一日一訓(19日 謗るまじたとえ咎ある人なりと)
「謗るまじたとえ咎ある人なりと
我が過ちはそれに勝れり」
まだ、車の持てない時のことである。
活動にはバスや列車を利用していた。
どうしたことかその日のバスは、
極めて乗客が少なかった。
これ幸いと好きな座席を選んで私は、
ゆったりと腰を降ろした。
なにげなしに向う側の席を見ると、どうだろう。
五十位でもあろうか。
紳士のズボンの前ボタンが、
見事に殆どが外れている。
ファスナーが今日のように、
ふんだんに使用されていなかった頃のことである。
とっさに私は、その人の隣に席を移して、
小声で注意した。
異性なら、こんな無粋なことは許されないだろうが、
そこは年が違っても野郎同志のこと、
単刀直入遠慮はいらぬ。
とはいっても、中には気にさわるお方もあるだろうが、
さすが紳士というべきか。
ちょっと、その人は驚いたようではあったが、
苦笑しながら一礼して、読んでいた雑誌を前に、
コソコソとボタンかけ作業を終えられた。
ほっとして元の席にもどった私は、
両脚をふんばるようにしながら腕を組んで、
やれやれとあたりを見渡した。
ところがである。
間もなく彼の紳士、
フラフラと私の隣に来て座ったではないか。
なにごとかと緊張する私に、
彼も私のしたように耳元に口を寄せて囁いた。
「君のボタンもはずれているよ」
はっと気づいて股間へ手をあてると、
なんということか自分のこそ全開状態ではないか。
顔から火が出るとは、こんなことをいうのだろう。
照れかくしに私も、苦笑しながら軽く会釈した。
「人のふり見て、我ふり直せ」
よくぞ古人は言ったもの。
普段、分かり切っているつもりの格言でも、
毛頭おろそかにしてはならないぞと、
その時つくづく知らされたものである。
「謗るまじたとえ咎ある人なりと
我が過ちはそれに勝れり」
まだ、車の持てない時のことである。
活動にはバスや列車を利用していた。
どうしたことかその日のバスは、
極めて乗客が少なかった。
これ幸いと好きな座席を選んで私は、
ゆったりと腰を降ろした。
なにげなしに向う側の席を見ると、どうだろう。
五十位でもあろうか。
紳士のズボンの前ボタンが、
見事に殆どが外れている。
ファスナーが今日のように、
ふんだんに使用されていなかった頃のことである。
とっさに私は、その人の隣に席を移して、
小声で注意した。
異性なら、こんな無粋なことは許されないだろうが、
そこは年が違っても野郎同志のこと、
単刀直入遠慮はいらぬ。
とはいっても、中には気にさわるお方もあるだろうが、
さすが紳士というべきか。
ちょっと、その人は驚いたようではあったが、
苦笑しながら一礼して、読んでいた雑誌を前に、
コソコソとボタンかけ作業を終えられた。
ほっとして元の席にもどった私は、
両脚をふんばるようにしながら腕を組んで、
やれやれとあたりを見渡した。
ところがである。
間もなく彼の紳士、
フラフラと私の隣に来て座ったではないか。
なにごとかと緊張する私に、
彼も私のしたように耳元に口を寄せて囁いた。
「君のボタンもはずれているよ」
はっと気づいて股間へ手をあてると、
なんということか自分のこそ全開状態ではないか。
顔から火が出るとは、こんなことをいうのだろう。
照れかくしに私も、苦笑しながら軽く会釈した。
「人のふり見て、我ふり直せ」
よくぞ古人は言ったもの。
普段、分かり切っているつもりの格言でも、
毛頭おろそかにしてはならないぞと、
その時つくづく知らされたものである。