梅の香庵~うめのかあん~

梅の香堂別館喫茶スペース*梅の香庵*
とりとめないことをとりとめなく・・・

深く優しい

2014-07-31 19:10:28 | 日記
先日、珍しく平日に休みだったので、
すいてるところを狙って美術館へ行って来ました。

見てきたのはこちら。

上村松篁展。


訪れたのはいつもの水墨美術館。


この日はちょうど、庭の芝生の手入れをしていて、
刈りたての芝生から草いきれがむんむん匂っていた。
あぁ、なんかこの、うっとしいほどの夏の匂いって、懐かしい感じ・・・。


さて、
上村松篁さんがどんな画家さんか。
多分、ご本人は不本意ではないかと思うのですが、おおむねこの一言で紹介されるんだと思います。

上村松園さんの息子さんですよ、と。

言わずと知れた上村松園さん。
美人画の超大御所。女性初の文化勲章受賞。
とにかくすごい人ですが、
その息子さん。

その息子さんも画家で、これまたなんと親子二代で文化勲章受賞されたすごい人だということは、
私も知っておりましたが、
その絵はほんのちょっとしか見たこと無かった。

松園さんリスペクトの私としては息子さんの絵も気になるじゃない、ということで行って来ました。


結論から言いますと、
お母さんの七光りなんぞ持ち出してはいかんほどに素晴らしかったです。

松篁さんの絵は、深く、優しい。


一番最初に展示されていた屏風絵が、卒業制作ってんだからいきなり衝撃ですよ。
二十歳やそこらでこの風格。
末恐ろしい。

絵は、作者の年齢に沿って展示されていました。
初期の作品は、透明でキレイ。描写が忠実。
金魚の絵とかほんとに池の中覗いてるみたい。

それが、
ある時からタッチが変わった。
何度も塗り重ねたような厚みのある色に、省略されたカタチ。
ちょっとかわいいっていったら語弊があるかもしれないけど、
ほんわかした優しい絵になって行った。

特に気になるのが、背景。
背景はほとんどが無地なんだけど、
絵の具ベタ塗りではなく、グラデーションをつけて染められている。
この背景が、なんだかすごく深いのですよ。

手を差し入れたら、ずぶずぶーって向こう側に入っていっちゃいそうな。
不透明で、その向こう側は見えないんだけど、
間違いなく向こう側にも別の世界があるような。
そんな深い世界。


ところで、松篁さんはたくさん鳥を描いた人でした。
そんでたくさん鳥を飼ってたんだそうですよ。
外国のとかも輸入して。
あと鶴とかでかい鳥もいたとか。
すげえ。

いつも感心するんだけど、
いくら本物のモデルがいたって、
動物は思い通りのポーズをしない。じっとしていない。
それは私も常々感じている。ね、椿さん。
にもかかわらず、
今みたいに手軽に写真撮ったり資料探したり出来ない時代に、
よくぞここまで見事な写実が出来るものだと感心を通り越して不思議です。
画家にも動体視力が必要なのか。


そんな鳥の絵が居並ぶ中で、
私が一番好きになったのは白木蓮の絵でした。

この絵、発光してんの?
ってくらい、開いた木蓮の花びらが白く浮かんで、
天女でも舞うんじゃなかっていう世界がそこにあった。
ちょっと拝みたくなるほどの絵でした。


外に出ると鱗雲。
暑いけどすがすがしい。


それにしても、
氏のお写真を拝見しましたが、お母さんにそっくり。

多分、
二世画家ってことや、その出生にまつわることなんかで、
色々外野がうるさい人生だったんではないかと思うんです。

それでも、
そいうのを黙らせるほどの画業を成した。
文句いわせねえぞって絵をどんどん描いた。

その強さは、やっぱりお母さん譲りだったんだな、と思わずにいられない。