※前回の福岡の記事はこちら(1節・北九州戦)
前年の後半から、ボールポゼッションを下に主体的な攻撃を重視するサッカーを目指している長崎。
この日もそれは健在で、後半ビハインドの時間が長かった事もあり、支配率は67%と福岡を圧倒。
メンバー・フォーメーションは結構流動的。
3-4-2-1で開幕戦に挑みましたが、次の2節は4か月中断期間が出来た事もあり、スタメンは変更。(カイオ・セザール→加藤、米田→毎熊、吉岡→名倉)
それでも結果は連勝と付いてきましたが、この日はさらにフォーメーションまで変更して挑みました。
4-4-2(4-2-3-1?)へとシフトし、それに連れてかDFフレイレがスタメン落ち、FWも富樫→畑へと入れ替え。
しかし最大の変化は、10番を背負う新助っ人ルアンが初スタメンとなった事。
こうした入れ替えは競争意識の向上・過密日程対策となる反面、サッカーの主体性の欠如に繋がりかねないものですが、そこは普段の練習での落とし込みで乗り切る。
実績ある手倉森誠監督の舵取りも注目の的となるでしょう。
九州ダービー(バトルオブ九州)のカードの一つとなったこの試合、長崎は亀川・加藤と元福岡の選手がスタメン出場。
立ち上がりからボール支配を重視しての攻めを繰り広げる長崎。
4バックに変わったといっても、ビルドアップは「丁の字型」で行い、最終ラインは3枚。
足りない一つ前の枚数は、ルアンが積極的に降りて来る事でカバーするため、変化したという印象は攻撃面ではそこまで見受けられず。
ボールを握りつつも、二見・秋野のロングパスも交えつつの攻撃でゴール前に迫らんとする長崎。
それでもシュートは14分の1本のみで、ルアンが右に展開してからの毎熊のクロスが跳ね返され、秋野が拾ってドリブル。
エリア手前のシュートレンジまで進むも撃てず、こぼれ球を拾った名倉がシュートしますがブロック。
中々フィニッシュの場面を作れないでいると、15分過ぎ頃から福岡のターンに移行します。
17分、右サイドのスローインを受けた遠野が右奥ライン際でキープしてからパス、走り込んで受けた福満のクロスをフアンマがボレーシュート。(枠外)
反撃の狼煙を上げた福岡、20分には自陣左サイドから鈴木がロングパス、エリア内左で遠野が収めて一気にチャンスに。
遠野はキープしてから戻し、菊池→福満と渡って福満がエリア内左へ抜け出し、折り返すもブロックされ繋がらず。
飲水タイムの後の28分、中盤やや左からのフリーキックで、キッカー菊池のクロスはエリア内右へ。
篠原が折り返したボールはエリアの外へこぼれ、これに走り込んだ菊池が豪快にミドルシュートを放つもGK高木和がセーブし、長崎サイドは冷や汗。
その後も30分・31分と遠野がシュートを重ね(いずれもロングパスからの攻撃)、ポゼッションを高める長崎と、シュート数を増やす福岡の対決様相に。
それでもシュートを撃てていない長崎が、今一つ流れが来ていないと感じる試合展開。
ようやくその流れが来たかのような攻撃は45分、後方でのパス回しから加藤が縦パスを打ち込み、受けた澤田は左へ展開。
左サイドバックの亀川が受けてクロスが上がると、叩きつけるヘディングシュートを放ったのは右SBの毎熊。
これはバウンドした分惜しくもゴール上に外れますが、SBが高い位置で躍動する攻撃が終了間際に見られた長崎、期待感を持って前半を終えます。
しかしそうは問屋が卸さないのがスポーツの世界。
後半立ち上がりの2分、上島が浮き球を前線へヘディングで送っての福岡の攻撃。
これをフアンマが落とし、受けた遠野がDFラインの裏へ抜け出す絶好機に、たまらず長崎・角田がエリアすぐ手前で倒してしまい反則。
決定機阻止とも採られかねない場面で、角田に出たカードは黄色止まりと福岡サイドは不満げでしたが、気を取り直しての直接フリーキック。
キッカー・鈴木の左足でのシュートは美しい軌道で壁を越え、ゴール左に突き刺さる先制弾となりました。
これでリードを奪った福岡でしたが、以降は長崎に対して受けに回ってしまった感があり。
チャンスは作るものの、その多くはGKセランテスのロングフィード→フアンマの落としからという単純明快なもので、一層ポゼッションの長崎を際立たせてしまった。
それが敗戦の遠因だったような気がします。
