かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 80

2023-07-25 17:31:19 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究⑩(13年11月)まとめ 
    【からーん】『寒気氾濫』(1997年)36頁~
    参加者:崎尾廣子、鈴木良明(紙上参加)曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子
    司会と記録及びまとめ:鹿取 未放

 
80 直立の腰から下を地のなかに永久(とわ)に湿らせ樹と育つなり

      (レポート)
 「樹」として育つことの定めを他者(人間)が詠っていると考えると、「腰」に納得できない。樹そのものに、そしてあるとき樹に成りきる作者には通常根と呼ばれているところは腰なのかもしれない。(慧子)


      (当日意見)
★私なんかは樹の根を足から下くらいにしか思っていないけど、渡辺さんは腰とと
 らえている。やっぱり渡辺さんは樹の中に入っていける人なんだと改めて思いま
 す。(崎尾)
★樹は上っ面だけでなくて腰から下を土の中に入れているからこそ永久に育ってい
 けるのだ、なかなか本当のところをよく見て表現されていると思う。(曽我)
★何で慧子さんがそんなに悩んじゃったのかよくわからないんだけど。腰ってわり
 と単純な比喩だと思うけど。そして、腰には何かセクシャルなものがあってそれ
 が樹木も人間も全ての生命の根源だと思うけど。(鹿取)


     (後日意見)
 『寒気氾濫』にはたくさんの樹や木の根をうたった歌があります。一部を引用してみます。(鹿取)
シベリアを父のいうとき樹は凍てて根は意思以下のすさまじき爪 P.16
                     『寒気氾濫』
この木ときどきたいくつそうにうつむきてぬるぬるの根を地中から出す P.60
死のごとき岩を摑める根の張りを見つづけていて摑まれてくる P.89
行く雲の高さへ欅芽吹かんと一所不動の地力をしぼる P.144
泣きくずれそうなる幹をやわらかく樹皮は包みて立たせておれり P.150
おそろしきひたすらということがあり樹は黒髪を地中に伸ばす P.158
  
コメント
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