「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

ウルトラ・ダラー

2006-07-07 | 
きょうアップするのは以前書いた文章ですが、この文に対して毎日たくさんの不愉快なTBが送りつけられています。ちょっと実験の意味で一字一句変えないで日付を変えてアップします。


NHKワシントン支局長だった手嶋龍一氏が辞職して書き上げたのがこの小説「ウルトラ・ダラー」。手嶋さんはジャーナリストとしては一級との評判が高かった。9・11のさいは毎日毎晩画面で顔を見て、「一体いつ寝ているのだ」と驚くほどのタフぶりを示していた。国際政治の裏側を小説の形態でどう料理するのか、楽しみに手に取ったのですが…

=以下、アマゾンの紹介から=
「拉致」衝撃の深層!昭和43年暮れ。東京・荒川に住む若い彫刻職人が、忽然と姿を消した。それから35年以上の月日が流れ、ついに全貌が明らかになる…。ダブリンに超精巧偽百ドル札あらわる!震源は「北」。前NHKワシントン支局長の著者が放つ衝撃のドキュメンタリー・ノベル。


一言でいえば中途半端。ドキュメントとしてはさすがによく取材しているなあ、と思う部分もありました。細かいディテールにはジャーナリストらしい細部への目配りをみせて、服装や飲み物などにも薀蓄オヤジ的こだわりを発揮しています。

でも、小説として読むと、登場人物が「いかにも」という「作り」を感じるし、なによりストーリーが強引な感じがしてしまいます。せっかく国際政治の暗部を描くのだったらもう少し小説としての精度を高めて欲しいところです。

中国外交の老獪さを下敷きにした点は評価が分かれるところではないでしょうか。ドキュメントとして描くには、なかなか尻尾をつかませない中国だけに難しさが伴うのでしょうが、こうした形式だとある程度「なんでもあり」ですから。一流のジャーナリストとしての手嶋さんには、できればドキュメントでその老獪さをあぶりだして我々の目の前に提供してほしいと思ってしまいます。高望みなのでしょうか?

あと、個人的には、登場人物の生活、生活パターンがあまりにスノブ的で、いやらしさを感じました。こういうのに読み手が憧れると考えるのか、読み手の大多数とは違う世界で外交などは決まっていくのだよ、とうことをご丁寧にも教えて下さろうとでもしているのでしょうか? よくわかりません。