だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

自然エネルギー100%の公共施設

2010-02-23 22:07:01 | Weblog
 豊田市・足助で展開されている里山再生事業、里山耕(さとやまこう)では、活動拠点となる公共施設のデザインが進んでいる。里山のただ中に豊田市が建設する予定のこの施設は、各種講座の会場となり、事業の事務局機能をもつとともに、「エコでおしゃれな21世紀の里山暮らし」が目に見えるようになるためのモデルとなるものだ。
 私は一昨年の検討委員会で「21世紀型縄文竪穴式住居」を提案した。その時はイメージだけの話だったが、今日の会合では建築家の市川真奈美さんによる建物の具体的な図面が提案された。里山の景観にとけ込むとともに、そこに集う人々のコミュニケーションのあり方に配慮したすばらしいデザインだ。その図面を元に、私は設備の提案をさせていただいた。

 公共施設の基本設計を行うのに、「暮らしのデザイン講座」という講座形式で、地元の皆さんと志ある様々な分野の専門家が集まって議論しているのだ。公共施設の作り方として画期的なやり方と思う。ウルトラCと言ってもよく、ここにもって来るまでに豊田市足助支所の担当者はどれほど苦労されたかと思う。有り難い話である。また、地元の熱意と実績があってのものでもある。参加者は多少の(かなりの?)無理は承知上、前向きな議論が行われた。

 私の提案の基本的考え方は、「エコでおしゃれな里山暮らし」のモデルとするために、「通常業務は、自然エネルギー100%、二酸化炭素排出量ゼロが実現できるものとする。イベント時、機器不具合など緊急時には不足分を商用電源で賄う。」というものだ。
 電力については、残念ながら十分な水流がないのでマイクロ水力発電はできない。風も吹かない場所なので風力発電も無理。それで太陽光で調達する。この地方は冬は晴天の日が多いので有利なのだ。太陽光パネルは数kWの出力のものをつけるのが普通であるが、私はあえて800Wほどのものを提案した。充放電設備を備えて独立電源とするためである。大きな出力のパネルをつけても、それにみあうバッテリーが巨大で高価なものになってしまって、独立電源は実現不可能なのだ。独立電源を実用的に行うには、ようは需要を徹底的に見直し省エネすることによって、小さな出力でやっていけるようにしなければならない。照明にはLEDを採用し、省電力ノートPCなどを使って、800Wのパネルで日常業務には十分という目論見である。
 冷暖房はパッシブな太陽熱利用に加えて地中熱利用を行う。これで冷房設備は必要ないという計算である。厨房の燃料は小型のバイオガス装置から。これは里山でのチッソ・リンの循環を考える時に、キーとなる技術としてはずせないと考えた。

 検討課題なのが暖房と給湯である。建物の中心に薪ストーブを置くのはよいとして、それ以外の部屋の暖房と給湯をどうするか。一つのオプションは、ペレットストーブと太陽熱温水器。これは実績もあり明らかに実現可能である。
 もう一つのオプションは暖房と給湯を薪ボイラーで行うというものである。これはチャレンジングなやり方だ。建設予定地周辺には、間伐を待っている人工林が広がっている。豊田市は「森づくり基本計画」を制定して間伐を進めているが、その9割は「伐り置き間伐」、つまり林地残材を大量に作り出している。価格に対してコストがかかりすぎるために木材としては搬出できないこれらの材を、燃料として搬出し活用できないだろうか。そのための社会とビジネスの仕組みをつくることが可能だろうか。むしろそれを可能にするための呼び水として、拠点施設に薪ボイラーを導入できないだろうか-きわめて難易度は高いが、持続可能な地域をめざすために真にチャレンジしがいのある課題である。こういうことに参画する機会をあたえていただいたことは環境学の研究者として冥利に尽きる。

 いずれにせよ、公共施設が自然エネルギー100%、二酸化炭素排出ゼロで運営されるとしたら画期的である。里山耕がめざすのは「どきどきしてわくわくする里山の暮らし」。本当にそういう建物が一年後に目の前に現れるとしたら、今からどきどきわくわくである。

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