ぶらりドリブルの旅

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DAZN観戦 2020年J1リーグ第5節 鹿島アントラーズvs横浜F・マリノス

2020-07-21 17:10:41 | サッカー視聴記(2020年以前)

前年の覇者であるマリノス。
チームの伝統であった「堅守からのカウンター」というサッカーをかなぐり捨て、徹底したハイラインによる攻撃サッカーを展開しての優勝となり、観衆も魅了。
その波及効果か、今季に入り3トップのフォーメーションに移行・模索するクラブが後を絶ちません。(川崎・FC東京・清水・鳥栖・仙台)

3トップの布陣を敷くメリットとしては、戦略的な段階で相手の最終ラインに迷いを持たせられる事。
人に付く(但しマンマークでは無い)事が前提であるディフェンス、3人に対して3人をチェックさせると、4バックのチームは必然的に一人余る事となってしまいます。
この浮いた一人(大抵はセンターバックの片割れであろう)は、相手の2列目の選手を見るのか、ないしは誰にも付けずリベロ的な存在となるのかで迷わされる事でしょう。
相手CFにはいっそ誰も付けず、CBだけゾーンで守るという手もありますが。

対峙するチームが3バックだとしても、左右のCBをウイングに付けてしまうと、中央が薄くなりそれだけでリスクを抱えてしまう。
かといってウイングバックに付かせると中央に2人も余ってしまい……。

この3トップを押し付けつつ、ポゼッションを支配する事で相手守備のスペースを突き翻弄する攻撃スタイル。
そんな美しいともいえるサッカーで覇権を握った前年から一転、今季は立ち上がり躓く事となってしまいます。
やはりどのクラブも、優勝チームへの敬意ともいえる、最大級の研究をして対策を立てるのはプロサッカーの常。
この日もその術中に嵌り、守備における弱点を何度も突かれ苦闘する事となります。

濃い霧の中でキックオフとなったカシマサッカースタジアム。
マリノスはトップ下であるマルコス・ジュニオールがキーマンの一人なのは周知の通りで、鹿島は徹底して彼を潰しにかからんというディフェンスを敢行。
立ち上がりに何度もプレスを受け、反則で止められるマルコス。

そして前半4分、リズムを崩す事に成功した鹿島が敵陣で奪ってショートカウンター。
三竿のボール奪取から、エヴェラウドが左サイドをドリブルで突き進んでクロス。
これをファーサイドで待ち構えていたのは、今季初スタメンの上田。
トラップして浮いたボールをすかさずボレーシュートし、電光石火の先制点をたたき込みました。

激しいプレスで立ち上がりマリノスに主導権を与えなかった鹿島。
やはりこの日スタメン復帰したレオ・シルバの、流石のボランチぶり。
サイドに配置転換されたエヴェラウド、ファン・アラーノが何度もボールカットを魅せていたのも、彼の存在でタスクが整理された賜物でしょうか。

しかし反撃に出るマリノス。
12分、扇原が左サイドへ展開、エリキに渡ったボールはティーラトン→エジガル・ジュニオと渡って中央へ。
そしてマルコス→松原→エジガル→仲川と鮮やかに右へパスが回され、仲川がエリア内右からグラウンダーで中に入れると、そこには走り込んだマルコスが。
既に彼に立ちはだかる障害は無く、ボールを蹴り入れて同点に。

その後もテンポ良いパス回しで流れを掴むマリノス。
15分にもエリアに近い位置で右→中央→左へとサイドが変わり、マルコスのパスを受けたエリキがエリア内左でボールキープ。
一旦パスを出すもこぼれ、そのボールをエリキが自らダイレクトシュートするも、中に居たマルコスに当たってしまいゴールならず。

対する鹿島、立ち上がりでショートカウンターが一つの狙いとは解りましたが、もう一つが相手ディフェンスの裏狙い。
18分、レオ・シルバのロングパスがDFに当たりつつも遠藤康に渡り、彼からパスを貰ったアラーノがシュート。(右に外れる)
マリノスのハイラインを突く、これも解り易い攻撃。
しかしこの2つを徹底する事で、支配率では後塵を許す展開の中、互角の試合内容に持ち込みました。

開幕4連敗・得点僅か1(しかもオウンゴール)という常勝軍団らしからぬ立ち上がりで、周囲の蜂の巣を突いたような騒ぎ(?)を起こしてしまった鹿島。
開幕節・広島戦(0-3)で、立ち上がり決定的なシュートが連続でポスト直撃というシーンが見られたのは、この苦難のシーズンの序曲であったのか。
今季から監督となったアントニオ・カルロス・ザーゴ氏も、早くも瀬戸際に追い込まれたという印象で、この日は強敵・マリノス相手に方針転換。

五輪世代のFW・上田を初めてスタメンで起用した他、途中出場で良いパフォーマンスを見せていた遠藤康も初スタメン。
この2人がトップの位置で、サイドハーフには新助っ人のエヴェラウド・アラーノの2人で固める。
起用法で変化を見せると、実際のサッカーも、これまでの理想としたパスサッカーから一転。
対マリノス用というだけに留まる可能性も否定できませんが、相手の嫌がる事を徹底的に行う姿に、「強い鹿島」が戻って来たような印象を受けました。

