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ぶらりドリブルの旅

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DAZN観戦 2020年J1リーグ第6節 浦和レッズvs柏レイソル

2020-07-24 18:28:10 | サッカー視聴記(2020年以前)

前半13分に、浦和・橋岡が反則を犯した後、そのまま相手のフリーキックを妨害する位置に陣取り。
そして柏・大谷がボールを蹴り橋岡にぶち当てるという一触即発になりかねないシーンを観て、今季の浦和の状況を良く表していると思いました。
とにかく激しくファイトして相手を上回る。
このシーンを演出した橋岡、球際での激しさはチーム1と言ってもいいぐらい、序盤から相手に食らいついては柏の攻撃を遮断していました。

激しいファイトは、中断明け直前のフロントの姿勢にも表れ。
無観客試合開催に則して、横断幕掲出の可否についてJリーグ側に対し意思を表明するなど、賛否分かれる態度を示していました。
勢い余って失言などもしていましたが

そしてリーグ再開後、決して内容は良くないながらも勝ち点を重ね上位に喰らい付いている浦和。
前年の残留争いから一転したこの序盤戦の結果、要因を挙げれば「変化」だと思います。
それも見た目上の「監督交代」「大型補強」といった要素では無く、内面の変化。
決してファブリシオの髪型が、という事ではない

フォーメーションを前年の基本形である3-4-2-1から4-4-2へと変更し、縦に速い攻撃・前線からのプレスという極力シンプルな戦術を採用した今季の大槻毅監督。
それは現在札幌で監督を務めているミハイロ・ペトロヴィッチ氏の指導の影響が、未だ根幹にこびり付いていた浦和というチームを改革せんという表れか。
戦術的にはあまり見るべきものは無いながらも、リフレッシュという点では重要な役割を果たしたこの「変化」が、選手達に激しいファイトを行える下地を齎したのでしょう。
そしてそれが結果にも繋がっている。

試合開始直前から大雨が降り注いだこの日の試合、序盤から浦和は持ち味の縦に速い攻撃で、何度も柏ゴールを脅かします。
3分、パスカットに成功したセンターバック岩波がすかさず縦パスを送り、これをレオナルドが受ける好機。
レオナルドは左に流れつつヒールパスを出し、受け取った武藤がエリア内に持ち込み、GK中村の飛び出しを受けながらシュート。
がら空きのゴールに決まったか?と思わされたシュートは、僅かにゴール右に外れ。

いきなり決定機を逃したものの、その後6分・8分にともに柴戸の縦パスから、レオナルド・武藤がそれぞれシュート。(前者は柏・高橋祐治が、後者は大南がブロック)
相手の柏の散発的な攻撃も、撃たれる前に凌ぐ事に成功しペースを握ります。(それでも18分にはオルンガの遠目からの強烈なシュートに脅かされましたが)
そして22分、右からのスローインを中央で武藤が受け、レオナルド→ファブリシオと渡ってエリア内で絶好機。
当然ファブリシオはシュートを放ちますが、GK中村が足でセーブして得点ならず。
前節から復帰した中村、流石日本代表GKというセーブをこの後も披露する事となります。

開始直後こそ凄い雨だったものの、次第に回復していく天候。
この天候の「変化」に伴い、浦和にとって厳しい試合展開になっていきます。

ブロックを敷く柏に対し、速い攻撃は敢行できなくなり、それに伴ってパス回しに終始していく浦和の攻撃。
そんな内容による緩みを突かれたのが32分。
ゴールキックから繋ぐ事を選択した浦和、GK西川の柴戸へのパスをヒシャルジソンに奪われると、エリア内で一対一となってしまいそのままシュートを決められてしまいます。
思わぬ形で柏が先制。

優勢な中に冷水を浴びせられた浦和、その後はペースを取り戻し何度も柏ゴールに迫ります。
35分レオナルドが右へ展開、橋岡のクロスにファブリシオが足で合わせると、ブロックに遭いこぼれ球に。
GK中村が抑えようと飛び出した所パスを繋ぎ、レオナルドがシュートするも、寸前で柏・大南にクリアされゴールならず。
44分にはエヴェルトンのスルーパスをレオナルドが受け、山中→関根と渡り、関根が決定的なシュートを放つもGK中村が横っ飛びでセーブ(これも足で防いでいた)。
中村の好守の前にゴールを奪えず、嫌な流れで前半終了。

後半頭から、柏はヒシャルジソン→三原へと交代。
ボランチで替えの利かない存在であるヒシャルジソンが(故障もあったらしい)ここで交代。
2節に彼が退場となった事も影響し3連敗を喫していた柏ですが(前節・湘南戦は3-2で勝利)、この日はヒシャルジソン不在を感じさせない結果を叩き出します。

後半もブロックを固める柏の守備に対し、浦和は何とかショートパスの連続で崩さんとします。
しかし崩しきれずにいると、6分に柏が反撃。
左サイドでのパス交換の後江坂が右へサイドチェンジし、受けた古賀がクロス。
そしてほぼフリー状態のオルンガが自慢の打点の高いディングシュート、これがループの軌道でGK西川の頭を超えてゴールに吸い込まれます。

この時間帯の柏の攻撃は明らかに左右への揺さぶりを意識しており、8分にも右サイドから江坂が中へパス、受けた大谷は左に流れつつボールキープ。
そして江坂に戻すと、またも右へサイドチェンジして古賀が受け、古賀がクロスという攻撃。(クロスは流れてゴールキックに)
前半は浦和のプレス・デュエルで流れを失う場面が目立っただけに、それをかわしたうえで形を作っていくという意思が伺えました。
そうして浦和守備陣を揺さぶりつつ迎えた11分。
三丸のボール奪取から左サイドを突破、三丸のクロスがファーサイドに上がると、神谷ヘッドで折り返し→仲間ヘディングシュートという完璧な流れで右サイドネットを揺らして追加点。
神谷・仲間という、前年J2だった選手のヘッドの競演で奪ったゴールでした。

