※前回の栃木の記事はこちら(19節・藤枝戦、1-1)
※前回の甲府の記事はこちら(25節・藤枝戦、4-1)
※前回対戦時の記事はこちら(10節・甲府 1-0 栃木)
<栃木スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 根本が累積警告により出場停止。
- 前節(清水戦、1-1)負傷交代した大谷は、無事らしく今節もメンバー入り。(ただしベンチスタート)
- 石田が(J1・名古屋から)育成型レンタルで加入し、26節(大宮戦、0-0)から登録され早速ベンチ入り・途中出場。
- ラファエルが(ブラジル・アナポリスFCから)完全移籍で加入し、前節から登録もベンチ外が続く。
- 元京都のイスマイラが(モルドバ・FCシェリフ ティラスポリから)レンタルで加入し、前節から登録され早速ベンチ入り・途中出場。
- 瀬沼がJ3・相模原へレンタル移籍となり、前節をもって登録抹消。
- 宮崎鴻が24節(いわき戦、0-1)で負傷交代し、以降ベンチ外が続く。
<甲府スタメン>
- 土肥がJ3・今治へレンタル先変更という形で移籍、前節(徳島戦、2-1)をもって登録抹消。
- 須貝がJ1・鹿島へ完全移籍となり、今節をもって登録抹消。
- それに伴いキャプテンも変更され、関口が就任。
- 2年目のGK山内がプロ初スタメンに抜擢。
- 負傷離脱していた三浦が復帰しベンチ入り。
次の水曜に天皇杯4回戦が控える、ディフェンディングチャンピオンの甲府。
しかしそれを迎える前に衝撃の事案が発生し、キャプテン・須貝の個人昇格が決定。
しかも移籍先はよりによって3回戦で打ち破った鹿島とあり、ファンにとっては感情的にとうてい受け入れられないものとなり。
フロント(佐久間悟社長)も説明責任を果たすまでの事態になりました。
形だけを見れば、ジャイアントキリングを喰らった鹿島による報復行為のようにも映るこの移籍劇。
先日のバスケス・バイロンの町田移籍然り、意図的に相手の戦力を削らんという手法は悪目立ちこそすれど、日本においても常套手段となりつつあるようで。
下位カテゴリ、ないしはバックボーンに乏しいクラブに生き残る術はあるのか……と頭を抱えがちとなる移籍市場。
しかしJ1の金満強豪クラブにしても、海外の触手に逆らう事は出来ない状況であり。
搾取元が新たな搾取に……というJリーグの図式の物悲しさが浮き彫りになりつつありますが、それを覆す事は果たして可能なのか。
試合の方に話を移すと、須貝を失った甲府は、同じサイドバックの関口が新キャプテンに就任。
そして小林をレギュラーに昇格させて戦い、前節は戦力ダウンを感じさせない戦いで快勝。
自動昇格圏への浮上が現実的となった所で栃木に乗り込んだものの、ここでGK山内を初めて起用する等、使える選手層を広げにかかる采配は避けられないようでした。
前回対戦時は、GK河田を中心としたボールポゼッションで、文字通りゲームの支配に成功したという甲府の内容。
それが河田不在で一変、とは盛り過ぎでしょうが、後方の安定感を失った影響は避けられない展開となり。
栃木のプレッシングをロングパスで逃げるという繰り返しで、前回とは一転して攻撃の流れを作れずに推移します。
逆に栃木が主体的な攻撃を繰り広げ。
前半5分に山田のスルーパスを受けた小堀がミドルシュートに辿り着き(ブロック)先行すると、以降左サイドから巧みに前進を繰り返し。
福森と山田がレーンチェンジを見せながらパスの受け手となるスタイルで、甲府に的を絞らせず。
パワーサッカーに近い栃木ですが、こうしたポジショナルプレーで自身のスタイルを昇華させる試みは順調なようでした。
一方劣勢な甲府の中ではジェトゥリオが盛んな上下動で奮闘し、プレスバックでボール奪取するシーンを幾度も見せ。
11分にはこぼれ球を自陣で拾ったジェトゥリオがそのままドリブルで運び中央へパス、受けた武富がエリア内を突いてシュート。
