<両軍スタメン>
先週の神戸戦で、Jリーグからの移籍を表明していたアンドレス・イニエスタの送り出しを務める事となった札幌。
その試合の感想としては、前年同カードを観た際とほぼ変わらぬものであり。
札幌が誇る(?)「オールコートマンツーマン」のサッカーに対し、素早い寄せに難儀するイニエスタが機能する場面はあまり無く推移する、といった印象でした。
今季はその神戸も、激しいプレッシング・素早いトランジションを重視したサッカーに舵を切るという具合に、J1を戦うには避けては通れないのが近年のJリーグの事情。
そんな変化、そしてイニエスタの居場所も無くなっていくのは必然という流れは誰にも止められず。
個人的には神戸の「バルサ化」への取り組みは好きにはなれなかったですが、こうした結末となってしまうのは寂しい限りであり。
もう少し何とかならなかったのか……という思いと、そうした流れが(神戸が)現在上位に居る要因なのだから仕方ない、という割り切りが交錯するこの夏となりました。
札幌に話を戻すと、「リーグ屈指の攻撃力」と「あっさり失点する脆さ」が同居するという、そのチームの特色が色濃く表れている今季。
得点・失点の出入りが激しすぎるその姿は、先週のようにイニエスタの持ち味を消す程の日本サッカーのスタイルをある意味象徴する、とは言い過ぎか。
しかし2巡目となり相手の研究も進んだのか、3戦未勝利と再び衰退気配が漂っている現状。再びの小柏の故障離脱という要素が最も大きい気がする
そんな中で、相手の良さを消す戦いを繰り広げる福岡との一戦となりました。
1巡目で自分も現地で観戦したカードなので、その福岡の対策ぶりに注視する事となり。
立ち上がりの様子見の時間から、その変化を実感させられます。
札幌はストロングポイントである金子にボールが回る事は稀であり、これまでの「良い形でロングパスを金子に供給する」というサッカーを敢行する事は出来ず。
そのため、早い時間帯で2点リードを奪った前回対戦時の再現は全く成り立たなくなりました。
4-4-2のオーソドックスな布陣により、前線では要所でのハイプレスをチラつかせながら、しっかりとゾーンを固めて相手のロングパスを抑制する福岡の守備。
その姿勢に札幌は綺麗に出鼻を挫かれる事となった、という印象でした。
安易に金子にボールを託せず、かといってショートパスによる中央からの突破も難しい。
仕方無く、金子とは逆のサイドに居るルーカスへのロングパスへの供給が中心となり。
ルーカスの突破に対し、福岡もサイドバック・サイドハーフの2枚で対応して防ぎ。
攻撃の中心を期待される事となったルーカスですが、前半13分のミドルシュート(ブロック)ぐらいが見せ場となり、過度の期待による重圧の方が目立ってしまっていたでしょうか。
それでも徐々にボールポゼッションを高め、攻撃権を支配する札幌。
そんな中でルーカスは、サイドチェンジで何度か金子へとボールを託さんとするものの、福岡サイドもそのケアは欠かさず悉くカットされ。
攻められてはいるものの流れは決して良くなく、困っていた風でもあり。
それ故に焦ってダイレクトパスの連続で前進を図るも、それが繋がらないという具合に、「イニエスタの送別試合で何を学んだのか」と言いたくなる(言い過ぎか)ような絵図を描く事となります。
その打開は、中央への縦パスを通す事だったでしょうか。
29分、札幌は中盤~敵陣でのパスワークによりプレスを誘い、井手口を釣り出したうえでそのスペースへ宮澤が縦パスを通す攻撃。
受けたスパチョークが右へ展開する事で、(その後福岡のカット→再奪取を挟み)ようやく金子に良い形でボールが渡る好機となります。(右ポケット奥へ切り込むもシュートは撃てず)
これで不穏な流れが融解出来た感があり、続く30分にも岡村の縦パスが通ったのち、中央をワンツーで突破した荒野がシュートに繋げ。(ブロック)
そして続く31分でした。
ここも田中駿→スパチョークへと縦パスを送り、エリア内で受けた所をクリアされるも繋いで継続し、中村桐が左奥へと切り込んでカットインからグラウンダーでクロス。