既に9分、ファブリシオ→汰木への交代を行っていた浦和。
さらに14分には3枚替えを決断し、レオナルド・武藤・関根を、興梠・杉本・伊藤へ交代。
アタッカーをガラリと変えて勝負を賭けます。
その直後(15分)に、山中の縦パスを杉本スルー→興梠→杉本受けてシュート(GK中村キャッチ)という2トップの連携によるチャンスが。
しかしその後も得点はどうしても奪えず。
最も惜しかったのは33分、左サイドでパス回しののち山中がカットインから縦パスを出すと、今季初出場を果たした伊藤がポストプレイの形で前方へ。
これを受けた興梠がエリア内に浮き球で送ると、そこに伊藤が走り込んでいるという絶好のシュートチャンスを迎えましたが、放たれたシュートはまたもやGK中村が阻み得点出来ず。

攻めなければならない試合展開に、橋岡は次第に消え気味に。
この橋岡、2年前に抜擢を受けてからは、フィジカルの強さを生かしてあっという間にレギュラーに定着した強者です。
それでも本職では無い右ウイングバックでの出場が主で、4バックになった今季も右SB。
本職のSBが極端に少なく、逆にCBは槙野・鈴木大輔があぶれる程に人材豊富と、橋岡にとってはSBとして働く他無いという選手編成である浦和の現状。

そんな歪さを正すためなのか、オフに「3年計画」という構想を発表するに至ったフロント。
橋岡の他に汰木・柴戸と若手重視の選手起用をしている辺りは、現場の大槻監督もその意図を汲んでの事なのでしょう。
しかしこの日は初めて途中出場となった汰木の出来が芳しくなく、橋岡も尻すぼみの末途中交代(長澤と交代・43分)。
連戦の末に疲労感は隠せなくなりつつあるようで、無理使いによるコンディション低下だけは避けてほしい所です。

一方、中3日にも拘らず前節と全く同じスタメンだった柏。
それでも2~4節の連敗を受けて、前節にメンバーを弄った(中村・高橋祐・仲間・三丸・大南の5人が前節からレギュラーに)のもあり試合終盤でも衰えを見せず。
44分、三原のボール奪取から、神谷が中盤からドリブルを開始し一気にチャンスエリアへ前進。
そしてエリア手前右から果敢にシュートを放つと、リフレクションもあって綺麗にネットに突き刺さり4点目。
内容的に浦和が押していたものの、結果は大差が付く事となり試合終了を迎えました。

ちなみに浦和の「3年計画」の中には、1年目である今季の目標としてACL出場権獲得・得失点差+2桁というものがあるらしいです。
しかしここまで勝ち越しているにも拘わらず、勝つ時は1点差・敗戦は複数得点差というのが祟り、早くもマイナスに振れ気味な得失点差。
目標達成は厳しくなってきた、と意地悪めいた事を言ってみましたが、やはり前年までの負の遺産の払拭にはまだ時間が掛かりそうです。


DAZN観戦 2020年J2リーグ第6節 松本山雅FCvsザスパクサツ群馬

2020-07-22 18:30:24 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の群馬の記事はこちら(2節・水戸戦)

ディフェンスラインの人材を故障で欠くクラブ同士の対戦。
松本は再開直後の2節(金沢戦)に橋内が故障で途中交代、代わって出番を得た常田は3節(甲府戦)の前半で途中交代と、立て続けにセンターバックが離脱。
群馬も平尾・渡辺と4・5節で相次いで試合中に負傷交代(平尾は今季サイドハーフが主ですが)し、ともに長期離脱。

そしてこの日両クラブの対戦でしたが、前半8分にアクシデント。
橋内・常田の故障を余所に、フル出場していた森下までもが、群馬・林との接触で流血してしまい交代する破目に。
浦田が代わってピッチに立つ事となりました。

松本は中断明け以降未勝利と、これだけ予想外の事が起きれば成績も安定しないはず。
そして前年J1に居たのも相成ってホームでは昨年5月以降未勝利と、不利な要素満載な試合となりましたが、この日は最後まで粘り強い戦いを見せました。

開始早々の1分、フリーキックを得た松本はキッカー・セルジーニョのクロスに阪野が合わせてヘディングシュート、ゴールネットを揺らしたもののオフサイド。
7分には左サイドでボールを拾ったセルジーニョがサイドチェンジ、受けた田中隼磨の手前からクロスを、ファーサイドで高木彰人がヘディングシュート。(サイドネット)
立て続けに頭で群馬ゴールを襲います。

一方の群馬も、5分に遠目からのFKをキッカー宮坂が直接狙い、GK圍は弾いたもののすぐさま抑えます。
互いに相手ゴールを脅かすシーンが見られた序盤。

そんな中前述の森下の負傷交代が起き、松本不利な空気が漂い始めましたが、14分でした。
右サイドのスローインから形を作り、田中隼のクロスがこぼれると、エリア内右に転がったボールを塚川がすかさずシュート。
エリア内右の角度のきつい場所からでしたが、シュートはグラウンダーで左サイドネットを捉え、苦しさを吹き飛ばすような先制点が入りました。

先制後もしばらく松本の時間が続きましたが、18分に田中稔也がエリア内からシュートを放って(浦田がブロック)からは群馬のターンに移り変わります。
直後の19分には、左サイドの高瀬中央へパス→進ポストプレイ→宮坂ドリブルから縦パス→林と渡り、反転した林のシュートがゴールを襲いゴールバーを直撃してヒヤリ。

飲水タイムを挟み、明けた後の25分にも、岩上の右サイドからのパスを受けた進がエリア手前から反転シュート(ゴール左に外れる)とチャンスを作った群馬。
しかしその後は、松本の前線からの守備が嵌るようになり、好機を作れず再び松本の時間に。
この時間の松本はプレスは掛けるものの、群馬の最終ラインまでは詰めに行かず、パスコースを消す事を重視。
これで群馬はビルドアップに難儀し、思うように前線にボールを運べなくなりました。

しかしその流れも10分ぐらいで終わり、前半の終わり際は群馬の攻撃が続き、クロス処理を中心にGK圍も大忙し。
前半最後のシュートは45分、宮坂縦パス→進ポストプレイ→林左へパス→高瀬ワントラップして手前からクロス→林ヘディングシュート(ゴール左に外れる)というもの。
何度か良いシーンも見せた群馬ですが、得点力不足解消(前節・山形戦は3得点で勝利)には至らず前半終了。

その群馬を前年にJ3→J2へと復帰させた功労者が、今現在敵として立ちはだかっている松本・布啓一郎監督。
長らく市立船橋高校の監督を務めた事で有名で、その後はアンダー日本代表(U‐16・U-19)の監督に就いたりもしましたが、クラブの指揮はこれが2つ目。

群馬時代は1年でのJ2昇格がならず、人件費の問題で大幅に選手を入れ替えなければならない状況に陥った2018~2019年オフ。
主にJ3やそれ以下のカテゴリのクラブから選手を集め、2019年のJ3での戦いに挑みました。
一見すると「寄せ集め集団」とも揶揄されるような編成でしたが、そこは布氏の目利きの良さが奏功し、激しい2位争いを制して昇格。
FW高澤(現大分)の大活躍など、若手の飛躍も目立ちました。
そしてオフに入り、その実績を評価した布氏を松本が監督に招聘。
岩上・宮坂と、松本から群馬への移籍選手が目立ったのは、その埋め合わせという意味があっての事でしょうか。(邪推)

8年間監督を務めた反町康治氏の時代が終わりを告げた松本。
J1定着を焦るあまり、Jリーグでの歴史が浅いにも拘わらず、ホームグロウン選手の不足・レンタル選手が幅を利かせる歪な選手構成になっていた近年。
布氏の招聘はそれを正さんとする意味合いともとれ、実際この日のスタメンには森下・杉本・久保田・高木彰と若手選手の起用が目立っています。(森下・高木彰はレンタル加入だが一応入れとく)

レギュレーションの変更もあり、今季は自動昇格2枠のみでプレーオフは無し。
そして降格が無い代わりに、翌年は降格枠が4枠という予定が立てられています。
つまり昇格しても、来季は残留が一層厳しいものになるはずであり、こうした基礎固めを重視した起用は何より重要となるでしょう。
観客減による経営悪化をどれだけ凌げるかに掛かってくる……というマクロの問題もありますが。

その松本、後半開始前に高木彰→鈴木雄斗に交代。
鈴木雄が左サイドハーフに入り、セルジーニョがFWへシフトしました。
後半1分、自陣からのFKでロビングがエリア内右へと入り、高木利の落としを浦田がボレーシュート。(枠外)
前半同様、遠目からのFKでの攻撃でジャブとした松本。

その後は再び前線からプレス。
今度は積極的にボールホルダーまで詰めていき、3分には敵陣右サイドで久保田がボール奪取に成功し、そこからCKをゲット。
しかしこのCK、相手のクリア後に久保田がミドルシュートを放ってブロックに遭うと、そこからカウンターを受けてしまいます。(シュートには持ち込めず)
これを境に群馬のペースに。

前半とは違い積極的に奪いにいったのが拙かったのか、群馬はビルドアップでこれらをかわして攻撃を組み立てます。
しかしシュートは6分の高瀬ミドルシュート(ゴール右に外れる)ぐらいで、完全な攻勢とまではいかず。
8分に、前節からベンチに復帰した大前を投入(中山と交代、進が左SHにシフト)し勝負を賭ける体制に。

しかしその効果が表れる前に、松本に追加点が入ります。
17分自陣左サイドから高木利がロングパス、これが中盤で混戦となり、こぼれ球を鈴木雄が拾い中央に向かうドリブル。
追い越した杉本にパスを出すと、杉本はエリア内に進入してシュート。
混戦(セルジーニョが潰れたのが利いたか)の後でトランジションが遅れた隙をドリブルで突き、数的優位を作った末のゴールでした。

その後も20分、久保田のクロスから阪野がヘディングシュート(オフサイド)と松本が好機を作ったのち、群馬は21分に2枚替え。(高瀬→飯野・田中稔→青木に交代)
しかしまたもや松本が好機(25分)、今度は相手CKからのカウンターで、杉本のドリブルで一気にエリア手前まで進んだのち中央からシュート。(GK清水セーブ)

決定的な3点目こそならなかったものの、これを機に以降松本はカウンター狙いにシフト。
群馬にボールを持たせる戦術を採り、その通りにブロックの外でパス回しを強いられるシーンが多くなっていく群馬。

終盤には守備時に5バックとなる逃げ切り体制に入る松本。(杉本が右ウイングバックの位置に降りてくる)
何とか打破したい群馬は41分、左サイドで白石(進と交代で出場)が細かくドリブルで前進し、奥の飯野へパス。
飯野が切り返しからクロスを上げると、ファーサイドで岩上がヘディングシュートを放つも枠を捉えられず。
以降も得点の匂いがしないまま、試合終了のホイッスルを聴く事となりました。

敗れた群馬ですが、布氏の時代に獲得した選手は鈴木順也・岡村・田中稔に飯野・青木と、絶対数は減ったものの出場を重ねている模様です。(青木はこの日が今季初出場)
結果とともに土台作りも重要である事を示しているようで、松本でもこの手腕を発揮し、チームの基礎を固める事が出来るでしょうか。


DAZN観戦 2020年J1リーグ第5節 鹿島アントラーズvs横浜F・マリノス

2020-07-21 17:10:41 | サッカー視聴記(2020年以前)

前年の覇者であるマリノス。
チームの伝統であった「堅守からのカウンター」というサッカーをかなぐり捨て、徹底したハイラインによる攻撃サッカーを展開しての優勝となり、観衆も魅了。
その波及効果か、今季に入り3トップのフォーメーションに移行・模索するクラブが後を絶ちません。(川崎・FC東京・清水・鳥栖・仙台)

3トップの布陣を敷くメリットとしては、戦略的な段階で相手の最終ラインに迷いを持たせられる事。
人に付く(但しマンマークでは無い)事が前提であるディフェンス、3人に対して3人をチェックさせると、4バックのチームは必然的に一人余る事となってしまいます。
この浮いた一人(大抵はセンターバックの片割れであろう)は、相手の2列目の選手を見るのか、ないしは誰にも付けずリベロ的な存在となるのかで迷わされる事でしょう。
相手CFにはいっそ誰も付けず、CBだけゾーンで守るという手もありますが。

対峙するチームが3バックだとしても、左右のCBをウイングに付けてしまうと、中央が薄くなりそれだけでリスクを抱えてしまう。
かといってウイングバックに付かせると中央に2人も余ってしまい……。

この3トップを押し付けつつ、ポゼッションを支配する事で相手守備のスペースを突き翻弄する攻撃スタイル。
そんな美しいともいえるサッカーで覇権を握った前年から一転、今季は立ち上がり躓く事となってしまいます。
やはりどのクラブも、優勝チームへの敬意ともいえる、最大級の研究をして対策を立てるのはプロサッカーの常。
この日もその術中に嵌り、守備における弱点を何度も突かれ苦闘する事となります。

濃い霧の中でキックオフとなったカシマサッカースタジアム。
マリノスはトップ下であるマルコス・ジュニオールがキーマンの一人なのは周知の通りで、鹿島は徹底して彼を潰しにかからんというディフェンスを敢行。
立ち上がりに何度もプレスを受け、反則で止められるマルコス。

そして前半4分、リズムを崩す事に成功した鹿島が敵陣で奪ってショートカウンター。
三竿のボール奪取から、エヴェラウドが左サイドをドリブルで突き進んでクロス。
これをファーサイドで待ち構えていたのは、今季初スタメンの上田。
トラップして浮いたボールをすかさずボレーシュートし、電光石火の先制点をたたき込みました。

激しいプレスで立ち上がりマリノスに主導権を与えなかった鹿島。
やはりこの日スタメン復帰したレオ・シルバの、流石のボランチぶり。
サイドに配置転換されたエヴェラウド、ファン・アラーノが何度もボールカットを魅せていたのも、彼の存在でタスクが整理された賜物でしょうか。

しかし反撃に出るマリノス。
12分、扇原が左サイドへ展開、エリキに渡ったボールはティーラトン→エジガル・ジュニオと渡って中央へ。
そしてマルコス→松原→エジガル→仲川と鮮やかに右へパスが回され、仲川がエリア内右からグラウンダーで中に入れると、そこには走り込んだマルコスが。
既に彼に立ちはだかる障害は無く、ボールを蹴り入れて同点に。

その後もテンポ良いパス回しで流れを掴むマリノス。
15分にもエリアに近い位置で右→中央→左へとサイドが変わり、マルコスのパスを受けたエリキがエリア内左でボールキープ。
一旦パスを出すもこぼれ、そのボールをエリキが自らダイレクトシュートするも、中に居たマルコスに当たってしまいゴールならず。

対する鹿島、立ち上がりでショートカウンターが一つの狙いとは解りましたが、もう一つが相手ディフェンスの裏狙い。
18分、レオ・シルバのロングパスがDFに当たりつつも遠藤康に渡り、彼からパスを貰ったアラーノがシュート。(右に外れる)
マリノスのハイラインを突く、これも解り易い攻撃。
しかしこの2つを徹底する事で、支配率では後塵を許す展開の中、互角の試合内容に持ち込みました。

開幕4連敗・得点僅か1(しかもオウンゴール)という常勝軍団らしからぬ立ち上がりで、周囲の蜂の巣を突いたような騒ぎ(?)を起こしてしまった鹿島。
開幕節・広島戦(0-3)で、立ち上がり決定的なシュートが連続でポスト直撃というシーンが見られたのは、この苦難のシーズンの序曲であったのか。
今季から監督となったアントニオ・カルロス・ザーゴ氏も、早くも瀬戸際に追い込まれたという印象で、この日は強敵・マリノス相手に方針転換。

五輪世代のFW・上田を初めてスタメンで起用した他、途中出場で良いパフォーマンスを見せていた遠藤康も初スタメン。
この2人がトップの位置で、サイドハーフには新助っ人のエヴェラウド・アラーノの2人で固める。
起用法で変化を見せると、実際のサッカーも、これまでの理想としたパスサッカーから一転。
対マリノス用というだけに留まる可能性も否定できませんが、相手の嫌がる事を徹底的に行う姿に、「強い鹿島」が戻って来たような印象を受けました。

果たしてその姿のとおり、前半の終盤は鹿島が何度も決定機。
36分、クリアボールを受けたアラーノがすかさず裏へロングパス、遠藤康がオフサイドポジションに居たのを利用した上田が抜け出してGKと一対一に。
エリア内に入った上田はドリブルを選択したものの、ここはGK梶川が上田の動きを見切り抑えます。
42分は中盤で三竿がボール奪取し、右に展開しての攻撃から上田がクロス。
これを遠藤康がボレーシュートを放ちますが、またもGK梶川がセーブ。
アディショナルタイムにもアラーノのボール奪取から、右サイドをアラーノがドリブルで疾走。
そしてエリア内に入れると、上田がダイレクトでシュートしますが僅かにゴールの左へ。
得点チャンスは作ったものの、勝ち越す事は出来ず前半終了。

