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消防飛行艇-輸出の壁

2005-01-13 20:35:30 | ニュース関連
歪む気象 (産経新聞) - goo ニュース
 つい最近このオーストラリアの森林火災の映像が放送されていました。その映像の中で小型飛行機やヘリコプターからの空中消火の様子が映っていたんですが、搭載する水の量が少ない所為か一瞬で終わってしまう水の投下を見ていて、消防飛行艇を投入できればいいのにと思っていました。
 消防飛行艇。飛行艇というのは水面から(湖や海、条件が合えば川からでも)離発着できる、UPした画像にある様な航空機のことです。(画像は海上自衛隊HPより拝借)
 小型飛行機やヘリコプターよりも大量の水を空中散布できるし、現場近くに離発着可能な湖や川があればそこで自ら取水して現場と往復することも可能です。かなり役に立つ機体だといえるでしょう。この消防飛行艇ですが一寸調べたら、カナダのカナディアとロシアのベリエフ位で後は旧式機の改造が多いようです。まあ、飛行艇自体開発しているメーカーは少ないですから、当然といえば当然なんですが。
 で、画像にもあるように日本でも新明和工業が飛行艇を開発・生産しています。画像の救難飛行艇US-1A、その基となった対潜哨戒機PS-1、そして現在飛行試験が行われているUS-1A改です。新明和工業はこのUS-1A改を消防飛行艇に改造して海外へ輸出することも考えているようです。新明和工業のHPにもそう書いていますし、「2004年ファーンボロー・エアーショー」でPRもしたようです。また、昨年11月末に“海自救難飛行艇の改造機、メーカーが輸出検討”という記事も出たようです。
 ただ、輸出するとなれば問題点も出てきます。価格とメンテナンス(アフターサービス体制)と“武器輸出3原則”です。
 価格は1機が約80億円らしいです。カナディアCL-415が約25億円との事ですので約3倍ですね。US-1A改がエンジン4発、カナディアCL-415が双発で違いがあるとはいえ価格差が大きいです。量産で何処まで価格を下げることが出来るかが輸出成否の分かれ目になるかもしれません。
 次のメンテナンス(アフターサービス体制)ですが、これはかなりの問題点です。飛行機に限らず機械を輸出するとなればアフターサービスが必要になりますが、今まで飛行機を輸出したことが無い新明和工業がサービス体制を整備するにはかなりの覚悟と体力が必要でしょう。輸出する気でいるのだから何らかの考えはあるのでしょうが、本当に出来るのかというのは一寸疑問です。
 最後の“武器輸出3原則”ですが、ミサイル防衛の問題もあって最近一部見直しの話も出ています。これで輸出の道が開けるといいんですが、この“武器”の定義が非常に馬鹿らしいですね。
 なんでも“「武器輸出規制をかけるのは経済産業省だが、同省OBは『禁輸にあたるか否かは、人を殺すか殺さないかではなく、どこが金を出したかが問題。US1A改の開発費はほとんど防衛庁が出した。となるとこれは武器だろう』と話していた。この考えは同省では主流だ」”だそうです。この定義でいくと防衛庁が食品メーカーに新しいタイプの携行食糧の開発を依頼したら、完成したその携行食糧は“武器”になるんですね。凄く馬鹿らしい考えですよ。

 現在唯一の国産旅客機YS-11も輸出でかなりの問題があったという文章を見た事があります。航空機の輸出というのはかなりハードルの高いことなのでしょう。しかし、それを乗り越えて国産の消防飛行艇が活躍する姿を見たいものです(本当は余り活躍しない方がいいんですが)

今回の参考サイト
東京新聞特報 三原則が言う『武器』とは?『防衛庁が開発費なら該当』