そらいろの日々

育児とミステリ

解夏

2005-05-06 | 読書記録
『解夏』さだまさし

4つの中編が収められています。表題作「解夏」は映画やドラマにもなったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。4編それぞれ独立した話なのですが、テーマというか、根底に流れているものは共通していると思います。やがて視力を失ってしまう恐怖。祖国から遠く離れた国で味わう孤独と疎外感。深く記憶の底に閉じ込めてしまったままの過去。どこかでくい違い、壊れてしまった家族。美しい日本の四季の中で、それぞれが苦しみから解き放たれる“解夏”の瞬間が描かれます。

どんなに一生懸命頑張っていても、ほんのささいなことで人生は進むべき道を外れ、理想からどんどん遠ざかってしまいます。そんな中で、それでも必死に生きていく人たちを描く視線がとても優しいんです。登場するキャラクターも、強くてまっすぐで、人間が大きい。読みながら「こんな人間になりたいなあ」と思うことしばしばでした。個人的に「秋桜」はかなりヤバイです…。ラストは、涙で前が見えません!