<両軍スタメン>
- 松本のホームだが、↓とは逆のコートで前半スタート。
J1・J2に一月以上遅れながら、J3も今節が折り返し地点を迎え。
J2昇格が絶対条件、という意気込みで今期に臨んだ(と思われる)松本。
その意味では不本意という他無い前半の戦いの中、興味深いデータを参考に。(17節終了時点のもの)
【Jリーグ】今度はJ3の全20クラブの年間平均のアクチュアル・プレイング・タイム(APT)を計算してみた。表のとおり、1位は福島ユナイテッドで56分22秒。2位はテゲバジャーロ宮崎で55分20秒、3位はアスルクラロ沼津で53分55秒、4位はガイナーレ鳥取で53分05秒、5位はヴァンラーレ八戸で52分47秒となる。… pic.twitter.com/3uUVf5GQdT
— じじ(サッカーコラム J3 PLUS+) (@J3Plus) July 15, 2023
前回取り上げた沼津然り、昇格とは無縁のクラブほど戦術面の浸透が目に見えて判るサッカーを繰り広げる傾向があり。
逆に松本や愛媛など、昇格を目指すクラブは結果が最優先となり、その結果とにかく前に運んでセットプレー……というスタイルに陥り易い。
そんな事情が伺える、といった今季のJ3でしょうか。
その代表格である松本のこの日の相手は、APT上位である八戸と逆の傾向のクラブ。
一向に上向かない成績と、試合終盤の失点の増加を受け、J2・水戸からボランチの安永をレンタルで補強。
そして早速スタメンに起用してきました。
かくして中盤の底を固めた松本。
前半7分にその安永がパスカットからドリブルで持ち運んで左へ展開、下川が前進ののちクロス。(フィニッシュには繋がらず)
9分にも中盤で菊井が前澤に対し反則気味のアタックで奪い、拾った安永がドリブルからスルーパスを送るも、鈴木には繋がらず。
守備力と推進力双方が充填されたような戦いぶりを見せます。
かくして安定感を得た松本は、最終ラインからのビルドアップにも流動性が。
石崎信弘監督率いる八戸のプレッシングに対しても、臆する事無く繋いでいなし続け。
サイドに人数を集めた末のサイドチェンジが良く決まり、敵陣に進入しても相手のリトリートを受ければ戻して作り直し、再びプレスを引き込むという具合にボールを支配します。
八戸は姫野が最前線に加わり追い回すも、ボールを奪うどころか逆に縦へのパスを送る隙も生む事となり。
トップ下の菊井に縦パスを打ち込まれてアンカー相田の脇を突かれる事数多で、かくしてプレッシングは機能不全に陥ってしまいます。
当然ながら攻撃機会も少なく、初めての好機が11分の相田のロングスローによるものという有様。
そして迎えた19分、パスワークで敵陣へ進入した松本、一旦攻撃が途切れるもプレッシャーを掛けた結果稲積のパスミスを菊井が拾い。
そして中央からドリブルでペナルティアークまで進んで左へ横パス、エリア内で受けた滝がシュートを放ち、ゴールネットを揺らします。
流れ的に当然といった松本の先制点ですが、主体的な攻めを貫いた結果という事もありこれまでとは大分見違えたような印象を受けました。
松本の繋ぎに四苦八苦する八戸の対応は、スコアが動いた後も変わらず。
21分ここも菊井へ縦パスを通され、左ワイドに流れたのちグラウンダーでサイドチェンジと揺さぶる松本。
右から藤谷の中央へ向けたミドルパスはズレるも、バウンドしたボールを稲積がクリアミスしてしまい下川に拾われる始末。(その後下川→菊井へのスルーパスは繋がらず)
続く23分には八戸のプレッシングを受けながらも最終ラインで繋ぐ松本、いなしきったのちまたも縦パスを受けた菊井、そのまま裏へとロングパス。
左ポケットを突いて鈴木が走り込む絵図を生むと、前に出たGK谷口がエリアラインギリギリでパンチングでクリア、これが松本サイドのハンドの一斉アピールを呼ぶ事となってしまいました。(映像で見る限りでは辛うじてエリア内と思われる)
八戸がドタバタ感を醸しだしながら、飲水タイムが挟まれ。(24分)
巻き返したい八戸ですが、その攻撃は佐々木へのロングボール一辺倒という感じで、セカンドボールを繋げられず。
松本のようにショートパスでのビルドアップから運ぼうとしても、松本ディフェンスの寄せの前にダイレクトでの繋ぎを余儀なくされ、その結果精度を欠いて終わり。
プレッシングで相手を掻き回すはずが、逆に相手のプレッシングに難儀するという、苦境と言う他無い展開を強いられます。
相手にサッカーをさせない状態に持ち込み、後は追加点が欲しい松本。
32分にまた野々村の縦パスを菊井が受け、右足アウトで右サイドへスルーパス。
受けた國分龍が奥へ切り込んでマイナスのクロス、クリアされた所を安東が強烈なミドルシュートを放ちましたが左ゴールポスト直撃と逃してしまい。
34分には右スローインから、一転してラフな浮き球での繋ぎを経て中央へ送られ、こぼれた所を下川が拾いエリア内へ。
左ポケットで受けた鈴木がシュートを放つも、ゴール前で蓑田がヒールでブロックとこれも際どく防がれます。
次第にリトリートの色が強まる八戸、前澤がボランチの位置へと下がり3-4-2-1になったかのような布陣に。
