湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

兄の誕生日

2018-09-01 15:15:10 | 日記
今日は
もう忘れてしまったほど昔の日に
亡くなった私の兄の誕生日である

物心ついた頃には
不治の病であった兄の世話は
見よう見まねで
手伝っていたように思う

夜中に何度か起こされて
寝返りを介助すること
食べ物のこと
排泄のこと
ごくごく普通の生活の一部だと思っていたのが、世間の目に晒されて
これは違うぞと
まわりが違う目で見始めることから
自分の存在感を消していくように
恥ずかしいことでも
全くないことが
隠したりしないで良いことも
分かっていたが
やはり年頃と言うのか
家の中では平気でも
家以外では
それを隠していることが
一番いいような気がしていた

おまけに両親の不仲に通じる理由さえ
あけすけに見えてきた頃ならばなおさらのように。

青春を両親の憂い事と
兄の世話で費やして
進学したかったことや
自分の夢までも無くしてきたんだと
随分と大人になっても長く
恨めしくはないけれど
思うように生きられなかったことを
ついこの前までの私自身の理由にしていた。


誰かに言われた
逃げる場所を作っていた?


そうだ
私はいつも逃げ場所を作っていた


進学しょうと思えば
お金はともかく
もう少し勉学に励んだら良かったし
寝る時間がないと言っていても
体力でなんとかやっていけてたかもしれない


だから
私はきっと
兄の世話をしたかったのだと思う
進学してまで離れようとは思わなかったのだと思う


両親の不仲は
兄妹の絆を深める


兄が私に世話をさせる
私は両親の不仲を嘆いても
兄が優しく見守っていてくれる図式だった

だから
本当は不幸ではなかったんだ


いま、両親が逝って
その荷物を整理している


逆縁の不幸をしてしまった兄への
両親の思いは深く
両親が逝った後から
見つかる品々は
私がその思い諸共
片付けていかなければならない


もしも、自分の亡きあと
自分の子供や連れ合いに
この作業はさせられないと思うからこそ、涙を拭きながら片付けている


私は兄がいたからアルバイトができなかった。
兄は、自分が病気で親戚達から
私よりはるかに多いお金(お小遣い)をもらう
いくばくもない命と哀れんで
何か好きなものを買いなさいと置いて行く。

兄はそれを貯めてから
好きなものを買う主義だったが
私がなけなしのお小遣いがなくなって
小さな欲しいものがあるとしても
口に出さないでいたりしたら
早くから気づいて
何故、それが欲しいのか
必要な訳を言ってごらんと聞き
それが真っ当なものであれば
お金を私に渡してくれた

単なる妹かわいさだけでなく
私が真っ当に使えているのか
はては、変なやつらに使いパシリを
させられてはいないか、などと
兄なりの優しさにおいて
あえて厳しい質問をしてきたりした


そんな優しさのある人だった。


死に行く姿を見てる、目の前で。
その人を前にして
道だけは外して歩いていくわけには行かないでしょう。
変なグループには
足も踏み入れず、私が優等生でい続けることが
兄への気持ちの証しのようだった

また、兄もそれを喜んでくれた。


本当に兄は優しい人だった
遺していった『詩』が
今回の片付けから数編見つかった

死を前にして
苦悩と恐怖と強さと激しさが
織り混ざった詩たち


今更ながら
あんなにも激しさを
秘めていたことが驚きで
かえってそれが悲しくて


強くて優しい人だったんだと噛み締めた


今日は
兄の好きだったものを供えよう


生きていれば
のんびりと
年金生活をしている年の離れた兄だったはず


2週間後には
兄がいる高野山に両親の遺骨を収める


また、その2週間後には
兄の命日がやってくる


いままで
預かっていた両親の分骨した遺骨は
今度は兄のそばに添えにいく
私から兄へ渡しにいく。


そしてまた
私は片付けてしまわなければいけないことに明け暮れよう


少しはそれで
3人の供養ができると思う


キチンと出来たと確信できた時
今の中途半端な気持ちでなく
本当の意味においての
私の再生が始まると思うから







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いつもの空にもどるまで

2018-09-01 09:14:24 | ポエム
雲が
壊れた電球のよう


耳をつん裂く音で
時折そのチカラを見せつける


窓ガラスに
そっと頬をすり寄せてみたの


斜めに走るヒカリ


私はそんなことでは
びくともしないはずなのに


窓ガラスの雨は
流れに流れて
すり寄せた頬から
悲しげに
涙がこぼれ落ちて
霞んでいくみたい



泣いてなんてない


だけど
もしかして
私は泣いてる?


頬には
ガラス分子から
冷たさが伝わるの


そうしてじっと
窓ガラスを抱きしめてる


今はこうしたまま


ピッタリと頬をすり寄せたまま


代わりに泣いてくれているのなら


その冷たさが
あたたかさに変わるまで
しばらく
このまま


壊れた電球みたいな空が
いつもの空に戻るまで‥







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