(2)第二幕
① 下市村椎の木の場
② 小金吾討死の場
カットされることの多いこの2つの場だが、後の「すし屋」の場を盛り上げるためには、ここもしっかりと見ておく必要があるらしい。
「椎の木の場はカットされることも多いのですが、仁左衛門が上演するときはこの場を必ずつけるそうです。なぜならここがあるので、ならず者の権太も自分の妻子には非常に愛情を持っていたことがわかり、後のすし屋の場面の悲劇がグッと引き立つからという理由だそうです。」
素行不良のため父親から勘当された「いがみの権太」による恐喝と、主君を守るため敵:大之信と相討ちで死ぬ小金吾という、どうしてこうなるのか分からない場の並び方である。
とりあえず、小金吾が主君のために犠牲になったので、ここでのポトラッチ・ポイントは5.0:★★★★★。
③ 下市村釣経瓶鮨屋の場
二月歌舞伎では、中村芝翫が感情表現たっぷりに権太を演じた(2月のポトラッチ・カウント(6))。
対する團十郎は、純粋な「江戸型」のさっぱりとした権太を演じてみせたが、これはこれで引き締まってよいと思う。
ということで、2月に見たとおり、「すし屋」のポトラッチ・ポイントは、権太が5.0で妻子が2.0の合計7.0:★★★★★★★。
ストーリー自体は最悪に近い内容で、当時、
・主君のため夫が妻と子を犠牲に供するのは当然(犯罪にはならない)
・主君を裏切った息子を父が殺すのは当然(犯罪にはならない)
という倫理観ないし法律が通用していたことが分かる。
まさに「絶望の社会」である。