バリん子U・エ・Uブログ

趣味、幸せ探し! 毎日、小さな幸せを見つけては、ご機嫌にハイテンションに生きているMダックスです。

涙の海3

2015-05-25 20:55:10 | お話 ペットロス
泣いてばかりいる女の子を心配した両親は、女の子を海に連れて行きました。
どこに行きたいかと聞くと、海に行きたいといつも答える女の子でした。
だから、きっと、海に行けば元気を取り戻すと思ったのです。
けれど、女の子が好きだったのは、"海に行くこと"ではなく、"犬と海に行くこと"でした。犬が一緒でなければ、意味はありません。
女の子は海岸を歩き回りました。最初はつきあってくれていた両親も、旅館に帰ってしまいました。
「黒い小さな犬を見かけなかった?」
女の子は岩場で釣りをしていた男の子に声をかけました。
「迷子になったの?」
「死んじゃったの。」
男の子は驚いて女の子を見つめました。
「君たちを知っている。いつも、すごく楽しそうだった。」
「すごく楽しかったわ。」
「犬もそう思ってるね。」
女の子はこくんと頷くと、男の子の隣に座りました。
「あの子は海が大好きだったから、ここに来たら会えるかもしれないって思ったの。幽霊でもいいから、会いたいの。」
「じいちゃんは漁師だった。」
男の子は女の子から目を逸らしました。
「じいちゃんは海が大好きで、海で死んだ。」
男の子は海を見つめながら、ゆっくりと話します。
「1年間、毎日、来ているけど、じいちゃんにもじいちゃんの幽霊にも会ったことはない。」
「死んでしまったら、もう、会えないの?」
女の子は声をあげて泣き出しました。
「死んでしまったら、もう、会えないよ。」
男の子もこらえきれなくなって、泣き出してしまいました。
二人の子どもは一緒に声をあげて泣きました。
死んでしまったらもう会えないから、生きている意味があったのだと、男の子は気付きました。
もう会えなくなるところに、死ぬ意味があるのだと、女の子は気付きました。
二人の子どもは、あの頃と同じようには、大切な相手と会うことはできないのだと、初めて了解しました。
二人の涙はいつまでも止まりませんでした。


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