馬場あき子の外国詠4(2008年1月実施)
【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P162~
参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、T・S、高村典子、
藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
34 モロッコのスークにモモタローと呼ばれたり吾等小さき品種の女
(まとめ)
「モモタロー」のカタカナ表記がいかにも外国人の発音のようである。モモタローはモロッコの人々がなじんだ数少ない日本のイメージなのだろう。彼等が「モモタロー」と呼ぶ由来は童話からかトマトの品種名からか不明だが、トマトの「モモタロー」に限れば大玉の品種なので下の句の「小さき品種」に繋がるところがちょっと困るが、トマトだから大きいといってもたかがしれている。作者は「モモタロー」と呼ばれて一瞬ひるんだが、それを跳ね返す気分で「小さき品種」なのだと開き直っている。
レポーターは「ちいさいけれど鬼退治をし侮れないものとして『モモタロー』と呼ばれた」と書いているが、モロッコの人々は桃太郎の話を詳細に知っているとは思えない。
外国へ行くと、知っているかぎりの日本語で話しかけられることが多い。それらはたいてい親しみをこめた呼びかけによってものを売ろうとしているのだ。どこの国の観光地でだったか、日本人に向けて「貧乏プライス」という客引きの言葉がかかっているのをテレビで見た。「貧乏」の語の持つニュアンスを詳しくは知らない客引き達にとって、それは軽蔑ではなく単純に「安くしておくよ」くらいの意味で使っていたのだろう。
しかし、レポーターが引いているジャップの歌を考えるとまてよ、とも思う。「吾等小さき品種の女」と受けるからにはやはり「ジャップ」というほどひどい差別意識はなくとも、小さな東洋人をあなどる気分が潜んでいる言い方だったのだろうか。
※ルール違反だが、後日作者に直接伺ったところ、「明るい揶揄」の気分だろうとおっしゃって いた。「蔑称とは感じなかった」そうだ。(2009年2月 追記)
(鹿取)
(レポート)
各国の旅行者が行き交い人種の見本市のようなスークにおいて、日本人女性が「モモタローと呼ばれたり」と詠っている。桃から生まれた者の裔としての小ささからそう呼ばれたと読めるがひそかな他の意図が感じられる。ちいさいけれど鬼退治をし侮れないものとして「モモタロー」と呼ばれたのだよ、鬼の研究者ならではの心の動きと、更に結句「吾等小さき品種の女」に、旅における自分の異形めいたものとして仮定しているような気分があり、「品種」の語にそれが強く感じられ、フィクション性の高い一首である。
同行した清見糺の一首。 (慧子)
背中からジャップという語に狙撃されメディナでわずかな買物をする
【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P162~
参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、T・S、高村典子、
藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
34 モロッコのスークにモモタローと呼ばれたり吾等小さき品種の女
(まとめ)
「モモタロー」のカタカナ表記がいかにも外国人の発音のようである。モモタローはモロッコの人々がなじんだ数少ない日本のイメージなのだろう。彼等が「モモタロー」と呼ぶ由来は童話からかトマトの品種名からか不明だが、トマトの「モモタロー」に限れば大玉の品種なので下の句の「小さき品種」に繋がるところがちょっと困るが、トマトだから大きいといってもたかがしれている。作者は「モモタロー」と呼ばれて一瞬ひるんだが、それを跳ね返す気分で「小さき品種」なのだと開き直っている。
レポーターは「ちいさいけれど鬼退治をし侮れないものとして『モモタロー』と呼ばれた」と書いているが、モロッコの人々は桃太郎の話を詳細に知っているとは思えない。
外国へ行くと、知っているかぎりの日本語で話しかけられることが多い。それらはたいてい親しみをこめた呼びかけによってものを売ろうとしているのだ。どこの国の観光地でだったか、日本人に向けて「貧乏プライス」という客引きの言葉がかかっているのをテレビで見た。「貧乏」の語の持つニュアンスを詳しくは知らない客引き達にとって、それは軽蔑ではなく単純に「安くしておくよ」くらいの意味で使っていたのだろう。
しかし、レポーターが引いているジャップの歌を考えるとまてよ、とも思う。「吾等小さき品種の女」と受けるからにはやはり「ジャップ」というほどひどい差別意識はなくとも、小さな東洋人をあなどる気分が潜んでいる言い方だったのだろうか。
※ルール違反だが、後日作者に直接伺ったところ、「明るい揶揄」の気分だろうとおっしゃって いた。「蔑称とは感じなかった」そうだ。(2009年2月 追記)
(鹿取)
(レポート)
各国の旅行者が行き交い人種の見本市のようなスークにおいて、日本人女性が「モモタローと呼ばれたり」と詠っている。桃から生まれた者の裔としての小ささからそう呼ばれたと読めるがひそかな他の意図が感じられる。ちいさいけれど鬼退治をし侮れないものとして「モモタロー」と呼ばれたのだよ、鬼の研究者ならではの心の動きと、更に結句「吾等小さき品種の女」に、旅における自分の異形めいたものとして仮定しているような気分があり、「品種」の語にそれが強く感じられ、フィクション性の高い一首である。
同行した清見糺の一首。 (慧子)
背中からジャップという語に狙撃されメディナでわずかな買物をする
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