※前回の町田の記事はこちら(20節・長崎戦、4-1)
※前回の大宮の記事はこちら(14節・徳島戦、1-3)
<町田スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 奥山政が累積警告により出場停止。
- 深港がJ3・讃岐へ育成型レンタル移籍となり、今節付で登録抹消。
- 深津の負傷が発表され、6/15に発生して全治6週間との事。
<大宮スタメン>
- 今更感があるが監督交代。16節(いわき戦、1-2)の2日後に相馬直樹氏が退任し、ヘッドコーチだった原崎政人氏が就任。
- それに伴い、5/24に勝野洸平氏が強化担当→コーチへと転身。
- 前節(いわき戦、1-5)からフォーメーションを変更し、守備重視の3-4-2-1へ。
- GK志村の負傷が発表され、発生日は不明(17節を境にベンチ外なので、5/17以降)で全治6週間との事。
- 17節(仙台戦、1-1)で負傷交代した室井の詳細が発表され、全治8週間との事。
- 石川の負傷が発表され、発生日は不明(19節を境にベンチ外なので、5/27以降)で全治12週間との事。
- 山崎の負傷が発表され、発生日は不明(20節を境にベンチ外なので、6/3以降)で全治12週間との事。
- 海外(ポーランド・グールニク ザブジェ)へレンタル中であった奥抜が新天地へ完全移籍。移籍先はドイツ・1.FCニュルンベルグ。
- 高柳がプロA契約を締結。
- ユース所属の市原・種田・GK清水が2種登録選手に。
9節以降未勝利という長きトンネルに入り込んでしまっている大宮。
それまでは4勝4敗で五分の成績でしたが、序盤の好成績は当てにならないと言うべきか。
理想のサッカーの基礎を固めるべき時期に、それが果たされなかった時のツケはやはり甚大でした。
相性的にも、能動的に崩すパスサッカーの相手・アバウトな攻撃のパワーサッカーの相手双方に弱いという具合に、自分達の現在地が何処なのかが解っていない様相であり。
傾倒したと思われたパワーサッカー風味も、監督交代により曖昧なものとなってしまう危惧が感じられ。
監督交代後も、得た勝ち点は引き分けの1つのみで、当然ながら順位はぶっちぎりの最下位。
そんな状況で、対照的に首位を快走する町田と相対する事となりました。
前節で、一つ上のチーム相手(いわき)にも手酷い敗戦を喫する等、明らかに劣っているチーム力。
それを受け、首位相手にまともにやり合うのは自殺行為と判断したのか、5バックスシステム(3-4-2-1)で臨んだ大宮。
そのギャップが奏功し、立ち上がりからロングボールで深さを取る攻撃を軸に、スローインを数多獲得して攻撃権を確保します。
開始1分にも満たないうちから茂木がロングスローを投げ入れる(ただしセンターバックは上がらず)その姿は、もはや形振り構ってはいられない現状を良く表しており。
そして前半7分、左スローインを受けた柴山がディフェンスに遭うも、ゴールラインを割ってコーナーキック。
この手数の少なさで得た好機で、キッカー高柳はサインプレー気味に中央遠目へクロスを入れると、完全に相手の逆を突いて茂木がフリーでヘディングシュート。
これをコース上で中野がトラップし、次の瞬間反転シュートをゴールに叩き込み。
右側で足を振った袴田とのツインシュート(by「キャプテン翼」)的な絵図となりましたが、相手守備の裏を主体的にも偶発的にも突いた格好で先制点を挙げました。
最下位の大宮がリードという意外な結果が齎され、選手・黒田剛監督ともに(中野の)オフサイドを猛烈アピールする等、町田サイドの動揺と狼狽は半端では無く。
気を取り直して攻める町田ですが、こちらもこれまでの戦いとは異なり、引き気味の大宮相手にボールを持たされる展開を強いられます。(なお前節・水戸戦(1-1)もそういう戦いだったとの事)
5-4-1ブロックを自陣で構成する大宮に対し、労せずして敵陣へ進入する流れは作れる町田。
序盤は、藤原が左ハーフレーンを持ち上がるなどそれを大いに利用する姿勢は見えており。
12分に例によって翁長がロングスローを投げ入れ、跳ね返りを下田がダイレクトでミドルシュートを放ちましたがゴールバーを直撃。
その姿に勇気付けられ、いかに守備を固められようとも、最下位相手だけに決壊は近いという希望的観測を下に攻め込みます。
しかし16分、町田のFKからの攻撃が途切れてのこぼれ球を岡庭がクリア気味にロングボールを送ると、稲葉のトラップミスで柴山に渡り一転して大宮の決定機に。