それを受けても松本は攻め急ぐ事無く、サイドチェンジを多用して揺さぶる姿勢はこの日は一貫しており。
唯一危うかったのは故障という要素で、40分に安東がボールと無関係な所で佐藤と交錯して足を痛めてしまうシーンが生まれ。
頻繁に離脱を繰り返している安東故にヒヤリとさせたものの、何とか無事に済みプレーを続けます。
結局1-0のまま前半が終了。
勝利に向けて変化が必須な八戸は、ハーフタイムで國分将→山内へと交代。
これで前澤が右ウイングバックへ回る事となりました。
反撃の糸口を掴みたい八戸、後半3分に自陣でのボールカットからパスワークで繋ぎ。
松本の寄せに苦しみながらも何とか運んだ末に、左サイド手前から蓑田のクロスが上がると、ニアで佐々木がヘディングで合わせましたが枠外に。
以降も左右のセンターバックの上がりも加えながら、人数を掛けて前進するという意図が見えましたが、松本のプレッシャーに苦しむ様相は前半と変わらず。
攻めて来るならば、その裏を突けばいいと言わんばかりに、松本は10分に安東が左サイド裏へロングパス。
受けた下川がカットインを経て左ハーフレーンからミドルシュート、GK谷口のセーブに阻まれるも、パンチの利いたフィニッシュで脅かしを賭ける事に成功します。
八戸が13分に、反撃の橋頭堡として妹尾を投入(佐藤と交代)したのちも流れは変わらず。
続く14分、こぼれ球をまたも安東が浮き球を送ると、鈴木の胸での落としを受けた菊井が右ポケット奥へ切り込み。
そしてGK谷口の眼前に迫りシュートしましたが、蓑田の決死のブロックもありゴールバーを直撃と、松本の圧の前に際どい凌ぎを強いられる展開が続き。
盤石ながらも2点目が遠いといった松本。
その攻撃ペースが途切れると、22分にドイスボランチが相次いで黄色いカードを貰い。
安東が前澤へのアフターチャージで、安永が姫野のドリブルを倒した事で共に警告を受けてしまい。
そんな隙を突きたい八戸、23分に右サイドから細かい繋ぎを経て前進、佐々木のクロスがクリアされた所を姫野がミドルシュート。(枠外)
一本フィニッシュを放ったものの、それと同時に飲水タイムが挟まれた事で再度の巻き直しを強いられます。
ブレイクが明け、再び松本の攻撃を耐えながら……という展開を強いられる八戸。
28分に藤谷の縦突破も受けるなど、ここにきて個の力の違いに悩まされながらも何とかフィニッシュだけは撃たせず。
それでも依然として攻撃は良好な流れは掴めずと、データとは逆に「何でも良いから前進したい」「相手の流れを切りたい」サッカーを強いられているのは八戸という試合となりました。
それでも32分、近石のミドルパスがフリーの妹尾に収まるという意図的か偶然か不明ながらも絶好機が生まれ。
妹尾は中央をドリブルで進んだのちエリア内へラストパス、右で受けた佐々木がシュートするもGK村山がキャッチ。
これを盾として、何とか攻勢を掴みたいという八戸。
しかしその願いは、松本の無慈悲なカウンターで打ち砕かれる事に。
クリアボールを拾った菊井がそのまま鈴木に繋ぎ、前進する鈴木がディフェンスに遭いこぼれるも、稲積の対応ミスもあり拾い直してそのまま単独突破。
そしてエリア内へ進入して放たれたシュートがゴール右へと突き刺さります。
展開的にかなり遅いといった追加点ながら、貴重なゴールなのは変わらず。
この直前に交代準備していた松本、キックオフの前に藤谷・安東・國分龍→宮部・住田・渡邉へと3枚替えを敢行します。(菊井が右に回り、渡邉・鈴木の2トップの4-4-2に)
何とか反撃せんと、キックオフから攻撃を仕掛ける八戸ですが、やはり左手前からのクロスに終わり。(その直後に稲積・姫野→丹羽・宮本へと交代)
松本ディフェンスの前にどうしても突破を果たせない辺り、チームの力量差を痛感させる結果となります。
そして36分、ラフに蹴られたボールを常田が跳ね返し、これを鈴木がフリックすると渡邉に渡り。
八戸はトランジションの逆を突かれた格好で、山田が(鈴木のフリックを)不格好な空振りでクリア出来ずという絵図も生まれてしまい、そのまま渡邉にシュートを許すとゴールネットが揺れ。
これで勝負を決する3点目を挙げた松本。
その後38分に、クリアミスした山田が交代(加藤を投入、近石が中央に回る)となるなど、終盤で組織力の乱れも露わとなった八戸。
以降も攻撃権を支配する松本、何度もサイド奥へと切り込み、深い所まで運ぶ事で相手に攻撃もさせず。
(43分に安永・滝→喜山・榎本へと交代)
そして突入したアディショナルタイム。
左サイド奥に切り込んだ住田が、加藤のスライディングを受けて身体が派手に宙を舞った末に倒れ込んでしまい。
その後八戸サイドも佐々木が宮部に足を刈られ倒れ込むなど、身体が宙に浮く程のチャージが目立つ格好となりましたが、双方ともノーファールに。
試合が止まるシーンが目立ったものの、結局目安の5分を過ぎた辺りで試合終了の笛が鳴り響き。
前半戦の最後を3-0の快勝で締めた松本。
内容的にも申し分無いものであり、それだけにこれを切欠にブーストを掛けるのは昇格のために必須事項となるでしょう。