少し前澤田ふじ子「親鸞 京都・宗祖の旅」(淡交社)を読んだ。京都案内を兼ねた気軽な本であるが,親鸞についても非常に安定した筆使いで感心した。以前同じ著者の「陸奥甲冑記」(講談社文庫)を読んで感心したことを思い出した。陸奥甲冑記は,8世紀陸奥に圧政を加える朝廷に対するアテルイをリーダーとする「蝦夷」たちの抵抗の物語である。アテルイは長年の抵抗の後,征夷大将軍坂上田村麻呂の降伏勧告に従い京都に出頭したものの,蝦夷の再度の反乱を恐れる朝廷により河内で処刑された。前九年の乱・後三年の乱の序章ともいえるこの戦いについては,高橋克彦が「火炎 北の耀星アテルイ」を書いており,これも熱がこもった楽しめる作品であるが,私としては澤田ふじ子の陸奥甲冑記に愛着がある。高橋克彦の東北びいき,エンターテインメント的デフォルメもいいが,それらをぐっと抑えたシリアスな陸奥甲冑記が私の好みにあう。総じて澤田ふじ子は女流離れした筆使いをする(引きあいに出して申し訳ないが,永井道子とは大分異なる)。この客観主義も私の好みである。彼女が親鸞をわかりやすく書いてくれてうれしい。(拙稿「善鸞・如信父子のこと」にtenjin師によるトラックバックを発見。リンクをたどって「天台本覚思想」等興味深く拝読させていただきました。多謝)
最新の画像[もっと見る]
-
イチローNYで1日革命 12年前
-
政府の危機管理体制 12年前
-
知夫YH 12年前
-
名歌手 13年前
-
日本みたい? 13年前
-
チェルノブイリ原発事故後の平均寿命の推移 13年前
-
フルアーマー? 13年前
-
チェルノブイリ級の汚染 13年前
-
謹賀新年2011 14年前
-
ピアソラへのオマージュ 14年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます