DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

6月13日(木)のつぶやき

2013-06-14 04:55:48 | 物語

湖の鎮魂歌(5)

2013-06-13 15:38:56 | ButsuButsu


私は、湖に沈んだものを回収することを、必然的に学んできた。

調査用の機器やブイが、沈んだりするのである。

時には、自律型水中ロボットが浮上しないこともあった。

その都度、自分たちで工夫して揚げてきた。

ただ、すべて目的物が見つかるということが前提となる。

広い湖で、小さなものをピンポイントで探し出すことは、とても難しい。

そこで特殊な装置を使う。

まず、サイドスキャンソナー(SSS)という機器だ。

今世界で一番性能が良いのは、Kline社製のものらしい。

図に示したのは、びわ湖の最深部近くを2011年に測定した結果だ。

前方に崖らしいものが見える。

10メートルくらいはあるのだろうか。

最深部が落ち込んでいるのがわかる。

この機器だと、30センチメートルくらいのものは判別できるらしい。

車くらいは平気だ。

白っぽいところは泡が出ているところである。

「この機器を使おう」

Hにそう伝えた。

こうしてSSSを用いて大まかに場所を特定する。

その後、水中ロボット(ROV)で探索し。ターゲットの確認と沈没状況を映像に収める。



これで完璧、、、の筈だ。

さっそく提案書を英語で作成しモンゴルへ送った。

6月12日(水)のつぶやき

2013-06-13 04:54:23 | 物語

湖の鎮魂歌(4)

2013-06-12 09:49:35 | ButsuButsu


「そういえば」

Hからの問いあわせに答えながら、私はふと過去に行った不思議な捜索のことを思い出していた。

びわ湖で最も大きい湾である塩津湾の入り口に、地元の漁師が廃船を沈める船の墓場がある。

漁船はFRPでできているので、再利用がしにくい。

そこで不要となった船をわざとここに沈めるのだ。

水面からはわからないので、一般の人は誰も知らない。

あまり行きたくない場所でもある。

ある日、私のデスクの電話が鳴った。

「遺体の捜索をお願いしたいのです」

ある男性からの電話だった。

「誰に聞いたの」

「地元の警察から紹介してもらいました」

ウソだろう。

なんで私のことを警察が知っているのだ。

「友人の奥さんが行方不明なのです」

詳しく話を聞くと、次のような顛末だった。

その男性は、友人の奥さんとその子供たちを連れて、塩津湾に遊びに来ていた。

バナナボートに女性が乗って、それをモーターボートで引っ張ていたらひっくり返って女性が沈んだという。

場所は、船の墓場の近くだった。

なぜ、その男性が友人の奥さんといたのか。

なぜ、その女性はライフジャケットをつけていなかったのか。

なぜ、私が彼女の捜索に行かねばならないのか。

などなど、不可解なことが多かった。

やがて、亡くなった女性の旦那さんからも電話がかかってきた。

仕方がないので、県庁の担当課の了解をもらってくれと言ったら、県庁に押しかけて許可を取り付けてきた。

あくまで私の本来用務のついでに探すという約束だった。

調査船に乗って現地に行くと、旦那とその友人は高価そうなバスボートに乗ってきていた。

奥さんが沈んだという場所で水中ロボットを入れるのだが、湖底にはゴミが多くてとてもではないが探せない。

濁りもかなりひどい。

結局、5回くらい捜索に出かけたのだろうか。

発見には至らなかった。

いまだもってわからないのは、男性と奥さんと、その旦那の関係だ。

普通、遺体は、しばらくすると腐敗してガスがたまり浮遊してくる。

ただ深さが40mを越えると、水温が低いのと圧力がかかることから、浮上する確率は低くなる。

ましてや、何かにひっかかっていれば上がってはこない。

最初に沈んだと指摘された場所は20-30mの深さだったので、浮上してもおかしくはなかった。

ただ水の流れが速い場所でもあるので、沖合に流された可能性もある。

本当に奥さんは沈んだのだろうか。

あまり気のすすまない捜索だったが、今でも気にかかっている事故でもある。

今回のモンゴルでの引き上げでも、古い遺体が出てくる気がする。

モンゴル語でのお祈りの仕方を覚えないと。

そんなことを考えていた。

6月11日(火)のつぶやき

2013-06-12 05:07:19 | 物語

湖の鎮魂歌(3)

