四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
6月29日「奥多摩の地質と洞穴を凌ぐ」の様子
「シノギング」と銘打つようになってから、実は初めての奥多摩エリアでの開催。ある意味アウェーではあるが、東京の奥座敷でもある奥多摩にていつか凌ぎたいと思っていた。しかしながら、今回はシノギングではない。
森勝氏の”庭”でもある奥多摩。そして氏の起源でもある洞窟探検。多彩な地質が織り成す洞穴、鍾乳洞の魅惑の世界。今回シノギングとは違う遊び方を通じて、よりシノギングへも活かせる良い経験値になれば。そんなテーマの回となる。
奥多摩駅に降り立つと、まずはバスにて移動。
とあるバス停に降りれば、暫く林道歩き。
沢沿いに延びるが、その渓相は奥多摩らしく猛々しい。
今回はテーマもテーマなので募集人数も少数にて。
暫く歩くと、縁に掛けられた脚立でおもむろに下りる森勝氏。
これが意外に急で、恐怖心をあおる。。
縁の下にはフミアトが続く。そのまま沢方面へジリジリと下りていくわけだが、
ここが中々の難所。
昨夜の雨も合いまった、ズルズルと滑りやすい地形と化しており、一歩ずつ着実に下りていく。
無事下り切ると、素敵な渓相と滝がお出迎え。
暫し英気を養うと、左岸をなぞる様に下る。少しへつる箇所もあり。
大きく拓けた所で、少し尾根側に詰めていく。
次第にそれらしい露岩も散見されると、
本命が見えてきた。
到着らしい。えっ、ここを入るの??一同驚愕、森勝氏はしてやったりな表情。
準備に入る。今回はシノギングではない。とにかく”汚れる”洞穴内。見た目や機能性は二の次で、身体を保護しつつ、汚れても良い衣類で臨む。
いざ、入穴!狭い!
入ると拓けた空間が広がり、安堵。
と思いきや、先はもっと狭かった。
汚れる、の意味を理解する。身体を擦りながら入るしかないし、自ずとそのような進み方になってしまう。
全体的にはこじんまりした洞穴で(実は無数にその先の道も存在はしているようだが、、)奥の広い個室のような空間で一同群がる。
そこで、森勝氏から行動食スナックの差し入れ。そして、それをヘッデンも消した真っ暗闇でモグモグ食べ合う。光の入ってこない真の暗闇は本当に真っ暗で、手元すらも見えず、全く目も慣れない。暗闇でのヘッデン、ライトの重要性を再確認。
暗闇を堪能した所で、前半戦終了。前半戦?そうここは第一洞穴で、本番の第二洞穴はまた違う所にあるという。そしてその二つは厳密には繋がっているらしい、、まだまだ知らない世界があるものだ。
入口から漏れる光。恵みの光。
無事、脱穴。
そこそこに泥だらけだが、第二洞穴ではもっと汚れるらしい。楽しみ半分、恐怖半分。
第二洞穴へ向けて移動する。この巨石の裏側に位置する。
洞穴内、お尻や背中は擦りながら進む事が多いので、すでにこのありさま。
到着。第二の入口はそこそこ広い。いや、麻痺しているだけか笑
身支度をし、
いざ入穴。
先ほどと同じように、入るとすぐ拓けた空間に。入口が大きい分、入った瞬間のひんやり感は少ない。
いきなりの難関。手、足、背中、体幹を駆使して下りるポイント。高さもあるので、恐怖に打ち勝つ根性も必要。
まだまだ難所は続く。。
背中をズリズリ擦りながら、手足で制動もつけながら滑る滑り台ゾーン。一気に滑ってしまうと、THEエンド!
ロープ補助を設けながらの、下降などなど。
そうして到達する、本日の最深部。薄っすらと水の残る泉ゾーン。狭いけれども。
この手前から小さな穴が延びているが、ここが実は最初の第一洞穴に繋がる穴だとか。相当狭い通路が地味に続くとのことで、絶対に入りたくないぜ。
水の通り道が分かる道の形状や岩肌。
専門的なところも多分にあるが、小さくも確かな情報から、状況を紐解く。この概念はシノギングでも大いに活用出来る。
まだまだ遊び足りない我々は、違う道の先を探索。
この先は中々の高さと広さの穴が続く。チムニーが通用しないので、手掛かり足掛かりをしっかり意識する必要がある。ポイントは”螺旋”
最後は試練の穴。下りるのもやっとだが、下りてからまた登り返せるのか?技術もそうだが、それ以上に冷静さが求められる。
その実この穴と、先の拓けた所が繋がっていたり、、無数の穴道通しが連なる洞穴内は、ルートファインディング時の道覚えのよう。暗いと全体的に捉えるのが難しいので、より入念に観察する必要がある。そして、来た道はポイントポイントで振り返って必ず確認しておくこと。山道でもそうだが、同じ道でも下りと登りで印象が変わる。帰りの事も考えて、事前に確認観察しておくことは非常に重要なことでもある。
昼食をとることも忘れて堪能しつくした所で、来た道を折り返す。行で難所だった所は、帰りも漏れなく難所。。
皆さん、身体の使い方は相当なれたご様子。しかしながら気は抜かず、着実に詰めていく。すると恵の光が!
無事、脱穴。
信じられない程に泥だらけだが、不思議と笑みがこぼれる。今回はシノギングではないので笑って良し。
仕上げに入る。この汚れた衣類たちを、家で洗うなんて考えられない!という事で、近くの沢筋を目指し下りて、
沢でお洗濯。
背中肘お尻は本当に泥まみれ。この予洗いが無いと家での洗濯はもう...
着替えも済まして、綺麗さっぱりした所で、バスの時間も程良く出立。
余談だが、この辺りの沢筋はナメ気味且つ適度な小滝もあり、渓相も良い。区間は短いだろが。
林道へと抜けられるショートカットで、優雅に戻る。
帰りは洞穴内でのお話に花を咲かせる。刺激的な体験であったが、それ故に心に残る良い経験と相成る。普段の山登りやシノギングでも、そういう気持ちを忘れずに、取り組んでいきたいと思った。
本日の決して笑ってはいけない奴。ビフォーアフター
今回はシノギングではなかったが、違う事から得られる知識や経験値というのは、シノギングにも大いに役立ち、応用できること。少なくとも私はそう再確認することが出来ました。勿論その逆も然りです。そして、大切なのはその経験値をどう活かすか?
今回参加いただいた皆さんには、今後のご自身の新たな経験へもしっかり活かしてもらえれば幸いです。
来月からはまた、通常運転のシノギングイベントとなりますが、このような少し変な?テーマの回も定期的に盛り込んでいければなぁと思います。期待はせずに乞うご期待下さい。
シノギングの情報は巷に溢れていません。気になる方はまず、このシノギングイベントに参加してみて下さい。この手記から得られる知識情報はほんの一部で、文献では得られない体験がこのイベントには詰まっています。実際に参加することでシノギングのあれやこれやを知ることができるでしょう。即ち百聞は一見に如かず。
凌は美学
いつ何時でも所作、立ち居振る舞いを美しく
いつ何時でもあたふたせず、まごまごせず
道具に踊らされず
凌ぎ
美を追求すべし