ブロックでこぼれるも拾い直した武富により継続し、小林の左からのクロスに合わせにいったジェトゥリオ。
ディフェンスに入られるも、こぼれ球を直接シュートに持ち込む(福島がブロック)という具合に、攻撃でもチャンスメイクとフィニッシャー双方で絡みます。
23分に飲水タイムが挟まれ、以降も順調に左サイドから攻める栃木。
しかし28分、甲府はクリアボールを長谷川が拾ってから繋ぎ、武富のスルーパスを経てウタカがエリア内からシュート。(GK藤田セーブ)
ポイントゲッターの一撃で潮目が変わり、以降ウタカ狙いのロングパス→跳ね返りをジェトゥリオが回収というパターンから何度も攻める甲府。
33分にはセカンドボールを拾ったジェトゥリオ、そのまま前進からミドルシュートを放つ(枠外)など相変わらず動きが良く。
しかしその機動性が災いとなったか、35分に栃木は自陣からのフリーキックを素早くリスタートし左へ展開して運ぶと、戻ってディフェンスに入ったジェトゥリオは福森へアフターチャージを犯してしまい反則。
これで今度はやや敵陣深め(左サイド)でのFKとなった栃木、キッカー大森のクロスは流れるも、逆サイドで拾った小堀のクロスがブロックされた事で右コーナーキックとなり。
セットプレーの連続となると、再びのキッカー大森のクロスはニアサイドを突き、入り込んだ大島が合わせヘディングシュート。
ボールはしっかり対角線が描かれた末に左サイドネットに突き刺さり、この流れをキッチリモノにした栃木が先制を果たしました。
それでも攻勢の流れは止まない甲府。
直後の39分にジェトゥリオをターゲットとしたロングボールが送られると、こぼれた所をすかさず反応したジェトゥリオが裏へロングパス。
これを受けたウタカがエリア内へ切り込みますが、福島の反則気味のディフェンスでシュートは撃てず。
その後もジェトゥリオとウタカの助っ人2人を軸にしつつ、周囲の武富・長谷川がシュートを放つ攻めを展開しますが、ゴールは奪えずに終わった前半。
ハーフタイムで甲府は2枚替え、ジェトゥリオ・武富→鳥海・三平へと交代。
良かったジェトゥリオが退いた事で、天皇杯に向けた温存策という印象を強く残す采配だったでしょうか。
甲府のキックオフでスタートとなった後半、キックオフから前進の姿勢を見せてから後ろに戻してのビルドアップ。
ロングパス主体の前半から姿勢を改めたようにも映るその攻撃に、栃木は佐藤祥が三平に対し反則で止めてしまい。
中盤からのFKでしたが放り込む甲府、跳ね返りを右サイドで拾ったウタカがカットインからミドルシュート(GK藤田キャッチ)とまず一本。
これにより反撃体制が整ったかに見えましたが、続く3分には敵陣でのパスミスから栃木が素早く攻め、スルーパスに走り込んだ大島がマンシャとのデュエルを制してボールを確保。
ここからはフィニッシュに繋げられずも、以降1トップの大島が躍動し、
ロングボールを良い位置で収め流れを齎します。
それに対する甲府、前述のマンシャのシーン然り栃木のパワーに押される絵図が目立ち始め。
決して押されている訳では無く、同点ゴールを目指して地上から攻め上がるもののその流れは良くなく。
12分に小林が左ハーフレーンをドリブルしてアタッキングサードに運ぶも、中央から右へ展開しようとしたウタカのパスが福森にカットされて栃木のカウンターに。
持ち運ぶ福森が右を走る小堀へと出し、その先にはエリア内へとフリーで走り込む大島の姿が。
そしてその足元へピンポイントのクロスが入りましたが、大島のボレーシュートは合わせただけになってしまいGK山内がキャッチとモノに出来ません。
直後の13分今度こそ甲府の好機となり、戻りきれない栃木の隙を突いてウタカが左ポケットへ切り込んでシュート。
しかしGK藤田の身体を張ったセーブが立ちはだかり、こちらも惜しい所で決めきれず。
