すれっからし手帖

「気づき」とともに私を生きる。

いつも正解をださなくてもいい。

2015-03-11 15:11:51 | 世の中のこと
初めて、テニスの錦織選手の試合をテレビできちんと見たのは2月に行われた全豪オープンでした。

世界ランキング5位の選手とあらば、バッタバッタと下位選手をなぎ倒すように試合を展開するのかと思いきや、そうではなかった。

同じく初めて錦織選手の試合を隣で見ていた夫が、「ものすごく強いわけではないんだね」とつぶやきましたが、まさに私も同じ感想だったのです。

だって、世界ランキング5位と言えば、もう圧倒的な試合展開をする人なんだと勝手に想像していたのですから。

ぱっと見ただけでは、錦織選手と下位選手の力の差なんてわかりません。むしろ、サーブの速い選手との序盤を見ているだけでは、とても勝つ気がしないくらいです。素人テニスファンの認識ってこの程度なんですね。

でもね、じっくり何試合かを見続けているとわかるんです。錦織選手が5位にランクインしている訳が。トップ10に入る選手と100位の選手の違いというのが。トップ10に入る人たちのメンタルと100位代の選手たちのメンタルの差が。

その差とは、失点したとき、凡ミスをしたとき、不意をつかれた時、サービスゲームを落とした時、つまりマイナスの現象に陥ったときのメンタルの崩れ加減の大小です。落ち込んだ気持ちをニュートラルな状態に戻す速度です。一言で言えば、上位の選手ほど、切り替えが早いのです。

トップ選手の条件は、一つの試合の中で、あるいは一つのシーズンの中で、凡ミス、アウェイ、体調不良や怪我、などあらゆるマイナスな出来事は起きるという前提を承知していて、そのマイナスな出来事に対する卓越した対応力を持っていることなんですね。

マイナスから元に戻す力が強い、早いというだけで、そうしたマイナスを打ち負かそうとすらしない。「そういうこともあるんだ」と淡々と流していって、次のチャンスを狙う感じです。その姿勢が不思議と次のチャンスを引き寄せます。


こうしたテニス選手のテニスに対する構えって、私たちの日々の生活や、人生に当てはめても、結局は同じなんですよね。

自分にとって良いことというのが100%起こり続けるなんてあるわけない。テストで100点をとり続けること、そもそも、それを目指す人生なんていうのはありえないんです。

地球も自然も天気も、私たちの心も脳も身体もつねに揺らいでいるんです。

その揺らぎの下がったところに意識が向かいすぎたり、引きずられてしまったら、転落してしまう可能性もあります。でも、その揺らぎの存在をちゃんと知っていたら、今が悪くても、また事態が変わること、次のチャンスが来ることを素直に信じることができます。

積み重ねた経験や人との出会い、考え方の転換によって、雨ばかりが続いていても必ず晴れる日が来ること、失敗しても挽回できる機会が来るということ、悲しいことがあっても楽しいことが失われるわけではないこと、そうしたことを自然に信じられるようになることが「メンタルが強くなる」ということなんでしょうね。

つまり、強さっていうのは、マイナスを避ける力ではなくて、マイナスを受け流す力なんですよ。


錦織選手を世界ランキングのトップ10に押し上げたのが、マイケルチャンコーチですが、彼の言葉はテニスだけではなく、人生をよく知っている人の言葉で、美しくさえあります。

「いつも正解をださなくてもいい。勝った時には謙虚さを、負けた時には潔さを学べばいい」
(NHK「勝てない相手はいない~錦織圭 成長の軌跡」より)

うーん、しびれます。

受験真っ只中の中3の甥っ子、本命の一つ前の試験でいい感触を持てなかったとか。頑張ってる彼に、この言葉を届けたいです。




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