四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
意識が朦朧とするほど日当たりのいい渓で暑さを凌ぐ
奥多摩のように渓が深く日中でもあまり日が当たらない暗い地域。今から訪れる地域をそんなふうに勝手にイメージしていたのだが、そこへの道中でそれはまったく当てはまらないということがわかった。幹線道路からそれ、最後の集落を過ぎてしばらく進んだ道のどん詰まりはとても明るい雰囲気で、日差しが強く、暑い。
凌支度を整えてフミアトを辿るとすぐに沢に出た。
最初の釜が黒い岩盤でかなり深いのでやっぱり渓は暗いのかと思ったが、
それをへつって越えるとすぐに砂岩の明るいナメに変わった。
まわりは美しすぎるブナの森。笹の下草がややうるさく、いいハンモックポイントが見つかるかどうか、いささか心配・・・。
緩い傾斜の尾根に挟まれた渓は、明るく開けて、直射日光が暑い。
標高は600mほどなので、気温も水温も高く、沢を歩いているというのに暑くて意識が朦朧としてくる。
たまらず棺桶サイズの甌穴に浸かって身体を冷やす。
この甌穴には岩魚の親分が潜んでいたのだろう。突然目の前に現れたおっさんの尻に驚き、慌てて何度も私の尻をつついて逃げて行った。ちなみに、その後の遡行中何度も岩魚の姿を見ることができた。
濡れた衣服は効果的に身体を冷やしてくれて、逆に冷やされ過ぎて若干鼻声になりながら後半戦に挑んだ。
延々と続いた砂岩のナメにアクセントをつけるべく現れた5m滝と2m滝の二股を右に進む。
その後は凹状のナメに変わり巾も狭くなる。
しばらく凌ぎ続けるとやがて大きな岩盤の滝が現れたので簾のように落ちる流れに打たれてもう一度を身体を冷やす。チベテ~!
簾状の滝で引き返してそのまま沢を下る。緩やかな沢なのでこんなことができるのだ。左岸にはバーミヤン遺跡のような巨大な岩壁が迫っている。流れの中に突然現れる甌穴に落ちぬよう注意しながら下る。
幸い、沢のすぐ脇に下草のない広場を見つけたので、そこをハンモックポイントにする。
今夜の食材とビールを入れてきた試作品の冷たいヌノバケツを開けてみる。パウチの氷は3割ほど残っていたが、いつも使っているソフトクーラーよりも氷が解けるのが早い。凌ぎ始める前、バックパックの中の冷たいヌノバケツが少々結露していたので「おや?」と思ったのだが、よく調べると断熱材のアルミ蒸着プチプチを二重にすべきところ一枚しか入っていない。このために十分な断熱性が得られなかったのだろう。それでもヌノバケツの内部はしっかり冷えていたので生の肉が傷んでしまうことはなく、冷たいビールを楽しむこともできた。暑さを凌いだ後にキンキンに冷えたビールをグビグビ呑むためにも、冷たいヌノバケツの保冷品質をしっかり確認しておく必要がある。そのためには納得がいくまでサンプルを作り直してテストをしておこう。時間のかかる仕事だがすべては信頼のためだ。
冷たいヌノバケツは現行のヌノバケツとほぼ同じサイズだから重ねてパンキングしやすい。
設営がひと段落したらふるちんにカルフワステテコを穿く。夜の湿気でどうせ湿気るのだが、日差しのあるうちに濡れたものを干しておく。このあと小さいアリに股間を何度もかじられ悶えていた・・・。
濡れた地形図や凌手ぬぐいも干しておく。
EXPED Black Iceをハンガー代わりにミチクサを掛けておく。自分でやっておきながら、この後なんどもそれを見て驚く(笑)
きれいなブナの森を見ながらうとうと・・・。この時間がたまらない!
昼寝のあと、面倒臭くならないうちにヤナギニカゼの庇を張っておく。
まわりの立ち木に合わせて細引きをつなぐポイントを変えることができる柔軟な仕様だ。
標高が低いので仕方ないが夕方なのに25℃とは暑すぎる。
灼熱必至だが、夕飯を作るために火をおこす。宙に浮いている薪は乾燥していて状態がいいので、そういう薪を調達するのは鉄則だが、そうして調達した薪でも切ってみると芯材と辺材は乾燥しているが樹皮の下は濡れている。
燻ぶらずスマートに燃やすためには、あらかじめナイフで樹皮を削ってから炙っておくといい。ひと手間加えることで確実に効率のいい焚火ができる。
夕立もなく、風もなく、獣も鳴かない静かな夜。行燈風シェードの灯かりで呑む冷酒は格別だ。
獣にケツをかじられることなく爽やかな朝を迎えた。
ヤナギニカゼの庇を反転させて出立までの時間を存分に楽しむ。
まだ日の差し込まないナメを下り始める。
光の加減が違うので昨日歩いてきた沢とはまったく違う美しさがある。
沢床に現れた左岸の断層。
全般的におとなしい沢なので、飛沫を浴びてガンガン登りたい人には退屈かもしれないが、源頭まで詰めれば藪漕ぎも楽しめそうだし、晩秋のしっとりとした季節にまた訪れたいと思った。暑いうちは甌穴に浸かりながら歩けばいいしね。
季節に合わせて性質の違う沢を選べば、比較的長いあいだ沢歩きを楽しむことができる。秋に凌げそうな沢をいろいろと調べておくとしよう。
日当たりのいい渓を凌いだアイテム
クビマキ(絶賛販売中)
ハチジュウハチヤ七分袖(試作品)
ハザカヒ(旧品)
ヤマバッグ XP(絶賛販売中)
タモツウルオス XP(絶賛販売中)
凌ピッケル(絶賛販売中)
EXPED Black Ice 45
一夜を凌いだアイテム
ヤナギニカゼ(試作品)
EXPED Travel Hammock Kit
ウンカイlight(絶賛販売中)
ハンモックアンダーキルト 120(絶賛販売中)
クビマキ short(試作品)
ハヲリモノ octa(絶賛販売中)
カルフワステテコ(試作品)
行燈風シェード(欠品中・9月上旬入荷予定)
シノギチャブダイ240mm(絶賛販売中)
三脚取付具(絶賛販売中)
冷たいヌノバケツ(試作品)
ヌノバケツ ×2(旧品・試作品)
凌風呂敷 44cm&54cm(絶賛販売中)
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