四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
暑さを凌ぐ - ある日の一泊シノギング ~前編~
9月も末。我々は恐らく平成最後になるであろう、沢を絡めた”暑さを凌ぐ”ための一泊シノギングに繰り出した。
今回は凌ホームの高尾駅で中央本線に乗り換え、少しだけ山梨側へ。駅に着くと雨がポツリポツリ。今日は凌ぎ甲斐のある一日になりそうだ。早くも興奮気味の一同。駅からは車道林道を1時間程ひた歩く。
所々堰堤があり、その脇をショートカットして登る。
そうして入渓ポイントに到着。各々入渓前の準備を進める。雨は幸い小雨で、樹林帯が主の沢歩きに支障はなさそう。林道歩きで早くも汗ばんだ我々の身体は、一段と沢歩きを欲していた。
いざ、入渓!
足元からほとばしる、涼感。身体全体が一気に涼む。
早々の関門。前日に雨降っていたが、元々の水量が少ないのであろうか、適度な水流で凌ぎらしい沢歩きができそうだ。
険しそうに見えるが、見た目以上に難しくはない。ただちょっとした凌的スリルは味わえるので、皆ついつい挑んでしまう。
シノビの撥水性は優秀で、これだけ深いツボに浸かっても、水しぶきが掛かっても、しっかり撥水してくれる。さすがに長時間の濡れでは染みてくるが、この撥水性自体はきちんとメンテナンスをすれば長~く保つ。肌触りもストレッチも心地良く、schoeller生地の素晴らしさを感じ取れる。
少しガチャガチャしているが、今回一番の沢歩きポイント。緩いナメ滝。
滑らかな岩肌とそこを思い思いに流れる沢水に、ため息が出るほど心が和む。
しかしながら、場所によってはなかなかツルツルなので、気を抜かぬよう、足場を探りながら登る。
最後はクライミング顔負けの微かなホールドを頼りにスラブを詰める。
いや~何とも穏やかな沢だ。正に沢を”歩く”には最適な沢。雨で緑も生き生きとしている。沢ルートは基本沢をタドルだけだが、その沢の中では、ある意味ルートが決まっていないので、しっかり見極める必要がある。それがまた楽しい。
十分過ぎるほどに涼んだ身体は、実は徐々に下がっていた気温と相まって、寒気を生み出す。ここで”暑さを凌ぐ”から”寒さを凌ぐ”へシフト。これだからシノギングはやめられない笑
一旦沢をあがり、休憩を兼ねて銘々防寒対策をする。三つのザックが連なる様は、さながら三銃士の様。
沢をあがるだけで、ほんのり寒気は抜ける。それだけ沢歩きは暑さを凌げているという証拠。しかしながら、多少飽きてしまった節もあるので、暫く沢岸を巻くルートで凌ぐ。
ただ巻ききれない所もあるので、そこは素直に入渓。徐々に沢筋も狭くなってきた。尾根への詰めは近いか?
暫く進むと、やってきました詰めの急登。まずはこの辺りで一夜を凌ぐための水を汲む。一層重さを増したザックを背に、一歩一歩詰めて行く。
そびえ立つ最後の砦。
早々に巻けそうなルートを選ぶ者もいれば...
果敢にも登り詰める者もありけり...(途中で合流出来たが)
あと少しー ※中々の傾斜です
着いた~!で思わずタッチダウン。 ※まだゴールではありません
尾根にあがってしまえばこちらのもの。タドルタドルで目星の付けていた辺りを見回る。ここも良いなぁ、ただこの先も気になるなぁ、と勿体ぶる。
そうしてたどり着いた今宵の楽園。さてさて凌ぐ準備を始めようか。
後編へ続く...