そしてGKと一対一が生まれると、右ハーフレーン・エリア手前から果敢にシュートを放ちましたが、GKポープのファインセーブに防がれます。
こうした軽い対応による追加点は絶対に避けたい町田。
改めて攻勢に入り、20分台は攻撃機会を独占する時間帯となり。
その中でも、サイドバックに稲葉が入るというイレギュラーな布陣となった右サイドが若干固めという印象であり。
そのため立ち上がりは左サイド偏重といった流れでしたが、この時間帯は右から何とか組み立てようという姿勢を取ります。
高橋の攻撃力を軸に、上がってボールを受けた稲葉も、マイナスのカットインからクロスという慣れない(と思われる)プレーを果敢に行い。
ロングスローも21分に一度行いましたが、流石にこれは威力に欠けるとみなされたのか(それでも高橋のミドルシュートに繋がってはいたが)、次の機会では翁長が右に回って敢行する事となりました。
それでも好機となるのはセットプレーからで、それを得るための過程といった町田のボールポゼッション。
31分にはまたも翁長のロングスローから、クリアボールを拾った高橋がミドルシュート(新里がブロック)と、跳ね返りを拾ってのミドルシュートという流れが定番化しつつあり。
それによってか、次第に藤原が持ち上がる場面が減っていき、やや倦怠感を生んでしまっていたでしょうか。
そして35分、ここも新里の裏へのロングパスを翁長がクリアミスし、岡庭に渡った事でひっくり返るような大宮の好機に。
岡庭はそのままドリブルで右ポケットに持ち込んでシュートし、ここはゴール上へ外れたこと命拾いした町田。
しかし失点への流れは止める事が出来ず、続く36分に大宮の素早い運びを止められずに、スルーパスが柴山に渡って左ポケットへと切り込み。
必死に戻ったチャンミンギュの股を抜いての強いシュートを放った柴山、GKポープも止めきれずにゴールへと吸い込まれるボール。
敵陣でボールカットされてからの素早い攻めで、攻勢による気の緩みという他無い追加点となりました。
しかしここから、丁度良いハンデだと言わんばかりに展開する町田。
39分に藤原→翁長と渡ったのちの浮き球がハーフレーン・エリアライン際へ送られると、デュークのフリック気味の落としをペナルティアークで受けたのはエリキ。
当然の如くシュートが放たれると、袴田の股を抜いたボールはゴール左へと突き刺さり。
文字通り反撃の狼煙となる1点を返しました。
これで一気呵成といきたい所でしたが、藤原が消極的な姿勢が目立ち。
持ち運ばずに逆サイドへ送るその姿に、前に居たエリキが激怒するという絵図も生まれる等、らしくない首位クラブの姿が披露され。
守備のミスによる大宮のカウンターも何度か受けてしまっている以上仕方無い判断で、それが奥山政の出場停止によるイレギュラーな布陣という要素に起因しているととれ。
結局、攻め続けたものの得点以降フィニッシュは1本のみ(アディショナルタイム・チャンミンギュのヘディング)に終わった町田。
1-2で前半を折り返す事となりました。
そしてハーフタイム、その布陣のズレを解消すべく2枚替えを敢行。
稲葉・高橋→安井・荒木へ2枚替えを敢行し、松井が右SBへと回るテコ入れが行われました。(サイドハーフも、平河が右へとシフトし荒木が左に)
ここで稲葉と松井の位置を入れ替えるという選択もあったでしょうが、慣れないポジションによる負担増を考慮しての事とも取れ。
迎えた後半。
大宮はやや微調整したか、相手CB特に藤原の持ち上がりに対しては中野が前に出てスペースを消す体勢を取ります。
これを受けた町田は、平河が回った右サイドから攻め上がる意識を強めて対抗し。
後半5分、右からの平河のクロスはクリアされるも跳ね返りを繋いで尚も好機、左からのクロスも流れたのち松井が右奥からダイレクトでマイナスのクロス。
これをニアサイド(というかほぼ右ポケットの位置)で安井が強烈なシュートを放ちましたが、サイドネット外側に終わり。
7分にも右サイドから、上がってきた松井が奥からクロスを上げ、GK笠原の跳ね返しを荒木がダイレクトでシュート(枠外)とフィニッシュを続け。
テコ入れした右サイドの効果は絶大といった感じで、クリアボールも拾っての文字通り怒涛の攻撃を仕掛ける町田。
一方対策も無効化され、専守を強いられる大宮。
入りの3分以降、攻撃機会は反則による中盤からのフリーキックでの放り込みの1度のみ(9分)というぐらい、息を継ぐ余裕も無くなります。
そして16分、高柳のボールキープが翁長に倒されて反則・警告と、再び反則で止まった所で交代カードに手を付ける原崎監督。
富山→アンジェロッティと、1トップを代えてきました。
