馬頭琴の魂柱が倒れる原因は、年間を通して湿度が20〜30%の乾燥したモンゴルから、湿度の変化の
大きい日本に馬頭琴を持ち帰って、乾燥して収縮していた馬頭琴のボディが湿気で膨張し、湿度で長さの
変わらぬ魂柱が結果として短くなって倒れるのだ。なので、1回日本の気候に合った長さの魂柱を立てて
しまえば、倒れた魂柱を立て直すことは皆無の筈である。あとは、うっかり馬頭琴を倒してしまい衝撃を
与えねば、適正な魂柱はそうそう倒れない。なので、普通に馬頭琴を弾くだけなら、魂柱を立てるための
道具を用意する必要はない。馬頭琴の音質の変化を追求して、魂柱の位置の微妙な調整でもしない限りは
魂柱を立てるにしても調整するにしても、馬頭琴の F 字穴から行うデリケートな作業で、作業中に道具で
F 字穴を傷つけたり、表板に負荷をかけ過ぎて割ったりする可能性もあるし、よほど繊細な作業に自信と
腕力(微妙な調整には強靭な腕力が必須)がある場合を除いて、弦楽器工房の技術者に任せるべきである
と言いつつ、新型の魂柱立てを買ってしまった。商品説明を読んでも、使用者のコメントを読んでみても
この道具でどうやって挟んだ魂柱を離すのか? 操作方法が判らなかったからである。で、実物に魂柱を
挟んでだ状態で、軸の部分をあれこれ操作し・・・理解出来た。立てたい部分に魂柱が到達したら、軸の
上部を引くと、画像の様に魂柱の上部から外れてゆく。実際に作業はしていないが、直立していた魂柱が
引かれて少しだが斜めになると、上下のエッジで裏・表板に接して抵抗が大きくなって・・・外れるのだ
作業する際の注意は、立てたい位置に魂柱が到達した時点で、 F 字穴を傷つけぬ方向に軸が引けるように
セットする事と。この体勢で、魂柱の木目と馬頭琴の木目(ボディの上下方向)が直角に交差するように
魂柱を挟む事である。長〜い歴史のある西洋弦楽器の常識なので、取り敢えず従う事にしているお作法だ
音質の改善を試みるには従来の魂柱立ての、花びら様の凹んだ部分に魂柱を引っ掛け、押したり引いたり
左右に動かすのだが、じわ〜っと力を入れる必要があり、ぐい〜っと力を入れてしまうと呆気なく魂柱が
倒れてしまう。倒れた魂柱を拾い上げるには、専用の道具があるが2〜3000円くらいする。極端な話
割り箸の先端に縫い針を糸で巻いて取り付け、アロンアルファで固定した様なもので十分に事足りるのだ
地平に雲が浮く晴れ空、陽射し強く無風で暖かく、気温0〜10℃。 正午の気温7.1℃、湿度は51%
(11・165)36.6℃(75〜125)