ますます霧が濃くなってきた後半、それは力がありながらもここまで勝ち点ゼロという現実を覆わんとするものか。
その霧を利用したか、後半のキックオフは何と遠藤康が直接シュートを狙います。(枠外)
いきなりの奇襲で精神的にも有利になったか、攻勢に出る鹿島。
後半6分、アラーノの右サイドへのスルーパスに上田が抜け出し、エリア内右に進入してシュート。(GK梶川セーブ)
10分、またもスルーパス(上田)からエヴェラウドが左サイドに抜け出し、カットインからシュート。(ゴール右に外れる)
対するマリノスは、疲労面を考慮してか後半前にチアゴ・マルチンス→伊藤槙人、エジガル→遠藤渓太へと交代。
さらに6分にエリキ→オナイウ阿道へ交代と、大幅にメンバーを変えましたが、それが仇となったような形勢逆転でした。

そして13分、鹿島に待望の瞬間が。
レオ・シルバがセンターサークルから右へ長いグラウンダーのパスを送り、広瀬がこれをダイレクトでクロス。
グラウンダーのボールを、走り込んだ上田が合わせて勝ち越しに成功。
右アウトサイドという難しいシュートで、GK梶川の股を抜くというビジュアル的にも映えるゴールでした。

その後は別の意味で「鹿島らしさ」が戻ったようなシーンも。
15分には敵陣エリア手前で、相手のパスミスを上田が拾いにいき、カバーに入った扇原の手に当たってハンド。
これに対して「決定機阻止では無いか?」として主審に対して猛抗議を行う鹿島の選手達。
しかしこのシーンでカードは出ず。(その後のフリーキックの好機はモノに出来ず)
その他、序盤からの激しいチャージのし合いや、スローインの判定に線審に抗議するシーンが目立っていたこの試合。
正直良く警告無しで終えたと思います。

勝ち越しに成功した鹿島、さらに良い流れを掴みます。
22分再び中盤でのボール奪取から永木(三竿と交代で出場)が縦パス、遠藤康が右へ展開し、アラーノのエリア内右からのグラウンダーのボールにエヴェラウドが合わせてゴール。
得点力不足の一因と揶揄されてきたエヴェラウド、ようやくの初ゴールで雄たけびを挙げる事に。

飲水タイムを挟み、雨が激しくなる代わりに霧が止みつつあったピッチ上。
ようやく鹿島が、重いムードの振り払いに成功したという表れか。
しかし25分、マリノスも意地を見せて反撃。
左からのコーナーキック、ショートコーナーからマルコスが左斜めという位置から巻くシュートを放つと、これが芸術的にサイドネットに突き刺さり1点差に。

これでムードを変えたかったマリノスですが、ここで鹿島の選手交代。(遠藤康→土居・アラーノ→白崎)
既に投入されていた永木とともに、前年の主力選手で試合を閉めに掛かります。
その後は「マリノスがポゼッション力を高めて攻め込む→惜しい所まで行くがシュート出来ず→鹿島がロングパス攻勢でカウンター」というのが主な流れに。
バイタルエリア付近でレオ・シルバの守備力が光るシーンが目立ちます。

それが固定されつつあった37分、マリノスに痛恨のミスが。
最終ラインで畠中→伊藤槙へのパスが緩くなり、間に割り込んだ白崎がダイレクトでループシュート。
ボールはGK梶川の頭を超えてゴールに吸い込まれ、再び2点差に。

その直後、マリノスはマルコスを諦めて水沼と交代。
一見スタメンは豪華だったマリノスですが、柱の助っ人が早々に交代した点も合わせて見ると、チアゴ・エジガル・マルコスの3人は無理をさせられないという状態になっているのでしょうか。
確かに徹底的に対策を取られる毎試合とあっては、消耗も早そうです。

その後はティーラトンが、中央に張り出してパスワークに邁進するというマルコス的な役割の一部を担うも、苦境は変えられず。
試合は4-2のまま、鹿島がとうとう初勝利に辿り着きました。

ようやく初日が出た鹿島ですが、その内容は「監督が理想を捨てた」というものであり、今後どうなっていくかはまだ不透明です。
ただ、鹿島にとっては「勝つためのサッカー」を思い出すような試合だったのは確か。
この日までは「理想と現実の挟間で……」どころか、現実を忘れていないかという立ち振る舞いに終始していただけに、勝利によりようやくスタートラインに立てたと思います。


DAZN観戦 2020年J2リーグ第6節 ジェフユナイテッド千葉vs東京ヴェルディ

2020-07-20 18:17:28 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の千葉の記事はこちら(2節・大宮戦)
※前回のヴェルディの記事はこちら(1節・徳島戦)

開幕節から未勝利が続いていたヴェルディですが、前節ようやく初勝利。(甲府戦・4-2)
ポゼッションを重視するスタイルだけに、ここまで勝てないor得点出来ない試合が続くと、あっという間に批判の的になってしまうだけに大きな1勝だったでしょう。

自分達のサッカーを取るか、勝利という結果を取るかを天秤にかけなければならないのがプロという場の常。
ただし今季は降格制度が無くなったイレギュラーなリーグ戦となったため、無理に昇格を目指すのでなければ、極端な事を言えば前者に全振りのスタンスでも生き残れる。
永井秀樹監督の下、極端ともいえるポゼッションサッカーに邁進している現在のヴェルディがそんな腹積もりなのかは不明ですが、勝ち負け以外の何かをひたすら追求しているようにも見えます。

