四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
沢と暑さを凌ぐお泊りシノギング【前編】
とある夏のとある沢を絡めたシノギング。
小さな集落へ降り立った我々は、颯爽と車道を闊歩し、沢を目指す。本日はいつもとは違うエリア。沢もそうだが、下りの尾根や植生の違いも楽しみな所。さて、どんなシノギングになるか...
早速沢に合流すると、どこから入渓しようか、小橋を渡り右岸左岸へ右往左往。
この辺りかなと、目星をつけると各々沢支度。足元は、ローカットシューズも居れば、沢靴や草鞋スタイルと三者三様のスタイル。
入渓すると早々に深い場所が。まだまだ序盤、安パイにへつる。前週から雨が続いた最中であり、水量は申し分なし。逆に多すぎる箇所が出てこないか心配な所だが。
と思いきや、基本的にはこんな穏やかな、正に”沢歩き”な渓相が続く。実はスタートから700m前後の標高にて、暑さは有れど薄っすら涼しい空気感。次いで沢の中を歩けば気分はもう、さま~ばけ~しょん。
いかんいかん。これはシノギングだった。ただ気を抜くと時折、数mの滝にあたる。適度な凌具合。滝前は正に釜で深めの場所が多い。決して沢登りではない我々は、深さを確と見極めながら進む。
流れの中も、一歩一歩踏む場所を見極めフリクションを確かめながら上がる。
そうして最初の核心部。勢いのある流れの中へ当然挑むことは出来ず、絶妙にせり出している際をへつるへつる。
滝横に着くと、よっこらせっ!とプチクライム。見た目以上に手掛かりはしっかりしているが、滝の流れのプレッシャーが半端ではない。。
上からの図。こちらはくぐり抜ける何ともスリリングなスタイル。
まだまだ続く小滝の三段。
二段目は釜も深く、際をへつる。しかし、今回はへつりが多いな。。
我らがキャメラマンオガワは、「ヘツリのオガワ」の異名を持つマイスター。見よ、この見事なへつりを!
間違えました笑
しかし、この穏やかな渓相との対比が非常に心地良い。凌ぎ過ぎず、凌がな過ぎず。良い沢だ。
されども気は抜かず、地形図を追いルートも記していく。これを怠ると沢ルートはあっという間に現在位置を見失う。
第二の核心部。ここは本当に恐怖だった。。第一と似ているが、へつりの手掛かりは心もとなく、重心を岩に寄せてないと剥がされるようなルート。そして相変わらずの滝の流れによるプレッシャー。
極めつけは最後、手掛かりが正にボルダリングのそれな登り。正直次の一手が中々延びない、実に厭らしい登りだった。いっそのこと落ちてしまえばどんなに楽だったか。。
辛々無事登りきる。続く二人は右岸に高捲きできるルートを見つけ、無難に回避。私の頑張りは沢の流れと共に泡と消えた。。
一難去っても、へつりは続くよどこまでも。
身体も火照ってきたら、思い切って腿まで浸かろう。これによって得られる清涼感は格別だ。ひゃっこい!
よもやま話だが、クナイとアヲネロ/ナツミチの組み合わせは、沢歩きに最適なわけで、クナイの適度な生地厚はムレ感を低減しつつも沢の水流も受け流し、岩肌等の擦れから脚を守ってくれる。Schoellerの撥水性も防水生地波に効いている。そしてアヲネロ/ナツミチの生地は対照的に薄く異次元の通気性により、濡れても直ぐ乾き、濡れるを前提とした沢に最適だ。もちろん盛夏の沢に限ったお話だが、機会があれば是非この組み合わせを試していただきたい。
本日の行程も折り返しに差し掛かってきた所で、眼前に広がるはハッとするようなゴルジュ帯。
しかし遠目でも分かる「深いんじゃない?」感。果たして抜けられるであろうか、恐る恐る際から攻める。ここは何とか抜けられそう。。
その先も、浸かりはするが沢の中の際に浅い岩がせり出しており、タドレそう。更に先を恐る恐る、オソルオソル覗く。。
幸いにも浅い際は滝まで延びており、滝横も段々で全然登りやすい。何とも人騒がせなゴルジュ帯であった。
次第に沢は上流らしく狭く、凌ぎ甲斐のあるルートが増えてくる。このエリアに良く見られる岩稜っぽさは渓相とも合い素敵である。
ゴーロもゴロゴロ増えてくる。そして沢内のアップダウンとへつりによる全身へのダメージが着実に蓄積されていく。。
大きな二俣に差し掛かると、いよいよ目星をつけていたモックポイントへ突入。アンテナをしっかり張りつつ進む。
しかーし、沢としては良いルートが続くも、中々良い場所が見当たらない。もう十分沢の美味しい所は通ってきたぜぇ。
一縷の望みを掛け、沢から一段上がったポイントへズームイン!
景観は広葉樹で、沢からも程なく離れていて良し。しかし残念ながらの斜面。。この先にも地形図的に平坦な箇所はあるが、意外に距離もあるし、同じように10m以下の見えない高低差がある場所かもしれない。ここにするのか先に進むか。。相変わらず強欲な我々は辺りをグルグル回りながら真剣に考える。。
で、疲労感+早くハンモックに寝そべりたい願望が勝ち、この斜面を本日の宿場に選定。斜面でも寝泊り出来るハンモックの利点を大いに活用しようではないか。ほっと一息つく。
次第にゴロゴロと迫る雷の音。一発きそうだな。。さて夜に備え寝床を作るとしようか。
後編へ続く。
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