一、熊谷陣屋
吉右衛門が、魁春、歌六、雀右衛門、菊之助などと
重厚なお芝居を見せてくれました
悲劇的なお話で苦手なのですが、浄瑠璃にのせているのが、共感を高めるような。
吉右衛門のを観るのは初めてではないですが、
すごく力が入っているように感じました。
最後の台詞「十六年は一昔、夢だ」に感極まって
やり場のない怒りと哀しみが見えました。
ニ、当年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)
ご存知、曽我兄弟が父の仇祐経を討ちに来るところへ
再会を約束して祐経が通行手形を与えるはなし。
今回は舞踊劇。
曽我の五郎に、松緑の息子左近13歳。
おとなに混じって元気に凛々しく演じました。
初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
三、名月八幡祭
河竹黙阿弥原作を新歌舞伎として新解釈で作られたもの。
初世辰之助が演じたときに出演した、玉三郎と孝夫(仁左衛門)が当時と同じ
芸者美代吉と、情人三次役で演じていて、さすがにお二人とも色っぽく適役。
田舎からやってきた朴訥で商売熱心な新助に松緑
予想通りのはまり役です。
松緑の代表作になるかも。
ここでは、百両のお金がポイントなんです。
芸者美代吉にとっては、日常情人に,三両、五両と与えているためにできた借金。
大きい金額ではあっても、一晩やり過ごせば良いもの。
新助にとっては簡単には作れない金額。
それでも用意出来れば、美代吉と世帯が持てる・・となれば、
足元見られて田舎の家や田畑をかたにして必死で作ったお金。
ところが美代吉はパトロンから手切れ金として百両をもらい
新助には、もういらないよとあっさり・・。
絶望から逆上した新助は、祭の夜に大混雑のさなかに美代吉を殺してしまいます。
追記
松緑は目が大きい。これはやっぱりいいと思う。
表情が豊かで感情が良く表れる。
・舟で嫋やかに去っていく美代吉を、こころ持って行かれて呆然と見つめる。
・花道を高揚しながら歓喜で駆け出していくところ。
・騙されたとうめきながら花道をよろめきながら去っていく
・町衆に捕まって、担がれてのひっこみでの叫び
心こもった演技本当に良かったです。
いつも以上に、花道の見える席がお得です。
1階はさすがにほぼ満席に見えましたが、
売店あたりに客が少ない。トイレ行列も少なかったし。
昼の部も暗い話が多いしな。売れ行きどうなのかな。
若干将来に不安を感じさせます・・
来年は団十郎襲名で大賑わいになるでしょうけど、そのあとが・・
個人的には、地味だけど充実してて大満足でした。