井手口がブロックするも跳ね返せず、流れた所をニアサイドで受けたスパチョーク、すかさずシュートしてゴールネットを揺らします。
福岡の対策を上回るように、先制点に辿り着きました。
一方またもリードされてしまった福岡。
立ち上がりから続けていたロングパス・ミドルパス攻勢は変わらず、何とか得点を狙いにいき。
福岡のターゲット狙いに対し、札幌サイドも完全対応が期待できるのは岡村のみという状況故に、割と有効となっていたその立ち回り。
そして36分そのロングパスによる攻撃で、セカンドボールを繋いで山岸に渡った所、荒野に反則を受けた事でフリーキックの好機に。
右ハーフレーンから直接シュートも狙えるという位置で、それを窺わせつつ、キッカー金森は指示を出している体勢から意表を突いてヒールで蹴り出し。
後方から前がシュートを放ち、グラウンダーでブロックをすり抜けた末にGK菅野がセーブ、その跳ね返りを詰めたグローリがネットを揺らします。
しかし飛び出しがオフサイドを取られてしまい、(VARチェックを経て)無念のノーゴールとなり。
その後札幌もリードを奪った事で余裕が出来たでしょうか、ないしは激しくなる雨脚故の無理攻めの自重か。
ボールを受けたスパチョークが、ゆっくりとしたボールキープを挟んでチームに落ち着きを齎す立ち回りを演じる(41分)等、イニエスタが伝えたかったであろう(しつこいって)「パウサ」の要素も取り入れ。
しかしその流れも田中駿のハンドを切欠に途切れ、アディショナルタイムに福岡が猛攻を仕掛けるも実らず。
前半は0-1で折り返す事となりました。
前回対戦時とは違い善戦はしているという流れの福岡、巻き返しを図りたいのと、バランスを崩したくないという思惑が交錯するハーフタイムだったでしょうか。
結局動かない事を選択した長谷部茂利監督。
しかし後半は入りから札幌の猛攻が始まり、その始まりはやはり右サイドで金子がボールを持つ事で、クロスとカットインの二択に晒される攻撃。(後半2分・クロスを選択もフィニッシュには繋がらず)
流れを掴んだ札幌、直後に中村桐のロングパスで福岡のクリアミスも絡み、スパチョークがエリア内に切り込む決定機が生まれます。
放たれたシュートは奈良がブロックして辛うじて防ぐも、ここからコーナーキック攻勢も受ける事となり。(2分間で3本)
こうなると「何とか防がんとするも付いていけず、アフターチャージを頻発させる」という、お決まりのラフプレーへの傾倒を強いられる福岡。
流れを変えようと、9分に小田→湯澤へと交代させるもののそれは果たせず。
11分にスパチョーク、ルーカスが相次いでアフターチャージで倒れ込み、札幌サイドにもフラストレーションを生みかねない流れとなる試合絵図。
そして13分、右からのスローインでの攻めで、サイドチェンジを挟んでルーカスから攻め込む展開に。
一旦遮断されるも縦パスをルーカスがカットして継続し、スパチョークの中央へのパスが急所を突き、エリア内中央で駒井がボールキープ。
たまらず福岡はグローリが防がんとし、倒してしまうも反則の笛は鳴らず。
しかし2分後にプレーが途切れると速攻でOFRに持ち込まれ、VARに委ねられる事となります。
そして判定が覆り、際どいながらもエリア内での反則という事でPKを得た札幌。
前回の福岡のPKシーンを彷彿とさせる流れが、今度は札幌に齎される事となりましたが、喜ぶのはまだ早かったか。
チーム得点王の金子(8点・浅野と同着)がキッカーを務め、細かい助走を経てゴール左へとシュート。
しかしGKの逆は付いたものの、ゴールポストを直撃してしまい跳ね返り。
追加点はスルリと手中から逃げてしまいました。
一方九死に一生を得た福岡は、直後に佐藤→ウェリントンへと交代します。(19分・山岸が右SHへシフト)
その後も20分にロングパスを金子が折り返し、浅野のキープを経て再度金子にボールが渡り、右ポケット奥へ切り込んでクロス。(ニアで田中駿が合わせるもゴールならず)
金子にボールが渡る回数も増え、札幌の流れは変わらないという印象を抱かせるも、やはりPK失敗という結果による不穏ぶりは防げなかったでしょうか。
