湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

風景の残したもの

2018-09-11 09:19:28 | ポエム



そこの建物のドアを開いて
見上げた空は
いつも夕暮れの影絵たち


その木々達の呼吸が
風の言葉になって
ドアから出て行く人達を
癒し続けていたんだ



春には
葉っぱ達の擦れた話し声
『こんなに元気だよ』


夏には両腕を広げて
『日差しから守ってあげるよ』って


秋には少し、しな垂れながら
『たのしかった季節だね、少しだけサヨナラ』


冬には裸の幹をそのままに
『ありのままを見て、それでも空に溶けているよ』


そう言って
何年も何年もそこに居てくれた


わたしは、そのドアを開いて
空を見上げるのが好きだった


いつまでも
それが続くと思ってた


朝ドラの急転直下のシナリオじゃあるまいに


自分では
防ぎようもなく
抗いようもなく


いとも簡単にバッサリ斬られた


可哀想に
痛かったでしょうに


その痛みを
『私に下さい』と言ったら
涙がポロリ、ポロリ


人のために
植えられて
人のために
切られて


いったい
どこにいっちゃったんだろう


だからもう


もう
あの時の写真は撮れないんだよ


『綺麗だったよ、君たち。ありがとう』


つぶやいて



風景だって
人との出会いだって
なにもかもすべて


2度とない


流れ行く時間の中で
その瞬間が全てと思い
大切に大切にしていかなきゃね

















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