四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
破線ルートをノロノロと
笹子の山に行ってきた。
以前から気になっていた長い登り尾根を楽しめそうなルートで、山と高原地図では破線ルートになっている。
都心では前日雨が降ったのだが、やはりこのあたりは少し雪が降ったようだ。
その雪で化粧をした滝子山は冷えた空気の中にデンと構えてなんだか風格がある。
手書きの古ぼけた案内板に導かれて急な尾根の取り付きへ。
獣道の様な所に赤テープがあり、そこから猪の様な気分で登り始める。
少しの雪と落ち葉で良く滑る。
ひと汗かいて傾斜が緩やかになるといつの間にかあたりは一面の雪に変わっていた。
雪のへこみでうっすらと踏み跡が分かるが、あてにせず地形図とコンパスで現在地を確認しながら歩く。
入道山、棚洞山には山名を記す真新しい立派な標識が立つが、そこまでのあいだにはボロボロの案内板が一枚あるだけだった。
このアンバランスが破線ルートなのだろう。可笑しい。
空は見たこともないくらいに深く青く、葉の落ちた木の枝がチリチと線香花火のようだ。
尾根からの眺めは非常に良く、北に小金沢の山々、南には鶴ヶ鳥屋山の奥に三つ峠のアンテナが見える。
棚洞山を過ぎると雪も深くなり、尾根の北側は結構な積雪がある。
野兎の足跡が先導する目の前の白い尾根を爽快な気分で歩く。
ノロノロと登り尾根を楽しんで約3時間、お坊山の東峰に着いた。
広くて気持ちのいいピークだ。
シーンと静まり返った白い雪の中、音もなく燃えるアルコールバーナーで温かいものを作って食す。
東峰の先の鞍部から尾根の北側に入り込むと、どんどん雪が深くなり西から強風が吹きつける。
目の前の雪面が西から東に大きな畝を作っていることでもこのあたりの風の強さが分かる。
大鹿峠に続く尾根の他にいくつか小さい尾根が出ているので、間違わないように方角を確かめながら進む。
尾根は、峠の手前でヤセてきて小さいながらも雪庇が出ているので、西側の谷に落ちないよう注意しながら行く。
峠からは遠く南八ヶ岳や甲斐駒ケ岳の眺めがあるが風が強くてたまらないので先を急ぐ。
山腹の登山道に入ると嘘のように風は止み、誰も踏んでいない雪の斜面が穏やかに続く。
6時間ほどの雪歩きを楽しんだ後、林道に出て滝子山への道を分ける。
中央高速を越えると丁度ここで一周したことになる。
笹子駅への途中、笹一酒造で地酒を買う。
これも登山の楽しみ。
天候にも恵まれ大満足の山行だった。