DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

風(78)

2021-03-31 12:51:48 | 物語

嫌なニュースが続くものだ。
モンゴルとロシアの国境にあるフブスグル湖で地震が続いている。
今日、マグニチュード5.2と4.9の地震が発生した。
場所はフブスグル湖の北、ハンクという町の近くだ。
1か月でなんと54000回もの地震が起こっているという。
この湖は琵琶湖と同じ構造湖で、プレートの移動によって形成された。
世界最古の湖バイカル湖の上流に当たる。
とても美しい湖だ。
どうも最近、地球の地殻活動が活発化しているので、気を付けたほうが良いようだ。




風(77)

2021-03-19 20:35:20 | 物語

先日の調査で、ビワオオウズムシの赤ちゃんを2匹採取しました。
ずっといなかったので心配していましたが、ちょっとホッとしています。

でも湖底の温度がまだ高いので、これからが心配です。
この子達が大きく育ってほしいものです。

21日に琵琶湖へ調査に行きます。
これからも毎月見守っていきます。

クラウドファンディングもあと11時間で終わります。
応援していただいている人たちに、心から感謝します。


風(76)

2021-03-17 10:17:18 | 物語

3月7日に湖底の水温と溶存酸素濃度を更新しました。2020年10月21日以降は10分ごとのデータです。青色は水温、オレンジ色は溶存酸素濃度(%表示)を示しています。

この図からわかることは、酸素の回復が80%前後にとどまっているということと、水温の低下が8℃まで下がってから上昇に転じたことです。今後想定されるリバウンド(高温化、低酸素化)を考えるなら、酸素濃度は100%に近い方がよく、水温はできれば7℃台であって欲しいと思います。3月になり気温が上昇し始めたので、あとの希望は融雪洪水の流入しかありません。今年はどうなのでしょうか。

熱を貯え続ける琵琶湖から、冷水性の生物が姿を消すのもそんなに遠くない気がします。今から10年後に備えた取り組みが必要です。私たちのクラウドファンディングも、あと2日となりました。応援してください。
https://outreach.bluebacks.jp/project/home/21

風(75)

2021-03-11 15:28:06 | 物語

2020年10月
風の強い満月の日に
カイトサーファーと絵描きとシラサギが琵琶湖に集まりました。

カイトサーファーは、日本チャンピオンでした。
絵描きは、曲面絵画の達人でした。
でも、シラサギはただのシラサギでした。

その日、彼らは初対面で、
自分たちのことで手一杯で
お互いに挨拶もしませんでした。

にもかかわらず
彼らの波長は妙に合っていたので
とても楽しい時間を過ごしました。

その日は風が強かったのですが
ちょうど中秋の名月で
空に浮かぶ満月はとても優しい顔をしていました。

風(74)

2021-03-03 10:25:00 | 物語
2011年2月、私は東京にいた。
霞が関で文部科学省の役人に、琵琶湖の湖底で起こっている異変について報告していた。
何かがおかしい。
2009年12月に初めて発見した湖底からの泥水の噴出。
2010年12月には、その水域は大きく広がっていた。
それは湖底が強い力で押されているような光景だった。
おかしいから、注意した方がいい。
そう懸命に役人たちに説明したが、一地方の研究者の声は聞き流された。



2011年3月11日
私は、琵琶湖畔の研究室にいた。
突然襲ってきた大きな揺れ
まずい
きっと琵琶湖に地震が発生したのだ
とっさにそう思ったが
震源地は東北沖だった。
現地の映像がテレビに映る。
それは悪夢のような光景だった。
阿鼻叫喚というのは、このことを言うのだろう。

2011年5月
私は宮城県南三陸沖にいた。
浦先生に頼まれて、水中ロボットを用いた海底探索の手伝いに来ていた。
私たちは懸命に海底のがれきの中を捜索した。
2月の説明の時に、なぜもっと役人を説得できなかったのか。
国レベルでの注意喚起があればよかった。
そのことへの激しい罪滅ぼしの気持ちもあった。
たとえ不十分であっても
おかしいことの警告を発し続けることが
真の自然科学者のとるべき態度だった。

2021年2月、論文を出版した。
やっと過去10年間の心の思いをまとめることができた。
Increasing benthic vent formation: a threat to Japan’s ancient lake
Scientific Reports (nature.com)
3月11日の大地震で亡くなった多くの人々への御供養でもある。
いま、私は小中高の生徒たちを琵琶湖へ案内している。
一緒に琵琶湖の湖底を見て、地球からのメッセージを聞く。
こうして、これから10年後にやってくるだろう
大きな環境異変や地殻活動に今から準備をしている。

私にできることは、それくらいのことしかない。
でも一緒に頑張っている生徒たちが育てば
一人が十人になり、十人が百人になると信じている。
琵琶湖は地球の鏡である。
いろいろな表情を私たち伝えてくれる。
元気ならよし
顔色が悪ければ、みんなに注意を呼び掛ける。
そんな取り組みに、一人でも多くの人が参加して欲しい。

私も年を取ってきた。
いつまでも琵琶湖に出れない。
自分の経験や知識や技術を若者たちに伝え、共に学ぶ。
琵琶湖の湖底を見てごらん。
そこには日本の歴史が埋まっている。
1万年前の縄文土器から近年の活断層の跡まで。
知ることから始めて、動くことを学び、伝えることを身につける。
琵琶湖を守れなかったら、日本を守れない。
日本を守れなかったら、地球を守ることはできない。
かんたんな理屈じゃないか。