ただし以前にも書いたように、このパスサッカー・ポゼッションサッカーは、言うなればヴェルディ自身の伝統でもある訳で。
Jリーグ発足以前から、JSLリーグ時代に「伝統」のサッカーを貫き通す、当時の日本サッカーのレベルでは異端の存在かつ結果を出してきた歴史を持つヴェルディ(旧・読売クラブ)。

そんな訳で、ポゼッションスタイルだけでは「=永井氏のサッカー」とは言えず、新たな色を植え付ける必要がある。
それが現在見られている可変システムで、攻撃時3-4-3・守備時4-4-2(4-3-3?)という流れの中での変更に、永井色を見出しつつあるのでしょう。

この日の相手の千葉は、正反対といってもいい守備型のチーム。
それをどう崩していくかに注目が集まるカードとなりました。

試合が始まると、予想通りにヴェルディ側がボールを支配し、パスワークで相手守備を翻弄。
サイドから攻撃を仕掛けても、無理にクロスを上げるという展開にはせず、あくまで守備の崩れを狙っての攻撃。
前半4分、平の右へのサイドチェンジを小池が受け、藤本とワンツーで前進。
奥に進んだ所を千葉・船山に倒されて反則・フリーキックとなり、キッカー藤本のクロスに若狭がニアサイドで合わせるも枠を捉えられず。
11分には藤田譲瑠チマの縦パスを受けた端戸が千葉・高橋壱晟に倒されて反則、再びFKを得ます。
今度は中央からで、井出が蹴ると見せかけて空振り、そして藤本が直接グラウンダーで狙いましたがゴールポストを直撃。
GK新井章太は一歩も動けずとフェイントが決まったと思われる絵図だっただけに、決めたかった所でしょう。

ともかく、ショートパス攻勢だけでなく、サイドチェンジや楔のパスも交えて攻撃を展開していくヴェルディ。
千葉の4-4-2の守備ブロックを積極的に崩さんという意識は明らかで、そしてそれが千葉側の反則の増大に繋がっていきました。
まあFKで好機を掴んだのは立ち上がりのみでしたが。

しかし32分、千葉の反則が決定機に。
コーナーキックからのクロスがGK新井章太に跳ね返されての二次攻撃、拾った藤本から右サイドに渡り、再び井上がクロス。
これに合わせにいった平が千葉・田坂の足に引っかかり倒れると、審判の笛が鳴りPKに。
千葉サイドからすれば納得しがたいような与PKでしたが、これをキッカー・端戸がゴール左に決めてヴェルディが先制します。

追う展開になった千葉、こうなると今季は苦しい。
過去5試合はいずれも完封勝ち・完封負けであり、先制すれば勝利・されれば敗戦とハッキリした戦績です。
それでも逆転負けが多かった前年よりは改善しているといえますが。

カッチリと型に嵌ったチーム、そんな印象である現状の千葉ですが、そうしたチーム作りは今季から監督の座に就いた尹晶煥(ユンジョンファン)氏の十八番。
またコンディション重視の側面も見せ、前節は過密日程を考慮し、GK以外「全とっかえ」のターンオーバーを千葉で初めて披露します。
セレッソ時代にはACLの予選でこうした起用を見せ、それがACL軽視という物議を醸し出したりもしましたが、中2・3日の試合が続く日程ではこの姿勢が重要なのも確かです。

ただしこうした起用法を連発すれば、サブ組で行われるサッカーが全く別なものになり易いという問題もあります。(ルヴァン杯の予選で良く見られる光景)
幸いにも前節・金沢戦は櫻川ソロモンの初ゴールなどで快勝(2-0)、特に守備において零封したのは、守備重視のスタイルであるチームにとっては朗報でしょう。
そしてこの日に繋げたい所でしたが、ビハインドの展開に立たされどうなるか。

千葉は43分、右サイドで田坂がロングパス、これを川又が落として米倉が拾い奥へ進入。
米倉から低いクロスが上がり、山下敬大がスルーしたボールを船山がシュートするも、ブロックに遭いゴールならず。
反撃に出たい所でしたが、結局チャンスはこのシーンぐらいで、0-1のまま前半終了。

逆にリードしたまま前半を終えたヴェルディですが、後半頭に早くも動きます。
小池→佐藤優平・奈良輪→福村へと交代を敢行。
佐藤優平はこの日初のベンチスタートとなっており、反対に小池はリーグ再開後45分しか出てない試合が目立つなど、コンディション重視の交代が見て取れます。

リードされた千葉は、後半前掛かりになりプレス。
前からボールを奪わんと仕掛けますが、それでもヴェルディの支配力の前にそれが実る事は殆ど無く。
逆にヴェルディにチャンスを量産されるという、前回取り上げた大宮戦でも見られた展開になっていきます。

後半8分には再び直接フリーキックを与え、キッカー佐藤優平が角度的に厳しい場所(左サイド・エリア角すぐ脇)ながら直接狙いますが、惜しくもバーを叩きます。
10分には左→中→右への展開の後中央で細かいパス回し。
チマからパスを受けた佐藤優平がエリア内に短いスルーパス、これに端戸が抜け出しますが、GK新井章が飛び出してブロック。
こぼれ球を繋ごうとする千葉から佐藤優平がカットし、井上がミドルシュート。(GK新井章キャッチ)
その後も佐藤優平や井出がミドルシュートを狙うなど、目立つのはヴェルディの攻撃ばかりに。
千葉はロングパスで打開を試みるも、シュートまで繋がりません。

飲水タイムを挟み、27分にGK新井章の左サイドへのロングフィードが、山下敬ヘッド→船山収める→為田(川又と交代で出場)クロスもブロックと繋がりスローイン。
これを増嶋がロングスロー(この日は前半早々からロングスローを見せていた)、これが低い弾道でニアサイドを突くと、米倉が触って中央へ。
山下敬が落としたボールを船山がシュートし、GKマテウスがセーブするも、山下敬が詰めて蹴り込みゴール。
チームにとって今季初の同点ゴールはロングスローからという泥臭いものとなりました。

