さて、びわ湖の話である。
阪神大震災以降、国土地理院は日本中にGPSによる測位システムを構築した。
おかげでいろいろ面白いことが分かってきた。
びわ湖の周辺にもいくつかの観測点がある。
2001年から2012年の11年間分のデータを解析してみた。
朽木の測点は、11年間で23.23cm東南へ移動していた。
彦根の測点は、20.64cm東南へ移動していた。
朽木が彦根を追いかけている。
まるでアキレスと亀の話のようだ。
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あるところにアキレスと亀がいて、2人は徒競走をすることとなった。
しかしアキレスの方が足が速いのは明らかなので亀がハンディキャップをもらって、いくらか進んだ地点(地点Aとする)からスタートすることとなった。
スタート後、アキレスが地点Aに達した時には、亀はアキレスがそこに達するまでの時間分だけ先に進んでいる(地点B)。
アキレスが今度は地点Bに達したときには、亀はまたその時間分だけ先へ進む(地点C)。
同様にアキレスが地点Cの時には、亀はさらにその先にいることになる。
この考えはいくらでも続けることができ、結果、いつまでたってもアキレスは亀に追いつけない。
これはゼノンのパラドックスの中でも最もよく知られたものの一つである。
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さて、朽木と彦根の距離は、毎年約3mmの速さで小さくなってきている。
マキノと虎姫の距離は年間0.85mm縮んだ。
大津と野洲の距離は年間1.83mm縮んだ。
こうして琵琶湖は少しずつ縮んでいる。
しかし、縮み方は均一ではない。
今のびわ湖の形もこのような近くの移動の結果なのだ。
確かに朽木は彦根に追いつくことはない。
もし追いつくときがあるとすれば、びわ湖はなくなっているだろう。