21分、駒井のスルーパスがカットされると、そこから前向きのベクトルを突かれ一気にロングカウンターを受ける札幌。
グローリのスルーパス一本で(宮澤がカット出来ずに)裏を取ったルキアン、右ハーフレーンを持ち上がってそのままポケットへ進入した末にグラウンダーでクロス。
札幌サイドが防ぐ術を持てないまま、ファーサイドで走り込むウェリントンが合わせてゴールネットを揺らします。
リードしている側が絶望的なカウンターを受けるという、やってはならない失点を演じてしまう札幌。
同点に追い付いた福岡、尚も虎視眈々と相手のベクトルの逆を突かんとする姿勢は変わらず。
そしてその時は早く訪れ、24分に札幌のロングボールをグローリが跳ね返した事であっさりとそれが齎され。
拾った山岸が右へとスルーパス、受けたルキアンがまたも右ポケットを突くという先程の再現のようなシーンとなると、今度は札幌ディフェンスの戻りを見た事で短いマイナスのクロスを選択するルキアン。
そして後方から走り込んだ湯澤がシュートを放つと、地を這いゴール左へと突き刺さるボール。
短期間であっという間に逆転を果たしました。
一気に追う立場へと切り替わってしまった札幌、直後にルーカス・宮澤→菅・福森へと2枚替え。(25分)
福岡は前から圧力を強めにいくも、勢い余ってルキアンが2連続でのアフターチャージを演じてしまい、警告を受ける事に。
しかしそれにより札幌もヘイトが溜まってしまったか、27分には福岡が左サイドアタックを仕掛けた所、スリップしてボールロストした金森が奪わんとして仕掛けたスライディングが荒野を倒してしまい反則。
これにより両者縺れ合い、ヒートアップして手を出した金森に対し荒野も応戦する、という具合に不穏な空気が爆発。
雨が依然として激しく降り注ぐなか、反撃の機運を高められない札幌。
何とか流れを変えるべく、33分に駒井→小林へと交代。
するとその直後、中央~右ハーフレーンをパスワークによる前進で、小林のエリア内へのスルーパスに浅野が抜け出してシュート。
ゴールに突き刺すものの、オフサイドを取られて無情にも同点はなりません。
直後の36分に福岡も、CKからウェリントンがフリーになってヘディングシュートを放つもゴール右へと外れ。
お互い決定機が交錯するも得点は生まれず。
最後の交代は、札幌は37分にスパチョーク→キムゴンヒ。
福岡はそれに対するように39分、山岸→井上とともに、井上を右センターバックに入れる3-4-2-1へとシフト。
つまりは5バックシステムと、逃げ切り狙いが明白な体勢となります。
押し込むものの、要所でかつての同僚・奈良のナイスディフェンスもありその守備を崩せない札幌。
こうなると頼みは飛び道具と言わんばかりに、CKを獲得した際のキッカー福森の才知に全てを託すといった状況に。
それでも崩すのは容易では無く、42分のCKではセカンドボールを拾ったのち、敵陣でパスを繋ぎ続けて何とか隙を窺わんとする体勢に。
そして金子が右ポケット奥を突くも、入れたクロスはGK村上の正面と実りません。
そして岡村を前線に上げ、パワープレイへと舵を切り。
執念が実ったか、45分にエリアからすぐ手前でキムゴンヒが(井上に)反則を受け、絶好の直接FKのチャンス。
当然蹴りにいく福森でしたが、放たれた直接シュートは壁を直撃とモノに出来ず。
その後福岡も敵陣で反則を受けた事で、左コーナーでボールキープの時間を作るも、何とか断ち切り最後の攻撃に入る札幌。
例によって金子がボールを持つも、既に時間は無く仕掛けずに手前からクロスを入れると、ニアサイドに走り込んだ田中駿が足で合わせ。
しかし乾坤一擲というこのシュートも、GK村上のセーブに阻まれてしまい万事休すとなった札幌。
その後のCKでの攻めが途切れた所で、福岡に勝ち点3を齎す試合終了の笛が鳴り響きました。
これで4戦未勝利、いずれも得点は1のみと、ストロングポイントを消されかけているような札幌の近況。
「たまに攻撃陣爆発の期間が出来るも、長続きせず結局2桁順位に」という近年の札幌のパターンも定番化しつつあり、その流れは今後覆せるかどうか。