果歩と静枝は高校までずっと同じ女子校だった。ふと気づくといつも一緒だった。お互いを知りすぎてもいた。30歳目前のいまでも、二人の友情に変わりはない。傷が癒えない果歩の失恋に静枝は心を痛め、静枝の不倫に果歩はどこか釈然としない。まるで自分のことのように。果歩を無邪気に慕う中野くんも輪に加わり、二人の関係にも緩やかな変化が兆しはじめる…。心洗われる長編小説。
10数年前に初めてこの本を読んでから、もう何回何十回読み返したかわからない。
いつも読書記録には初めて読んだ本を書いているのだけど、
29歳になったら、この本について語りたいなあと何年も前から思ってたのー。
たくさんの余分なものでできあがったお話。
作者の江國香織さんが、あとがきで、こんなことを書かれているのです。
なぜだか昔から、余分なものが好きです。それはたとえば誰かのことを知りたいと思ったら、その人の名前とか年齢とか職業とかではなく、その人が朝なにを食べるのか、とか、どこの歯みがきを使っているのか、とか、子どものころ理科と社会とどっちが得意だったのか、とか、喫茶店で紅茶を注文することとコーヒーを注文することとどちらが多いのか、とか、そんなことにばかり興味を持ってしまうということです。余分なこと、無駄なこと、役に立たないこと。そういうものばかりでできている小説が書きたかった。余分な時間ほど美しい時間はないと思っています。
私が、本を読むときのみならず、ふだん生活する上でもとても影響を受けた文章。
10代のときに、こういう文章に出会えて、ほんとうに幸せだなあと思います。
正直、果歩と静枝と、どちらかに100%共感できるかといえば決してそうじゃないんだけど
(むしろ恋愛に関しては、理解できないことの方がおおいし
)
それでも私の中には、果歩に似ている部分も静枝に似ている部分もあって、
特に女の友情に関するところでは、今まで自分では言葉にすることができなかった感情まで描かれていて、いつも読み返しては、同じ箇所で何度でもはっとしてしまう。
それにしても、初めてこの本を読んだときは、まだ10代で、男の人と付き合ったこともなかった。
それがいつの間にか中野くんの年齢も追い越し、果歩と静枝と同年代になってしまったよ。
昔から、どんな29歳を迎えるのかな、と思っていたけど、まさか結婚しているとは思わなかったなあ。
何はともあれ、この本とともに20代を歩めて、ほんとうに良かったと思う。
来る30代にも、指針となるような本に出会えたらいいのだけど!