追う展開となった長崎、後半6分には右サイド奥でルアン・畑・毎熊がパスを回した後、グラウンダーでクロスを上げたのはルアン。
これをファーで亀川がシュートするも枠を捉えられず。
9分には早くも切り札であるビクトル・イバルボを投入します。(畑と交代)
故障が無ければJ1でも通用するポテンシャルを持つイバルボ、その存在は他選手をも生かします。
前節(北九州戦)でも、途中出場同士となったルアンの来日初ゴールを見事に演出する結果を叩き出したイバルボ。
そしてこの日も、同じく途中出場した選手が輝きを放つ事となります。
時折福岡のカウンターを浴びつつも、同点に追い付かんと攻勢を掛ける長崎。(17分のコーナーキックからの直接カウンター→遠野シュートは危なかったが)
20分にはFWの富樫を投入(澤田と交代)。
これまではルアンが落ちたり流れたりで、登録上は4-4-2ながらも1トップに近いフォーメーションになっていましたが、ここからはイバルボ・富樫の解り易い2トップへの形に移行します。
直後の21分、イバルボが右サイドでパワフルなボールキープを見せてクロス。
クリアされた後、秋野が拾って遠目からミドルシュートを放ったもののGKセランテスがキャッチ。
得点の匂いはし出しましたが、対する福岡も、GKセランテスのフィードが悉くチャンスに繋がり長崎ゴールを脅かします。
23分遠野のエリア内進入で得たCKで、サロモンソンのクロスに上島がヘディングシュートを放つも、ゴール目の前でブロックに遭い追加点とはならず。
そんな流れの中福岡サイドも動き、菊池→石津に交代。(25分)
攻撃力を一層高めるような交代(そもそも単純に同ポジションでの交代な気もしますが)でしたが、皮肉にもここから福岡の好機は止まり、長崎の一方的な展開に。
26分は右サイドで毎熊のスルーパスから名倉が突破し、エリア内に切り込んでシュート。
27分は左サイドから、亀川のクロスをルアンがバックヘッドでシュートするも枠外に。
飲水タイムを挟み、その後長崎はルアン・加藤→吉岡・カイオへ交代(32分)、福岡は福満・遠野→城後・木戸へ交代(33分)と2枚替えの応酬。
そして直後の35分、長崎の攻勢が報われる時が。
秋野のロングパスをエリア内で収めたイバルボ、巧みにヒールパスで横に出し、フリーの富樫がシュート。
とうとうゴールネットを揺らして同点に。
こうなるとゲームは完全に長崎のもの。
高い技術で富樫のゴールを呼び込む事に成功したイバルボ、その後はポストワークも冴え渡り、ボールポゼッションに貢献していきます。
そして毎熊のミドルシュートあり、富樫の意表を突くロングシュートあり、カイオのドリブルシュートありと、最後の攻勢を仕掛ける長崎。
アディショナルタイムに突入し、文字通り勝ち越し点が生まれるかは時間の問題となってきたゲーム展開。
そしてAT4分、今度も決めたのはイバルボのパスを受けた富樫でした。
左サイドから攻撃をかけるも一旦中央へ戻し、秋野の縦パスから名倉→カイオ→富樫→イバルボと繋がり、最後はイバルボのエリア内右へのリターンに走り込んだ富樫のシュート。
GKセランテスが横っ飛びで触れるも及ばずの逆転ゴール。
劇的な幕切れ(まだ終わっていないのだが)に大興奮の長崎サイド、リザーブもスタッフもソーシャルディスタンスを忘れての歓喜の輪を作っていたのはご愛敬でしょう。
前年は町田のストライカーとして期待を一身に背負ったものの、思うような結果を残せず今季再びの移籍となった富樫。
途中出場で見事にジョーカーの役割を果たし、これを飛躍の足掛かりとすることが出来るでしょうか。
その後再びイバルボが強靭かつ華麗なボールキープを見せ、時間を使いにかかる長崎。
残り少ない時間の中、最後の攻撃権をつかみ取った福岡。
フアンマのポストプレイから右サイドで形を作り、中央で石津がエリア内へ叩き好機到来も、木戸のスライディングシュートは浮いてしまい万事休す。
試合終了の笛が鳴り響き、長崎は無傷の3連勝となりました。
ガラリと試合の様相が変わったのは福岡サイドの菊池→石津への交代からでしたが、この日は長谷部茂利監督の秘蔵っ子ともいうべき前がベンチ外。(詳細は不明)
それ故交代カードの難しさが色濃く表れたようで、実際に福岡は交代枠を残しての敗戦と相成ってしまいました。