だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

21世紀型縄文竪穴式住居

2008-12-11 23:09:27 | Weblog
 豊田市のプロジェクトで里山耕(さとやまこう)というのがあり、私はその検討委員の一人としていろいろな提案をしている。このプロジェクトは、旧足助町新盛の菅田和(すげたわ)という集落をフィールドに、21世紀の里山暮らしのモデルを作り、その魅力によって若い世代にこの集落に定住をしてもらおうというプロジェクトである。平成の市町村合併によって広大な面積の郡部を抱えることになった豊田市が、はじめて本格的に取り組む過疎地活性化事業だ。単なる地域対策事業ではなく、持続可能な豊田市を作るために、市域の先頭を走り、その成果を発信するための事業である。

 検討委員会で合意されたのは、21世紀の里山暮らしというのは、里山(山里)の生態系の一員として人間も暮らすというだけでなく、「わくわくして、どきどきして、おしゃれな」暮らしということだ。しかも、それはどこかにあって、それを導入すればすむというものではない。現地の自然と人とそれらの歴史に沿って、新たにつくりださなければならないものだ。そのための学校が必要である。それを私たちは千年持続学校という名で提案した。さらにそれを実施するための拠点施設が必要だ。今日の検討委員会はこの施設をどういうものにするか提案を行うものだった。

 私は下図のようなものを提案した。拠点施設そのものが、「わくわくして、どきどきして、おしゃれな」暮らしの場とならなければならない。オフグリッド、すなわち、電力やガスなど既存のインフラを利用せず、現地にある自然エネルギーだけでやっていける自立的かつ持続可能な建物を、ということで考えてみた。




 コンセプトは21世紀型縄文竪穴式住居。里山とは縄文期からずっと続いてきた、人間が燃料や食料を採取することによって、豊かな多様性を持つことになった生態系のことである。数千年前の縄文時代からつい半世紀ほど前の1960年代までそのような姿を保ってきた。しかしその後、石油社会になるとともに、価値を失い放置されることになる。豊かな里山を取り戻すには縄文の暮らしに関心を持ち、そこから学ぶ姿勢が必要である。

 竪穴式住居とは、一段地面を掘り下げて、その上に茅などで屋根を葺いたものである。なぜ縄文人はこのような家に住んだのか?・・・そのヒントは熊がなぜ地中の穴の中で冬眠するのかということにある。
 地表では気温の変化によって寒暑が厳しい。真冬は零下、真夏は30℃を超える。しかし、地下5mももぐれば、ほとんど温度が変化しない。その温度はその場所の年平均気温に等しくなる。そうすると、夏は地表よりも地下の方が涼しく、冬は暖かいということになる。きびしい寒暑をしのぐには、できるだけ地下にいたほうがよいのだ。

 現代には同じ原理で地中の熱を利用して冷暖房をする地熱ヒートポンプという技術がある。地下に管を通してそこに不凍液等を入れて循環させる。冬であれば地下でもらった熱を室内で放出することによって暖房をする。
 しかし、そんなことをしなくても、熱は温度の高い方から低い方に自然に流れる。地下の深いところから熱は地盤を伝って流れ上ってくる。それを床を通して室内に受け止めるのがパッシブ地中熱利用というもので、私の研究室ではその技術の開発研究をすすめている。夏ならば、室内の熱が地中に逃げてくれるのでその分室内は涼しくなる、という寸法だ。

 そこで、21世紀型竪穴式住居である。菅田和は斜面が多いので、それを活かして、それを一部掘って、建物が少し埋まるようなつくりにする。床面と埋まっている壁面を通して室内と地中との熱のやりとりが生じ、夏涼しく冬暖かい暮らしを提供することができる。冬はこれでは足らないので、パッシブ太陽熱利用と薪ストーブやペレットストーブで暖をとる。夏は、外気を地中を通して取り入れることによって冷房効果をもたせようというものだ。

 上物は地元の間伐材をふんだんに使って。10cmの角材を並べて壁をつくる「ほりおハウス」や、木のブロックを積み重ねて壁をつくる「つみきハウス」ならば、木がすばらしい断熱材となって、今日普通に建っている高気密高断熱住宅に匹敵する断熱性能が発揮できる。

 電力は太陽光とマイクロ水力で。給湯は太陽熱、台所はバイオガス。これで自然エネルギー100%で快適な暮らしができるだろう。

 持続可能な暮らしとは「わくわくして、どきどきして、おしゃれな」暮らし。百聞は一見にしかず。それが目に見えて体験できる拠点施設ができれば、何かとわかりずらい持続可能性というものの考え方を多くの人にすんなりと理解してもらえるだろう。
 ただ、われわれヨソモノにできることはいろんなアイデアを提供することだけだ。それを採用するかどうか、どう実現するかは豊田市役所と地元のみなさんの合意と創意工夫にかかっている。楽しみにその成果を待ちたい
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4 コメント

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モデルハウス (Rolling由里子)
2008-12-12 01:06:47
一日もはやくこの「わくわくして、どきどきして、おしゃれな」21世紀型竪穴式住居を体験したいものです。つくるときからできる限り、参加型で、やりたいです。たとえゴミ広いでも参加したいです。
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行きます! (いづつこうへい)
2008-12-12 11:50:01
これができたら必ず行きます。
この目で見たいものが山ほど詰まってる。

さらに建築も凝りましょうよ。
たとえば藤森照信さんにお願いしたら
話題も高まるはず!

オフグリッド×藤森建築
かっこよすぎです。
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21世紀の竪穴式住居 (増渕秀雄)
2010-02-22 11:10:23
21世紀の竪穴式住居と言うものを検索したら、貴殿のものが出てきました。私も似たようなものを考えたので、なんかのご縁があると思い連絡します。長くなるのでここには書けませんが、参考までにご覧ください。
重力鉄道 というホームページの討論会場に乗せてあります。 竪穴式住居の普及にがんばりましょう。私も是非作って住みたい。今は従来の住宅には全く興味がありません。
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THANKS! (daizusensei)
2010-02-23 22:24:56
増渕さま>コメントありがとうございます。
実現に向けて動いています(地中に埋め込むのは無理のようですが)。最新記事をご覧下さい。各地にこのようなものができてくるとよいですね。
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