果たしてその姿のとおり、前半の終盤は鹿島が何度も決定機。
36分、クリアボールを受けたアラーノがすかさず裏へロングパス、遠藤康がオフサイドポジションに居たのを利用した上田が抜け出してGKと一対一に。
エリア内に入った上田はドリブルを選択したものの、ここはGK梶川が上田の動きを見切り抑えます。
42分は中盤で三竿がボール奪取し、右に展開しての攻撃から上田がクロス。
これを遠藤康がボレーシュートを放ちますが、またもGK梶川がセーブ。
アディショナルタイムにもアラーノのボール奪取から、右サイドをアラーノがドリブルで疾走。
そしてエリア内に入れると、上田がダイレクトでシュートしますが僅かにゴールの左へ。
得点チャンスは作ったものの、勝ち越す事は出来ず前半終了。

ますます霧が濃くなってきた後半、それは力がありながらもここまで勝ち点ゼロという現実を覆わんとするものか。
その霧を利用したか、後半のキックオフは何と遠藤康が直接シュートを狙います。(枠外)
いきなりの奇襲で精神的にも有利になったか、攻勢に出る鹿島。
後半6分、アラーノの右サイドへのスルーパスに上田が抜け出し、エリア内右に進入してシュート。(GK梶川セーブ)
10分、またもスルーパス(上田)からエヴェラウドが左サイドに抜け出し、カットインからシュート。(ゴール右に外れる)
対するマリノスは、疲労面を考慮してか後半前にチアゴ・マルチンス→伊藤槙人、エジガル→遠藤渓太へと交代。
さらに6分にエリキ→オナイウ阿道へ交代と、大幅にメンバーを変えましたが、それが仇となったような形勢逆転でした。

そして13分、鹿島に待望の瞬間が。
レオ・シルバがセンターサークルから右へ長いグラウンダーのパスを送り、広瀬がこれをダイレクトでクロス。
グラウンダーのボールを、走り込んだ上田が合わせて勝ち越しに成功。
右アウトサイドという難しいシュートで、GK梶川の股を抜くというビジュアル的にも映えるゴールでした。

その後は別の意味で「鹿島らしさ」が戻ったようなシーンも。
15分には敵陣エリア手前で、相手のパスミスを上田が拾いにいき、カバーに入った扇原の手に当たってハンド。
これに対して「決定機阻止では無いか?」として主審に対して猛抗議を行う鹿島の選手達。
しかしこのシーンでカードは出ず。(その後のフリーキックの好機はモノに出来ず)
その他、序盤からの激しいチャージのし合いや、スローインの判定に線審に抗議するシーンが目立っていたこの試合。
正直良く警告無しで終えたと思います。

勝ち越しに成功した鹿島、さらに良い流れを掴みます。
22分再び中盤でのボール奪取から永木(三竿と交代で出場)が縦パス、遠藤康が右へ展開し、アラーノのエリア内右からのグラウンダーのボールにエヴェラウドが合わせてゴール。
得点力不足の一因と揶揄されてきたエヴェラウド、ようやくの初ゴールで雄たけびを挙げる事に。

飲水タイムを挟み、雨が激しくなる代わりに霧が止みつつあったピッチ上。
ようやく鹿島が、重いムードの振り払いに成功したという表れか。
しかし25分、マリノスも意地を見せて反撃。
左からのコーナーキック、ショートコーナーからマルコスが左斜めという位置から巻くシュートを放つと、これが芸術的にサイドネットに突き刺さり1点差に。

これでムードを変えたかったマリノスですが、ここで鹿島の選手交代。(遠藤康→土居・アラーノ→白崎)
既に投入されていた永木とともに、前年の主力選手で試合を閉めに掛かります。
その後は「マリノスがポゼッション力を高めて攻め込む→惜しい所まで行くがシュート出来ず→鹿島がロングパス攻勢でカウンター」というのが主な流れに。
バイタルエリア付近でレオ・シルバの守備力が光るシーンが目立ちます。

それが固定されつつあった37分、マリノスに痛恨のミスが。
最終ラインで畠中→伊藤槙へのパスが緩くなり、間に割り込んだ白崎がダイレクトでループシュート。
ボールはGK梶川の頭を超えてゴールに吸い込まれ、再び2点差に。

その直後、マリノスはマルコスを諦めて水沼と交代。
一見スタメンは豪華だったマリノスですが、柱の助っ人が早々に交代した点も合わせて見ると、チアゴ・エジガル・マルコスの3人は無理をさせられないという状態になっているのでしょうか。
確かに徹底的に対策を取られる毎試合とあっては、消耗も早そうです。

その後はティーラトンが、中央に張り出してパスワークに邁進するというマルコス的な役割の一部を担うも、苦境は変えられず。
試合は4-2のまま、鹿島がとうとう初勝利に辿り着きました。

ようやく初日が出た鹿島ですが、その内容は「監督が理想を捨てた」というものであり、今後どうなっていくかはまだ不透明です。
ただ、鹿島にとっては「勝つためのサッカー」を思い出すような試合だったのは確か。
この日までは「理想と現実の挟間で……」どころか、現実を忘れていないかという立ち振る舞いに終始していただけに、勝利によりようやくスタートラインに立てたと思います。


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