既に4枚交代していたヴェルディ(17分井上→森田・25分井出→山下諒也)、これで苦しくなったかと思いきや、その後も気丈に攻撃を仕掛けます。
31分には相手CKからのカウンター、山下諒がドリブルで一気にエリア内まで持ち込むと、さらに奥に進むと見せつつヒールパス。
これに藤本が走り込んでシュートするも、GK新井章がキャッチ。
カウンターで千葉ゴールを脅かすと、33分でした。
中央のパス回しで下がり目で受けた端戸から、チマ→福村と左に展開すると、福村はアーリークロスを選択。
すると落下点に走り込んだ端戸がヘディングシュート、これがループの軌道でGK新井章の頭上を越え、ゴール内に落ちる美しいゴール。
ポストワークから上がってヘッダーという、CFの仕事を綺麗にこなした端戸の勝ち越し点となりました。

再び勝ち越されてしまった千葉、前節結果を出した櫻川を36分に投入。(船山と交代)
早速櫻川がドリブルを見せ、こぼされたものの見木(高橋壱と交代で出場)が左サイドへ繋ぎ、ボール回しの後再び受けた見木がエリア手前左から巻くシュート。(ゴール右に外れる)
一つ攻撃が繋がり、反撃ムードが漂います。

しかしビハインドはやはり重く。
42分、右サイドからの田坂のクロスに櫻川がヘディングシュートを叩きつけるも枠外に。
43分は田口が左へ長いパスを出してから自身も前進、為田のクロスをバイシクルでシュートしたもののこれも枠外。
結局1-2のまま試合終了と、1点は挙げたもののまたもや先制された試合で敗戦となりました。

一方のヴェルディは連勝。
前節は相手の甲府がメンバーを落としてきたうえフォーメーションを弄ってきたので、好材料になる内容だったかどうか疑問符が付いていましたが、見事に好調ぶりを繋げました。
この日は相手の堅守に苦しむ事も少なく、シュート数でも上回るなど、内容面でも良化の兆しが窺えたヴェルディ。
開幕節の閉塞感は振り払えたでしょうか。


DAZN観戦 2020年J2リーグ第5節 ギラヴァンツ北九州vs京都サンガFC

2020-07-18 17:03:07 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の北九州の記事はこちら(1節・福岡戦)

「近隣同士の試合を優先」という変則日程が組まれている序盤戦。
しかしこと京都の場合は、近畿地方に他のJ2クラブが無いのが祟り、他地方のクラブとの戦いをこなしています。
そしてこの日は北九州へ遠征。

その北九州、J2に昇格したての立場ですが、ここまで2勝2敗のイーブン。
連敗スタートの後3・4節と連勝、しかも2戦で6得点と攻撃力が嵌っての快勝と、J3上がりのチームとは微塵も感じさせない結果でした。
攻撃の組み立てさえ通用すれば、前年(J3で)7得点以上を挙げた池元・町野(故障離脱中?)・高橋大悟・ディサロ燦シルヴァーノと点を獲れる選手が揃って居るため、これぐらいの成果を挙げるのは当然の事なのかもしれません。

中3日での試合ながら、スタメンは前節から全く弄らず挑んだのも自信の表われでしょう。
そして個々の能力が高いメンバーの京都相手にも怯む事無く、序盤から主導権を支配していきます。
前半6分、センターバック・岡村が右→左へのサイドチェンジのパス、これを受けた左サイドバックの永田が池元とワンツーで前進し左奥からクロス。
これは誰にも合わずもエリア右脇で右サイドバック・福森が拾い、奥に切り込んだ後折り返し、池元がシュート。
ブロックに阻まれた後も高橋大が拾い、最後は加藤のミドルシュートが火を吹くもGK若原がセーブ。
何人もがアタッキングサイドでのプレーに加わる分厚い攻撃を見せると、続く8分はGK若原のキックを池元がカットし、拾った椿がシュート。
GK若原がキャッチする所謂「自作自演」の形で防いだ京都ですが、試合のペースが北九州サイドに傾いているのは明白に見えたワンプレーでした。

北九州の攻撃としては、長期中断を挟んでも、以前取り上げた開幕節・福岡戦と大きくは変わらず。
ボランチの加藤がCBの左側に落ち、村松・岡村・加藤の3人の最終ラインから攻撃を作っていくビルドアップ。
そしてSBがサイドハーフよりも前目に上がるおなじみの形を軸に、いきなりサイドにロングパスを供給したり、降りてきたFW池元に預けてからサイドに展開したりと多彩な攻撃。

対する京都は、過密日程を考慮してスタメンを4人入れ替え。
とりわけ後方から攻撃の形を作るベテラン森脇がベンチスタートなのが響いてか、ボールポゼッションで後れを取るのを黙って見ているしかない展開に。
9分にレナン・モッタ、ジュニーニョ、ピーター・ウタカの助っ人3人で左サイドを突破し、ウタカのクロスを野田がシュート(枠外)したのが「最初で最後」といった攻め。
以降は30分過ぎまで好機は回って来ませんでした。

逆に北九州は23分の、椿の左サイドからカットインしてのシュート(GK若原キャッチ)。
29分の、クロスがブロックされた後鈴木が拾って左サイドからのシュート(ゴール上に外れる)と、何度も京都ゴールを脅かしていきます。
しかし攻撃疲れが見えて来た前半も後半、33分に京都のカウンター攻撃。
左サイドで受けたレナンがドリブルで中央に切り込み、エリア手前で相手DFをかわしたのちにシュートしますが、ゴール左に外れます。

