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クラヴィコード徒然草ーLife with Clavichord

チェンバロ、クラヴィコード製作家 高橋靖志のブログ
製作にまつわるあれこれや猫との暮らし、趣味のオーディオについて

Magnano その5

2009-10-12 22:46:03 | Magnano
マニャーノ3日目(9月18日)
この日の朝一番のレクチャーは、Ilton Wjuniski の Wilhelm Rust という作曲家についての、演奏をまじえながらの紹介。前日に、レクチャーの中で私の楽器を使いたいという話が来てビックリ。5オクターヴでフレット式だからというのが理由の様子。そんなに広いとは言えない会場で使うのに手頃な大きさだったから?遠くから大きな楽器を担いで参加してるから使ってやろうということも?まあ、そんなに悪い楽器ではなかったって解釈も成り立つゾ。
帰ってから Wikipedia で調べてみたら Rust は1822年生まれのドイツの作曲家。1880年から1892年に亡くなるまで、ライプツィヒのトーマス教会でカントルをつとめた人だった。トホホなことに、Ilton の話はほとんど聞き取れずだったので…
ランチは、前日に Jean Tournay からいっしょにリゾットを食べようと誘われていて、例の食堂へ。この日は天気がよかったので小さなちいさな広場に面した外のテーブルに陣取った。おっちゃんが「どうだ!」と言わんばかりに出してきたのは冷たいリゾット。パラパラでも芯はなく程よい食感の米と、生ハム、薄切りのシイタケみないなキノコとぬめりのないナメコみたいなキノコ、それにチーズも2種類、が香りのいいオリーブオイルで和えてある。バジリコとローズマリーがよく効いている。それに冷たい白ワイン。このリゾットは今回のイタリア旅行で食べたなかで最高の一品でした。(家に帰ってから米の調理方法を考えて、試作してみた。米の種類が違うので同じ食感は望めないが、なんとなく雰囲気は出て、家族にも好評。そのうちブログでレシピを発表します)

午後は、オプションのバス遠足。目的地は Castello di Masino というお城。建てられたのは11世紀だが17世紀の内装や家具調度が当時のまま完璧に保存されているのが貴重なのだそうだ。


サロンとして使われたホール。当時の音楽が演奏された、まさに現場。

行けどもいけども部屋があって、それぞれに違う趣向が凝らされた内装がほどこされている。ちょっと疲れてしまった。
途中で、スウェーデンの Svensson と少し話をした。同じテーマのプレゼンをした人なので、声をかけたいと思っていたのだが、一見気難しそうな感じの人なので話しかけるのにちょっと勇気が…ストックホルムの楽器博物館のサイトでは、20台のクラヴィコードの情報を電子データとして比較、閲覧できるソフトがダウンロードできるのだが、そのことを訪ねると彼が作ったものだそうだ。将来的には収蔵する150台のクラヴィコードのデータをすべてそのソフトで見ることができるようにしたいと言っていた。スウェーデンは19世紀の半ばまでクラヴィコードが作られていたところ。やはりただ者ではない。
夕食の時に、シンポジウムの事務局長のような役割をしているイギリスの製作家 Peter Bavington が、Derek Adlam が明日のレクチャーで君の楽器を使いたいと言っている、と言ってきて、またまたビックリ Peter には楽器の移動のための車の手配とかで度々お世話になったのだが、イギリス紳士 Peter の英語がよく聞き取れない。たぶん、とてもていねいな物言いをしていたのだと思う。何度も聞き返して、筒井さんの助け舟もあって、ようやく彼の言っていることがなんとなくわかってきた。
この日の夕食後は、展示楽器のデモンストレーション。1台につき10分以内、それが12台だからちょっとしたコンサート並みのヴォリューム。実は午前中に、前日のレクチャーで使ってくれた Ilton が、話ばかりであまり演奏ができなかったから、君さえよければデモンストレーションで演奏するけどどうだい、と言ってきて一も二もなくOK

