紫陽花記

エッセー
小説
ショートストーリー

別館★俳句「めいちゃところ」

★41 吾子の歩き初め

2024-02-11 07:27:51 | 「と・ある日のこと」2024年度

 
生命保険会社の担当営業レディが年一のご機嫌伺に来た。生存確認と健康状態も陰ながら見ていくのかもしれない。三十代半ばの生保レディは、初対面にも関わらず、ちょっと高音のはっきりとした話し方である。

見直しする事柄は、一つは亡くなった息子が受取人になっている部分を、削除すると同時に、後の受取人の受け取る配分を決めなければならないらしい。その手続きにインターネット上で手続きするには、パスワード設定をしなければならないとか。少しばかりの保険金額であっても、後々の揉め事の原因になることの無いようにする必要があるようだ。

今回だけでは終わらず、次回に持ち越しとなったが、その他は、今の老後生活に必要なお金関係の雑談になって行った。我ら夫婦のように、地方から上京した者同士の結婚生活は、余程のチャンスに恵まれた人でないと、何の心配もない老後を送れそうもない。国の政策も、のんびりと暮らせない厳しさがある。孫子のために老後資金を使い切ったなら、自分の老後の資金が不足する危険もありそうだ。現役時代にせっせと身を粉にして働くのは、孫子のためは勿論だが、自分が安らかな死に際を迎えるためでもあるような気がする。

 生保レディには、息子と娘がいるが、生まれて間もなくから幼稚園や保育園を活用して、今に至っていると言った。息子が初めて歩き始めた時、保育園の先生と遊んでいた時だったそうだ。仕事帰りの夕方、息子を迎えに行った時、「今日、○○ちゃんは初めて歩いたんですよ」と報告を受けたそうだ。その時は、嬉しいよりも、自分の手の中から歩き出すのを見たかったという悲しみがあったそうだ。同僚の人の中にもそういう経験者が居て、共に切ない涙を零したそうだ。できれば、三歳位まで母の手で育てたかったと言う。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俳句・めいちゃところ
https://haikumodoki.livedoor.blog/
写真と俳句のブログです。
こちらもよろしくです。

最新の画像もっと見る