2013-06-11 18:24:14 | ButsuButsu


Hからのメールは続く。

「フブスグル湖に沈んでいる車を引き揚げてくれませんか」

「えっ!」

「世界遺産に登録されるために、湖をきれいにしたいのです」

このことはよく知られていた。

冬になるとフブスグル湖は、厚い氷におおわれる。

ブラックアイスだ。

急激に気温が下がると、水は空気を含むことなく凍る。

とても透明な氷だ。

光のほとんどが透過するので、氷は黒く見える。

オンザロックに最適だ。

そして1メートルを越す分厚い氷は、天然の舗装路と化す。

すると、ロシアから多くの物資を積んだ車が往来するようになる。

この湖は、バイカル湖のほとり、イルクーツクからとても近いのだ。

ただ、自然は時としてとても非情だ。

氷の発達とともに、ところどころに歪みが生じる。

地殻と一緒だ。

知らないでその上に車が乗ると、氷が裂けて沈んでしまう。

こうして湖底に横たわる車やバイクなどの数が、16台を超えているという。

中には、ガソリンタンクを積んだ車も含まれている。

「何とかして湖をきれいにしたいのです」

それは、私の願いでもあった。

「OK。世界一のチームを作ってみるよ」

なんとなく、モンゴル人からのお願いには弱い。

この年になって、とんだ仕事を抱え込むことになった。

でも、やりがいのある仕事でもある。

びわ湖では、死体やガス弾が沈んでいることがわかっていても、誰も何も言わない。

表面だけきれいなら、それでよいのだろう。

悲しいことだが、それが日本人の現実だ。

フブスグル湖の透明度は20mを超える。

でも沈んだゴミは片付けようとしている。

深さは200m以上だ。

危険かもしれない。

こうして、アメリカ人、カナダ人、モンゴル人、日本人のエキスパートによる国際混成部隊ができあがった。

私は、徹夜で提案書を書いた。

「ところで、スポンサーは誰なんだ!」

6月10日(月)のつぶやき

2013-06-11 05:04:41 | 物語

湖の鎮魂歌(2)

2013-06-10 10:38:53 | ButsuButsu


「ご存知のように」とHのメールは続いていた。

「フブスグル湖は、2007年に世界遺産登録を申請したのですが、残念ながら採択に至りませんでした」

そういえば、アメリカの古い友人であるGから、世界遺産へのノミネートの話は聞いていた。

Gは、最初に私をモンゴルにある、その美しい湖へ招いてくれた人でもある。

1996年のことだった。

モンゴル人の奥さんと再婚し、ひたすらこの湖の保全に取り組んできたGに対して、私は尊敬の念を抱いている。

すでに70歳を越えても、なおフブスグル湖にこだわり続けるその姿勢は、感服に値する。

世界遺産の登録申請が却下された。

なぜだったのだろうか。

あれほどまでに美しく、神秘的なたたずまいを見せる湖を、私は知らない。

「フブスグル湖は、モンゴル国民の至宝です」

Hの言葉に嘘はない。

そう、モンゴル人なら誰でも生涯に一度は訪れたいと願う湖である。

そのフブスグル湖に、私はすでに何度も訪れていた。

市場経済に移行し、観光開発が進むこの湖の変遷を、10年以上も見続けてきた。

「何かが必要なのです。助けてくれませんか」

「私に何ができるというのだ」と、Hへの返信で尋ねた。

この質問に対して返ってきた答えは驚くべきものだった。

6月9日(日)のつぶやき

2013-06-10 05:07:46 | 物語

湖の鎮魂歌(1)

2013-06-09 18:33:53 | ButsuButsu


久しぶりにHからメールが来た。

彼の母親が正月に亡くなって、ずっと喪に服していたのだという。

モンゴルの人は、肉親の情が厚い。

特にHは末子ということもあって、母親に対する異常なまでの愛情を持っていた。

生まれ故郷の村は、ロシアとの国境近くにある、秘境である。

近くの町からたどり着くのに、車で2日はかかる。

道なき道を走り続け、時には川を横切る。

小さな湖の奥まったところに古い集落がある。

周囲には鬱蒼としたタイガが広がり、神秘的な趣を呈している。

森には今なおトナカイを飼育するツァータン族が暮らしている。

占いを専らとするシャーマンも住む村だ。

Hはダルハト族で、そのことを誇りにしている。

この村で彼は母親の遺体を安置し、毎日、身を清め、祈りをささげた。

今年は雪解けが遅い、とメールには書いてあった。

6月になったら、姉と二人で、母親の遺骨を山頂へまきに行くのだそうだ。

彼らは風と草原の民である。

死者の灰は風に乗り、やがて草原に舞い降りるのだろう。

彼らが住む家は、不思議に傾いている。

凍土の上に立てているので、氷が解けるにしたがって地面が凸凹する。

家も地面にならって、傾く。

そんなものだと思っているから、人々には屈託はない。

日本からたどり着いた旅人だけが、居心地悪そうに首を傾ける。

1996年に初めてこの地を訪れてから、長い年月がたってしまった。

Hも年を取り、私も老人となった。

湖のほとりで知り合った、何人かの人が他界したという。

私が死んだら、山の上で葬ってやる、とHは言っている。

私も鳥となり、モンゴルの草原をはばたくのだろうか。

そして、今日のメールの終わりには、もう少し俗っぽい話が付け加えられていた。

6月8日(土)のつぶやき

2013-06-09 05:04:32 | 物語

バイカル湖の怪しい穴

2013-06-09 00:02:34 | ButsuButsu


バイカル湖をご存知だろうか。

そう、世界で一番古くて容積が一番大きい湖だ。

2009年4月20日、NASAはバイカル湖の写真を公開した。

そして、仰天の事実を明らかにした。



この写真の黄色い矢印の先を見て欲しい。

2ヶ所あるが、その先に丸い穴が見える。

これは、いったいなんだ。

宇宙ステーションから撮影したものだが、さぞかし宇宙飛行士も仰天したことだろう。

4月25日には、拡大した写真を掲載した。



直径が20kmもあるという。

とてもではないが、人間が悪さでやったものとは思えない。

NASAは、おそらくハイドロサーマルベントのあとだろうといっている。

湖底から暖かい水が湧き出して、氷を溶かしているのだ。

注意深く地球を観察すると、面白いことがいろいろ見えてくる。

嫌な予感

2013-06-08 15:42:55 | ButsuButsu


さっき地震があった。

脳天に響くような振動だ。

マグニチュード3.4だそうだ。

震源は滋賀県南部。

ちょうど私の足元だ。

直下型なので、警報は全く役に立たない。

困ったな。

なんだか嫌な予感がする。

確かにこの地は変だ。

今年に入ってこれで2回目。

みんな自分の身を守るようにしたほうがよい。

6月7日(金)のつぶやき

2013-06-08 05:02:18 | 物語

神業

2013-06-07 14:46:03 | ButsuButsu


モンゴル人が羊を解体するところを見たことがあるだろうか。

まさに神業である。

かれらは一滴の血も流さないで、羊をさばく。

このような解体ができるモンゴル人も、数が少なくなってきた。

古き良き習慣はどこの世界でも失われつつある。

天に感謝、地に感謝、火に感謝して、彼らの宴は始まる。