ともに次のゴールを狙う姿勢を崩さずという流れで、それが間も無く次のゴールを齎す事となり。
16分GK藤田のロングフィードから、セカンドボールを拾った山田がエリア内へ浮き球を送ると、大島が受けて右ポケット奥を突く好機を迎えた栃木。
これをGK山内は果敢に阻みにいきましたが、腕で大島の足を払う格好となってしまった事で、大島が倒れて反則の笛が鳴り響きます。
当然PKで、大島の足自体には触れていなかったように見えたものの、ボールにも触れれなかった(ように見えた)のが悪印象となったでしょうか。
VARなしのJ2マリーシアの洗礼を浴びてデビュー戦でPKを経験する事となった山内、キッカー大島の中央へのシュートを懸命に足で防ぎにいったものの、触れられずゴールネットが揺れ。
大島の躍動は止められなかった、という格好で栃木が追加点ゲットとなりました。
これで安泰かと思われましたが、直後に小林のドリブルを反則で止めた西谷が警告を受けた栃木、まだ油断は大敵という流れに。(20分に甲府は品田→佐藤和へと交代)
22分に今度はその西谷が、後ろから三平のスライディングを受けて反則、三平に警告。
しかし西谷はこれで痛み、治療が入り2分以上も倒れる時間が作られた事で、飲水タイムが挟まれる事となり。
反則塗れの時間に突入した事で、ブレイク明けも甲府のパスワークを反則で止めるというシーンが目立った栃木。
運動量を補おうとベンチも動く(28分に黒﨑→石田)ものの、甲府の流動性の前に中々厳しい状況が続きます。
31分にはパスを受けに入った鳥海が佐藤祥に倒されて反則、これで右ハーフレーンからのFKに。
キッカー長谷川のクロスは跳ね返されるも尚も繋ぎ、小林が左からクロスと見せかけて直接シュートを放ち。(ゴール上へ外れる)
その後も交代を準備する最中、34分にまたも山田の(長谷川への)反則により甲府のFK、今度は直接シュートが視野に入る位置。
このタイミングで交代する栃木、新戦力のイスマイラを投入します。(大島と交代、同時に福森→吉田へと交代)
このFKを、キッカー長谷川が直接狙いましたがゴール上へと外れ。
FKを何度も得たものの決められず、しかもその最中にウタカが退いた(33分、宮崎純と交代)事でパワーダウンといった印象の甲府。
逆にイスマイラが最前線に加わった栃木、38分にゴールキック→そのイスマイラのフリックからの好機。
小堀には繋がらずもこぼれ球を自ら拾ったイスマイラ、そのままカットインからミドルシュートを放ち。(エリア内でマンシャがブロック)
ここに来てジョーカーに脅かされる状況となった甲府、39分に故障明けの三浦を投入します。(小林と交代)
40分には右サイドで奥を突いた三平からマイナスのクロスが入るも、ニアで合わせた長谷川は撃ちきれずと、パワー不足は否めないながらも何とか反撃を試み。
栃木は42分に最後の交代、大森・西谷→大谷・高萩。
リフレッシュに成功すると、以降甲府はミスが目立つようになり。
軽いミスから自陣でボールを拾われ、栃木の攻撃を受けてしまうという流れにより反撃の芽は摘まれる事となります。
そしてアディショナルタイム、大谷の裏へのロングパスを左奥で受けた吉田、時間稼ぎも視野に入るなかクロスを選択。
これがブロックに当たるも中央へ入り、さらに蓮川のクリアミスもありイスマイラに渡ると、ボールは余裕を持ってゴールへ蹴り込まれとどめの追加点に。
J復帰2試合目で結果を出したイスマイラ、華麗な前方宙返りも披露しました。
その後右サイド奥でパス回しの体勢に入り、時計を進める栃木。
結局甲府は最後に一度攻撃機会を得たのみとなり、そのまま3-0で試合終了となりました。
夏の補強によるイン・アウトの成果がそのまま表れたと言いたくなる結果でしたが、上を目指す甲府は泣き言を言える状況では無く。
まずは直ぐ控える天皇杯、J1の首位クラブ(神戸)に対し華麗なジャイアントキリングを披露したい所でしょう。