ノーベル賞作家ヨン・フォッセの作品「朝と夕」を読んで
つい思い浮かべたのは少し前に読んだ同じくノーベル賞作家の
ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」だった
両作品とも出産のシーンが書かれていることもあるが
全体的なトーンが似ている(静的な雰囲気)
饒舌な描写ではなく、むしろ反対の削ぎ落とした言葉と
内的な想像力を鼓舞する文章だ
そしてこういうの、好きだな!と思うのだった
こうした過度の描写がない文体は今トレンディなのだろうか
単なる偶然なのだろうか
何かドラマティックなことが起きるわけでは無い
淡々と語られていくのだが、出来事は夢の中の出来事のような味わいだ
それは自身が体験した大怪我をして生死を彷徨っていたときに
意識が明瞭なまま身体を離脱して上方から家や人を見おろす神秘体験の影響のようだ
ハン・ガンもヨン・フォッセも彼らの内面で起きていることは(描写していることは)
何となく分かるという実感がする
それは多分、自分との対話のそれと似ているせいだと思う
本を読んで、そのあらすじとか内容をうまく語るといった才能は自分にはない
だが、何かを感じることはできる
それはこの本のヨハネスの年齢が自分と近くなので
実感として思えるようになっているのかもしれない
ヨン・フォッセもハン・ガンも多くを語るよりも
読み手の中にある何かを呼び起こす力が優れているように思う
その分読みやすくて、目がしょぼく、気力が続かない今の自分には
有り難い存在だ
この本の評価は「優」としておいた
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