南京大虐殺(1937年12月)の生存者、陳徳寿さん(83)=中国・南京市=が7日、市民団体の招きで来日し、名古屋市中区で証言した。
陳さんは、父とおばが日本兵に銃剣で刺し殺された体験を話し、「過去の悲惨な歴史を忘れないでください」と訴えた。約110人が聴き入った。
陳さんは当時5歳。
仕立て屋の父ら家族8人で南京城内に暮らしていた。
12月13日に日本軍が入城し、炎が上がったため父は消火に走った。
日本兵が家に来て26歳のおばを連れ去ろうとした。
おばは抵抗し、殺された。陳さんは地面に転がる死体につまずきながら逃げた。
父はその後、遺体で発見された。
別の男性の話では、父は日本兵に捕らえられ、首やこめかみを刺されたという。
家族は働き手を失った。
母は物乞いを強いられ、結果的に一家は離散した。
辛苦の末、今は再び家族8人で暮らしているという陳さんは「平和があるから幸せに暮らせるのです」と話した。
証言に続き、参加者が意見交換した。
歴史を学ぶ女子大生は「教科書は虐殺についてごく短く記述しているが、それ以上のものがあったということを理解できた」と話した。
市民団体の連絡組織「南京大虐殺60カ年全国連絡会」が陳さんを招き、9日に東京でも集会を開く。
連絡会は約20年間、毎年12月に生存者を招き各地で集会を開いてきたが、協力してきた南京大虐殺紀念館が高齢や健康不安を理由に終了を要請。
生存者の証言は今回で最後になる。【花岡洋二】