黙ってはおれない、ということになる。

いろんな調査があるけど、直近のポーランドのちょっと怖いようなバックラッシュに至る道筋となったのは、ヤン・グロス教授イェドヴァブネ事件について書いた『Neighbors: The Destruction of the Jewish Community in Jedwabne, Poland』だろうと思う。

Neighbors: The Destruction of the Jewish Community in Jedwabne, Poland
Jan T. Gross
Penguin Books

 

詳しくは、このへん。

ヤン・グロス

イェドヴァブネ事件

 

いずれにしても、バンデラ主義者の勃興を支援した英米の罪は重いし、その人たちをかくまって、結構な地位を与えて、ウクライナ洗脳工作の拠点のようになったカナダも恐ろしいところだとしみじみ思う。全体主義体制の犠牲者であるウクライナとポーランド、という位置付けはカナダ発じゃないかとう指摘もあるようだ。

過去の話ではなくて、現在のカナダの外務大臣の一族の話。

「西側ではナチズムが生きている」カナダ編

このフリーランド外相が、ウクライナに過剰に関係しているにもかかわらず、主流メディアは一切報道しないというところが恐ろしいですよ、ほんと。で、ご本人は、ソロスと並んだ写真を自分の公式サイトに掲載してたりする。ここ。お守りなんでしょうかね。

 

■ モラルのなさを嘆いてほしいよ、アメリカ人

何度でも貼っておく。

「米国、そしてその忠実な同盟国であるカナダとウクライナは、国際標準とは異なるリアリティをもつ「トロイカ」を組んでいる。カナダのことは理解しよう。カナダにはウクライナ系住民が多く、彼らが施政方針を左右するから。しかし米国は、反ヒットラー連合の一員として、ニュルンベルグ裁判を開き、その主体となり、数十年来、少なくとも言葉の上では、ヒットラーのイデオロギーに反対する旨を叫んでいたのに、バラク・オバマ時代になって、あまりに立場を急変させ、今やナショナリスト、バンデラの末裔ども、武装親衛隊どもと並んで、バリケードの向こう側に立っている」

http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_11_24/280434532/

覇権にモラルは不要なのか

 


  

 


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4 コメント

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ありがとうございます (taiyal)
2018-02-05 13:47:31
初めて、コメントを差し上げます。
ありがとうございますと申し上げます。
3月ほど前に知って以来、毎日、拝見して大いに己の無知を知るところとなりました。
特に、ここのところの記事でウクライナ問題の本質を納得できました。ナチスは南米やアメリカ合衆国で結構、生き延びて、特にカナダでは外務大臣のポストを占め内外の政治に悪影響を及ぼしていると知りました。日本の戦後の状況と全く同じですね(その元凶も含めて)。

昨日、偶々、見かけたバンクーバー在住の人の投稿を見かけ、更にその意を強くいたしております。
https://thesaker.is/canadas-nazi-problem/

貴ブログはほんとうにかけがえのないものだと思います。
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バンクーバーの人のお話興味深いです (ブログ主)
2018-02-05 14:52:31
taiyalさん、
コメントありがとうございます。

リンク先読みました。ウクライナ系の団体へのある種の潜入ルポが面白いです。一回見たら/出会ったら、この人たちは何かとても普通でないストーリーを信じている、と多くの人が思うだろうと思います。私もカナダでその体験があるんです。

その時はこんなことになるなんて考えてもみませんでしたが、日本の右派もこの系統なんじゃないかと最近類似性が気になっているところです。
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ウクライナ問題とユダヤ (私は黙らない)
2018-02-10 05:46:44
バンデラ主義、ウクライナ、ナチ、一連のブログ、大変興味深く拝読しました。キャメロンパイク氏のブログも、読みました。質問なのですが、こうしたネオナチにカネを出しているのは、どういう勢力なのでしょう?例えば、フリーランドの支援団体とか。パイク氏のブログで、ソロスの名前があがっていましたが。ユダヤ系が、ネオナチに対してカネを出すというのも不思議な気がします。在加ユダヤコミュニティのウクライナ、ロシアに対する態度は?
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深いところから (ブログ主)
2018-02-10 13:49:28
私は黙らないさん、

多分、中東の「傭兵」の金主と同じようなところと、CFR および米の主流メディアを構成しているあたり、すなわちliberal jewsあたりではないかと思います。過去100年ぐらいずっと。
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