梅の香庵~うめのかあん~

梅の香堂別館喫茶スペース*梅の香庵*
とりとめないことをとりとめなく・・・

最悪の将軍

2020-09-22 15:01:24 | 読書
読書の秋到来ということで、
久しぶりに書籍のご紹介など。

最近読んだ中で一番感動したのはこちら。
朝井まかて著「最悪の将軍」

私が読んだのは文庫本で、リンク貼った単行本とは表紙デザインが違うのだが、
文庫本の表紙絵は一匹の犬が描かれている。
評判のよろしくない将軍、犬、とくれば、犬公方・五代将軍綱吉であろう。

まあしかし、テレビでやってる歴史番組をちょいちょい見る程度の歴史好きならば、悪評高い綱吉が、実はそんなにおかしな人ではなかった、というのはもはやよく知られた話である。
本能寺の変怨恨説が、それは無いだろと同じ程度には。

てなわけで、「最悪の将軍」というタイトルが、そのまま作者の描く綱吉像ではないということは承知の上で読み始めたのですが、
綱吉さん、思ってた以上にいい人じゃねーか!

生類憐みの令とは本来、みんなの命を大事にしよう!という発想から始まった法令だということは、以前NHKの歴史番組でも見た。
綱吉の統治した時代はまだ戦国の気質が色濃く残っていて、
武士は死を恐れないことが美徳とされ、庶民の命は軽く扱われてそこいらで試し斬りにされたり、
また庶民の内部であっても、貧しさ故に子供や年寄りや病人を捨てることが日常事。
しかしもはや泰平の世。
これではいかん、と綱吉は考えたわけですよ。
命大事!人を捨てたらだめ!と。
実際、犬をうんぬん以前に、「捨て子、捨て病人の禁止」というお触れが出ているらしい。
でも現代の私たちには当たり前のことが、当時の人々はまだそういう倫理観が備わっていない。
ならば、と、法令によって正しい(と綱吉が思う)道徳観念を植え付けようとしたわけですよ。

しかし残念なことに、綱吉くんの高い思想に、当時の人々の民度が追い付かず、理解してもらえなかった。部下にすらも。
伝わらない。なぜ伝わらないのか。悩む綱吉くん。
ま、それで、法令を乱発してしまうのですが・・・。
更に不運なことに、地震や飢饉や松の廊下からの赤穂浪士、だめ押しの富士山噴火で、庶民の不安や不満が統治者である綱吉くんに向けられた。

なんていうか、
昨今も政治家の皆さんが未曽有の事態に苦慮されておりますが、
あくまで私の想像ですけど、今この本を知事や総理が読んだら「そうそうそう!わかるー!!」と、政治家あるあるを感じるのではなかろうか。
そんな、統治者の苦悩に一介の庶民の私も同情を禁じ得ない物語なのです。

けなされてもけなされても、綱吉くんは民のために必死に働く。自らの地位とか顧みず。
そして、決して民を見放さない。

「扶桑の民はいかなる災厄に遭うても必ず立ち上がる
 強き愛しき民ぞ」
※扶桑=日本のこと

この台詞、本当に感動しました。
公方様にこんなふうに想ってもらえるなんて、おいら、ありがたくって涙が出るぜ!
と、
私が江戸っ子ならばそう言ってあげたかったのですが、
残念なことに当時の江戸っ子にはあまりそう思ってはもらえないまま綱吉公はこの世を去り、さらに長い間、暗君として語り継がれることになったわけです。
かわいそう!!

でもね、
今私たちにとって当たり前の、
人を殺してはいけない、とか、
子供を捨ててはいけない、とか、
病人や老人を見捨ててはいけない、とか、
そういう人として本来備わっている、と思われている道徳観念て、実は綱吉が一生懸命人々に説き続けたことだったんですよ。

小説のエンディング、
正直言うとちょっと予想していた展開でした、が、それでも涙が止まりませんでした。
よかった。よかったよー

更にこの小説の素敵なポイントとしては、
奥様がこれまたいい人!なんです。
ラブラブなお二人。旦那が将軍なんかにならなければ幸せに暮らせてたのに。
それでも御台所の信子さんは、最大の理解者として綱吉を支え続けるのです。愛だよ愛!


それにしても、
色々歴史番組を見ていると、
暗君とか暴君とか言われてた人が、実はけっこういい人だった、というパターンは非常に多い。
世の中そんなに悪い人はいないのかも。


森の秘密

2020-09-18 23:12:50 | イラスト
梅の香堂のトップ絵更新しました。

実は一回載せてますが、季節が巡ってきたので再度。


「森の秘密」

ようやく過ごしやすい気温になりましたな。
朝夕はすっかり涼しくなって、毎晩快眠でございます。
が、夜は油断して無防備なカッコで眠り、朝方、・・・・寒い・・・と目を覚ます。この時期そんなことありませんか?

それもそのはず、何も掛けずに眠っていたことに気づき、
足元で半分に折り曲げられたタオルケットを手繰り寄せようとする、が・・・・動かない。
なぜならば、タオルケットの上には猫様が眠っているからデス!
猫飼いあるある!ですよね!?

椿さん、その、下に敷いてるタオルケットをかーちゃんに貸してほしいのだけど・・・・寒いんですけど、だめですか・・・?
と言うわけで、やむなく人間の方が自らタオルケットに寄って行き、体を丸めてちょびっとだけ潜らせてもらう、という秋の朝。
こちらとしてはかなり譲歩しているつもりなのに、迷惑そうな目で見られ、心身ともに寒い。

今夜こそ、寝るときからちゃんとタオルケットを掛けて眠ろう!