タクシーは山を下り、かなりの距離を走りました。
ついに見えてきました。茶畑の中の一本道。まさに夏の香りの道です。
ここが宝城茶園でした。タクシーに待ってもらい、道を走りだしました。
ドラマ撮影当時は舗装されていませんでしたが、今はコンクリートで舗装されています。
しかし、舗装されて時間がたったためか、コンクリートも風景になじんでいました。
十字路に達しました。横に行く道は舗装されておらず、当時の面影が残っていました。
ちょうど来ていた韓国の人がカメラのシャッターボタンを押してくれました。
よっぽど私がうれしそうな顔をしていたのでしょう。
ふりかえって、来た道を見るとドラマそのままで、遠くに海が見えます。
そこは韓国の南の海です。帰りたくないけど、歩いてタクシーへもどりました。
タクシーに乗って、鳴鳳駅へ行けるなら連れて行ってほしいと言うと、おじさんはそれは時間がかかって難しいと言ったようなので、宝城駅へ行ってもらいました。
すぐ近くにあったみやげもののお店に停まっておじさんが何か買おうとしているので私も降りてお店の中を見ると、探していたまん丸の大きな塩せんべいのようなものがいっぱい入った袋を売っていました。うれしくて買いました。2000Wでした。
これは安い。26枚入りですので1枚10円です。
おじさんはお茶のペットボトルを2本買って1本くれました。「カムサハムニダ」。
見たかった風景の中に行けたし、せんべいは買ったし、あとは駅へ戻るだけだと思っていたらおかしなことになりました。
帰り道が来た道とは違うのです。
こっちのほうが近道なのか、遠回りしているのか、タクシーのメーターはどんどん金額が増えていきます。
そのうち、道端のビジネスマンを拾って助手席に乗せました。
宮脇さんの本を読んでいて、韓国のタクシーが相乗りをさせることを知っていたのでびっくりしませんでした。
ビジネスマンとおじさんはさっそくおしゃべりを始めました。
勉強になったのはビジネスマンがおじさんを「社長さん(サージャンニム)」と呼んだこと、なるほど、タクシーの運転手も社長さんだと思いました。
タクシーはようやく止まりました。26000Wでした。
列車の時間はまだ余裕がありました。でもそこは見覚えのない場所でした。
駅の裏かな?バスがいっぱい停まっていて、半信半疑で建物の中に入ってようやくわかりました。
ここは宝城のバスターミナルだったのです。
相乗りのビジネスマンが「どうしたの」と聞いてくれたのですが「ここじゃないんです」と言って外へ出ました。
タクシーのおじさんは、この時間ではもうソウルに行く列車に乗れないと思いこんで、バスターミナルに連れてきてくれたのです。
さあ宝城駅へ行かなければ、でもここからどう行ったらいいのか?
どうしよう地図もないし、道をはさんだ先にタクシーがたくさん止まっていたのでタクシーに近づいたら「どうしたんだい!」と声をかける人がいました。
あのタクシーのおじさんでした。
「ここじゃないんです。ヨク、ヨク(駅、駅)」といいました。
「キチャ?」と聞かれたので汽車のことだと思い「キチャヨク」と言いました。
するとおじさんはわざわざ携帯でどこかへ電話して「もう列車ないよ」と言いました。
私はキップを見せて納得してもらい、タクシーに乗せてもらいました。
タクシーは歩いて行ったらかなりあったと思われる距離を走りました。
やっと見覚えのある宝城駅に着きました。もちろんお金は払いませんでした。
「カムサハムニダ」と言っておじさんと別れました。
でも、出発時刻までは余裕がありました。
ホッとして、待合室のベンチでせんべいのようなものを食べてみました。
お昼は食べていませんのでお昼のかわりです。想像と違ってかすかに甘く、ふわふわしていました。
袋にはハングルで「ポン」と一文字書いてあったのでポン菓子とでもいうのでしょうか。
2枚食べて、デイバッグにしまいました。
改札をしないようなのでホームに出ました。ムグンファ号がやってきました。
15:46出発、鳴鳳駅を通り過ぎ、松汀里駅で17:06下車、17:17KTXに乗り換えました。
帰りのKTXも混んでいました。
車内販売のコーヒーを飲みました。
3000Wでした。