デモンストレーションが始まる前に、ワインに群がる皆さん。私は、必死に調律のチェック。


挨拶する私 日本からこの楽器を担いで来ました、と言って一応笑いを取りました。

Magnano その4

2009-10-08 01:33:12 | Magnano
マニャーノ2日目(9月17日)
今日は午後から私のプレゼンの日で朝からちょっと緊張気味。ベルギー在住のクラヴィコード製作家 Jean Tournay が日本人のパートナーと一緒に来ていて、ランチに誘われてもちろんOK、村に一軒の小さな食堂へ。ここは、朝はカップッチーノとブリオシュで朝食、昼はランチ、夜は一杯飲むためと、シンポジウム期間は大活躍。おっちゃんとおばちゃんが2人でやっているのだが、もちろん英語は通じない。この日、ランチに行ったときは、おっちゃんが Tre giapponese (日本人が3人)と大いに盛り上がって、「オレのおごりだ」とかなんとか言ったのかどうか、イタリア語でまくしたてながらスパークリングワインを2本もあけてくれて、イタリアを満喫。でも、これから私発表なんですけど…アルコール入った方が舌が回る?
午後2人目にいよいよ私の発表。"Mr. Takahashi…"とか呼ばれて出て行って、パソコンをプロジェクターにつないで、さあ、はじまりはじまり。タイトルは "A Short Study of Clavichord Scale Design---Thinking form mechanical stress of string" 「英語でプレゼン」みたいなマニュアル本では原稿読みながらのプレゼンは御法度らしいが、今回のシンポジウムでは、英語が母語ではない人はみな原稿を読みながら発表していたので、ちょっと安心。なんとか発表終わって、鬼門が question time 。そこで、handoutを配り忘れていたことに気づいて、笑いを取る。
私の前が、ストックホルムの楽器博物館の学芸員 Svensson 氏による、やはりクラヴィコードのスケールデザインについての発表だった。私のプレゼンもまったく的外れではなかったということかな… アメリカから来た Gregory Crowell が「面白かったよ」といってくれる。優しい人だ。
ディナーは、Tournay が車に乗せて行ってくれて、同じテーブルでいろいろ話ができた。けっこういい歳の人だがとてもチャーミングで、フランス語の柔らかい声色がいい感じに響く。もちろん私はフランス語はわかりません。
この日の夜のコンサートは、とても盛りだくさんだった。スイスから来たたぶんスペイン人の Broggini のアイデンティティを全面に押し出した演奏と、メキシコから来た Tsalka のとてもジェントルで知的な演奏。Susan Alexander-Max は、小柄なおばあちゃんといっていい歳の女性だが、エネルギッシュにクラヴィコードとタンジェントピアノを弾きまくる。最後が、ガンバとクラヴィコードという組み合わせ。クラヴィコードは Paul Simmonds 。ガンバとクラヴィコードのアンサンブルが当たり前に演奏されることに「さすが本場」と脱帽。終了が深夜12時というなんともすさまじいコンサートだった。

Magnano その3

2009-10-05 23:54:48 | Magnano
シンポジウム1日目(9月16日)
朝のマニャーノ。サマータイムのせいか7時でもまだ暗い。


雨。日本を発つ前に天気予報で雨が降るのは分かっていたが、やはり降られるとつらい。宿舎から楽器の展示会場になっている教会へ、それからシンポジウム会場へと移動する間にびしょ濡れ。
9時からシンポジウムが始まり、2人ほど発表した後に、展示会場の教会移動してそこで30分ほど演奏。それから昼休みがあって、午後は3時からシンポジウムと演奏。7時から少し下ったところのレストランへ移動、夕食。9時からコンサート。終わるのが12時頃。これが1日のスケジュール。けっこうハード。
で、1日目の夜のコンサートにさっそく筒井さんの演奏が組まれていた。コンサート会場は、やはり少し下ったところの石造りのとても美しい教会。

そこまで展示会場から楽器を移動させるのも、車に乗せてもらわなければならないので一苦労。5分くらいで調律をなんとか手直しして(ゴマカしてというのが正しいかな)、スタート。この日は、ほかにもう一台ベルギーの製作家Jean Tournayの楽器が使われた。分厚い低音の響きが印象的な楽器。
筒井さんは3人演奏したうちの二人目。ハイドンのソナタを2曲。演奏はノリノリでした。



Magnano その2

2009-10-05 23:13:00 | Magnano
まあ、結局ケースに入れた楽器が30kg。これをキャリーにくくりつけ、外した脚4本と最低限の工具、発表のためにデータだけでは不安なのでノートパソコンも持って、もろもろあわせて20kg近いリュックをしょって出発。
ミラノのマルペンサ空港で筒井さんと待ち合わせ。なんとか合流できてバスでミラノ中央駅へ。300メートルほど楽器を引きずってホテルについたときには汗だく。

上の写真は翌9月15日、ミラノから列車でマニャーノへ向けて出発する前の様子。楽器のハンドリングも少しなれて、余裕の表情?

ミラノから1時間ちょっとでサンティアという駅についた。外に出ると、シンポジウム参加者らしい人が数人。我々が大きな長方形の箱を持って現れたので「それ、もしかしてクラヴィコード?」「イエース、日本から来ました!」
ここからマニャーノまで、車で30分ほど。途中からつづら折りの山道を登る。

宿舎のCasa bianca(白い家)。古い農家を改築したものらしい。


Magnano その1

2009-10-03 00:45:39 | Magnano
先月16日から19日にイタリアのマニャーノ(Magnano)という町で開かれた、国際クラヴィコード・シンポジウムに参加してきました。しかも、5オクターブのクラヴィコードを持って。
ことの発端は-
鍵盤楽器奏者の筒井一貴さんに前々から誘われていて、今年のシンポジウムのお題は「ハイドンとクラヴィコード」。昨年5オクターブのクラヴィコードを作って、今年の3月に企画したコンサートではハイドンをメインに弾いてもらった身としては、断る理由がない。ちょっと楽器が大きいけどなんとかなるか。ついでにシンポジウムで発表もするか。と勢いで参加登録してしまいました。
参加を決めてから、楽器の運搬をどうしたらいいか、詳しそうな人に聞いてみたり、運送会社に見積もりをしてもらったり。で、結局ハードケースを作ってその中に楽器を入れて受託手荷物として預けるしかない、が結論。理由は、これが一番安かったから。楽器本体の重量が22kg、これだけならなんとかなりそうな気が…
それがまったく甘い考えだったことは、出発前日に思い知らされることに。(つづく)