直後の18分に、ロングボールからアンジェロッティの落としによる好機を作る(高柳がミドルシュート・枠外)も、以降は元通りの展開に。
アンジェロッティの前掛かりな意識故に、全体の守備もやや曖昧になり、プレッシングにいっては陣形が乱れるという場面も目立ち始め。
同点を狙う町田。
23分には右から安井のクロスをデュークがボレーシュートで合わせ、ブロックされるもCKに。
そしてCK攻勢での2本目、下田のニアへのクロスを藤原がフリック気味に合わせ、ゴール左へ逸れるボールにチャンミンギュが走り込むも届かず。
強力なターゲットが居る以上、やはりセットプレーは状況打開への大きな手駒であり。
大宮は28分に中野→小島へと交代するも、流れを変える事は叶わず。
町田は流れの中からでも、30分に敵陣での長いポゼッションからクロス攻勢に。
そして翁長の左からのクロスがクリアされるも、ハーフレーンで翁長が自らダイレクトで縦パスをポケットに入れ、受けた荒木が裏を取ってシュート。
しかしゴール上へと外れてしまいました。
大宮が再びリトリートの姿勢を貫く事で、このまま数多のチャンスもモノに出来ずの敗戦もチラつく状況の町田。
直後に再びベンチが動き、下田・翁長→藤尾・太田へと2枚替えし、荒木がボランチへシフトと再びポジションチェンジを交えます。
31分に大宮が自陣でのボール奪取から攻撃、町田のベクトルの逆を突いた末に、小島が裏へとミドルパスを送り。
高柳が完全に抜け出して受けるも、オフサイドの旗が上がり何とか命拾いします。(リプレイ映像ではオンサイドにも見えた)
ピンチの後にはチャンスと言わんばかりに、33分にデュークがヘディングシュートを放つもGK笠原が正面でキャッチ。
ターゲットの一撃も実らず、今日は駄目な日か……という雰囲気も見え始めた所で、幸運が降り注ぐかのようについにゴールが生まれます。
34分の右CK、キッカー太田のクロスがニアでクリアされるも、フリックのようにファーへ流れた所を荒木がポストプレイで繋ぎ。
そして藤尾がダイレクトでシュートし、ゴール左へ逸れる軌道となったものの、コース上に居たエリキの身体に当たってゴールへと向かいます。
これが意表を突いてGK笠原・新里の間をすり抜ける、ご褒美のような同点弾となり。
納得出来ない大宮サイドは(エリキの)ハンドをアピールするも、当然覆らず。
当然ながら勢いに乗る町田。
大宮も3点目が欲しい状況となりますが、布陣が布陣故に攻勢を掛ける事はままならず。
耐え続ける事を余儀なくされ、町田が勝ち越すかどうかという試合展開に。
38分にクロスの跳ね返りを荒木がミドルシュート(藤尾に当たり枠外)、41分にデュークがヘディングシュート(ゴール左へ外れる)と、その通りにフィニッシュを重ねていきます。
大宮サイドが41分にようやく敵陣に攻め上がり、柴山の中央突破を経て小島がミドルシュートを放ち。(枠外)
応戦体勢が整ったかに見えた43分でした。
最終ラインからの前進で左ワイドで藤尾が持つと、クロス(ないしは追い越した太田へのパス)では無くボールキープからのカットインを選択してポケットへパス。
そしてデュークのマイナスのクロスを綺麗にシュートに持っていった藤尾、ゴール左へと突き刺し。
ストライカーに加えてサイドアタッカーの資質も見せた藤尾により、値千金の逆転ゴールが齎されました。
とうとうビハインドとなってしまった大宮。
ベンチも慌てて45分に高柳・柴山→三幸・泉澤とアタッカーを投入しますが、残り時間が少ない中で活かす事はままならず。(最低でも、失点後のキックオフの時点で投入したかった所)
後方も、依然として3人のCBが残ったままでパワープレーも掛けずと、最終的に混乱・狼狽が目立っていたのは大宮だったでしょうか。
そしてATに突入し、町田はエリキがお役御免となり、カルロス・グティエレスを投入してこちらも5バックシステムへ。
スタンドに向かって喝采を促しながら、ピッチを後にしたエリキ。
そんな雰囲気の中では大宮は好機を作る事が出来ず。
エリキのその振る舞いがありながら、ATが短い(ほぼ4分の目安通りに笛が吹かれる)気がしましたが、それすらも大宮のうなだれぶりに比べれば些細な事象でしかなかった感があり。
3-2で試合終了、しっかりとJ2の頂上・底辺の位置が補強される試合となりました。
当然ながら危機的状況なのは大宮の方であり。
「首位相手に勝てるのでは……」という期待を抱かせたうえでの敗戦は、前節のそれと同等以上に堪えるのは想像に難くなく。
一向に見えないトンネルの出口ですが、果たして辿り着く日は来るのか。