すると京都もやっと形を作れるようになり、終盤は攻め合いに。
41分は北九州のコーナーキックから、クリアされた後右サイドから國分がクロスを上げ、池元が擦らすヘディングシュートを撃つも枠を捉えられず。
43分は京都の攻撃、庄司が右奥へロングパスを出すと、ウタカが流れてキープした後中へパス。
そして外から走り込んできた石櫃が、斜めから果敢にシュート(枠外)。
45分は北九州のショートパス攻勢、左サイドから中→右へと展開され、高橋大・鈴木・福森のパス交換の後に國分がクロス。
これをファーサイドで永田がボレーシュートにいくも、惜しくもオフサイド。
前半ラストは京都のフリーキックからで、かなり手前からながらもキッカー庄司はエリア内にボールを上げ、これをウタカがヘディングシュート。(枠外)
最後の方はどちらに転んでも可笑しくない様相となり、前半終了。

後半開始の前に、京都サイドは野田→荒木に交代を敢行。
同ポジション同士の交代となり、磐田時代にはほとんど見られなかったFWでのプレーとなった荒木。
後半10分でのプレーは、荒木が右サイドで流れて受けて中央へパス。
その後ウタカがシュート体勢に入る(撃てず)といった具合に、ウタカが左右に流れる事が多かった前半の京都の攻撃を正すための交代だったでしょうか。

しかし後半は、前半立ち上がりの焼き直しの展開となり再び北九州ペース。
1分にいきなり加藤のエリア内でシュートを撃つ(ブロックに阻まれる)シーンを作れば、7分には加藤が再びエリア手前左でシュート、ブロックされた後右に展開されて福森がサイドからシュート。(ゴール右上に外れる)
京都は冷や汗ものの展開で、CBのヨルディ・バイスも身体を張って守る場面が目立ちます。

16分の椿のシュート(ゴール左に外れる)を最後に北九州のペースも落ち、京都の攻撃回数が増える反面、シュートが生まれない試合展開に。
さすがに同一スタメンでの中3日の試合はコンディション的にきつかったか。
失速する北九州を見た京都サイド、20分に2枚替え(本多→森脇・レナン→福岡に交代)と積極的に動きます。
北九州も22分に池元→新垣へと交代しますが、その後京都にパスワークを遮断されるシーンが続出。
そしてカウンターから京都のチャンスが生まれ、24分には左サイドでジュニーニョ・荒木がボールを運び、ジュニーニョが中へパス。
そして走り込んでエリア手前で福岡が受け、エリア内に入りシュートするも北九州・村松がブロックして防御。
直後のコーナーキックでも、庄司クロス→ニアサイドで安藤ダイビングヘッド(枠外)とシュートに繋げます。
そして飲水タイムを挟み、27分に京都は4人目の交代。(ジュニーニョ→飯田)

30分には再び京都のチャンス、森脇(右CBに入り、安藤が左CBへシフト)のロングパスが荒木に渡り、彼から受けたウタカがドリブルで抜け出し。
そしてエリア内からGKと一対一でシュートするも、GK永井が足でセーブして間一髪。
その後も京都の二次攻撃となり、パス回しののちエリア内でこぼれ球となり、拾った飯田がシュートするも再びGK永井がキャッチ。
39分に石櫃→中川への交代を挟んだ40分にも、コーナーキックからの二次攻撃で森脇のパンチの利いたミドルシュートがゴール上に外れる場面を作った京都。
対する北九州は攻め込むも、シュートまで行けずに終わる場面が多く。

京都の我慢勝ちか、という矢先に起こったのがアクシデント。
先程の5人目の交代を行った後に、森脇が足を痛めてプレー続行不能となってしまい、ピッチ外に出て以降は10人で戦う破目に。
そして当然の如く、数的有利になった北九州が再び蘇る展開になり、以降はさながらハーフコートマッチの様相に。

京都陣内で圧倒的にボールを保持して攻め込む北九州と、これで割り切ったか、ウタカ1人を最前線に残しての徹底守備で凌ぐ京都。
交代で入ったディサロや佐藤亮(2試合連続ゴール中)も、こうして中央でしっかり固められては持ち味を出すには至りません。
アディショナルタイム、相手のクリアボールを拾った佐藤亮がドリブルで切り込み、エリア内に入ってシュートした場面(ブロックに阻まれる)が唯一だったでしょうか。
結局スコアレスのまま試合は動かず、引き分けで終了となりました。

この日はゴールこそ生まれなかったものの、終始質の高いボールポゼッションを魅せた北九州。
監督としてそんな攻撃を落とし込んでいるのは「昇格請負人」こと小林伸二氏なのは周知の通りですが、ここまで強烈なポゼッションサッカー(3節は同じスタイルの琉球に圧勝)を敢行していたとは予想外でした。

どちらかというと守備構築に長けていた、というのが自分のイメージ。
前回監督を務めていたのは清水(2016~2017年)で、初めてJ2に沈んだ清水を建て直し見事にJ1復帰させた、というのがその時の評価。
しかしJ1で戦った2017年は、強豪相手になると全く歯が立たず、常に押し込まれての戦いを強いられて成績的にも残留争いの渦中に。
辛うじて最終節で残留を確定させる(14位)も、傍らから見ても上がり目が感じられないという風に映っていました。(幸い?、その後の清水もそんな感じですが)

この内容を踏まえたのか、現在は反対のサッカーを北九州に落とし込み、そして(今の所は)結果を出す事に成功している。
カテゴリの違いという要素はあれど、正直清水時代でもう「耐用年数切れかな……」と思っていただけに、この変貌を結果に繋げているのは見事としか言い様がありません。
既に監督業も大ベテランの域が見えつつある小林氏、彼に率いられる北九州の今季の着地点はどの位置になるでしょうか。