惰天使ロック

原理的にはまったく自在な素人哲学

高速哲学入門(318)

2011年11月26日 | 素人哲学の方法
吉本隆明は「人間による科学の進歩は止められない。原発の安全性を究極に高めるしかない。」の旨を言ってた。俺も今の反原発一色はどうかと思う。悪いのは原子力発電ではなく、それを扱う人間の組織である。地理的リスクがある日本でも、日本人ならうまくできるはずだ。
(yamamotoke)

「悪いのは原子力発電ではない」というのはその通りだ。その上でまず細かいことを書くと、この主は「日本人ならうまくできるはずだ」というが、別に「日本人なら」ということではなくて、大勢としてまっとうな科学認識を維持できている社会ならどこであれ「地理的リスク」の大小とは無関係に「うまくできる」とわたしは思う。リスクが大きければそれを手当てするためのコストが嵩むだけである。「地理的リスク」が大きいわが国では震災以前でも大きなコストを支払ってきたし、今後はそれがまたいくらかは増えると思われるが、それでさえ原子力発電は(核融合とか宇宙発電のような新技術が実用化されるまでは)、あらゆるエネルギー源の中で最も低コストで最も安定的で、なおかつ最も安全な供給源のひとつだということは、はっきりしている。

そこで問題は「(悪いのは)それを扱う人間の組織である」という場合のその「組織」とは何のことを指して言っているのかだ。いいかえると「大勢としてまっとうな科学認識を維持」することにおいて障害となるものがあるように思われるということだ。わたしの考えでは、わが国においてそれを最も障害してきたし、これからも障害し続けるように思われるのは、残念ながらわが国においても「科学の進歩は止められない」どころか「科学の進歩を止めたくて仕方がない」反文明主義の不定形な勢力が存在しているわけで、その勢力から影響されている、あるいは勢力と不可分に成立している「組織」だ。

原子力発電の技術やその安全対策の技術のほかに、わが国と社会が継続して取り組んで行かなければならないことのひとつは、この反文明主義をどうすれば、またどうやって克服できるのか、それを考え続けることだと思う。実際のところ、現在の文明世界のほとんどすべての国と社会は大なり小なりこの反文明主義に悩まされている。わが国の場合はそれが福島原子力発電所の事故によって最も困難かつ高度で先進的な形で噴出してきた、そう考えるべきだとわたしは思っている。だから、それを考えることは「日本人ならうまくできる」どころではなく「日本人こそが文明世界に先駆けてうまくできる可能性があるし、またやらなければならない」ことのひとつである。
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